四角友里のにっぽん“食”名山＃18「北アルプス・手作りの焼きたてピザ」

一つひとつの「食」から、山の時間や会話が蘇り、歩くだけでは気づけないとても大切なことを教わります。そんな心に残る山の食べものを四季折々の楽しみとともに綴るエッセイ連載です。

北アルプス稜線の夏と秋のピザ祭り

北アルプスにある爺ヶ岳・鹿島槍ヶ岳を縦走するため柏原新道を登りきると、出迎えてくれたのは赤い屋根のかわいらしい種池山荘。売店では「ピザ祭り」を開催中で、迷わず注文を入れました。

なぜ山の上のメニューにピザが……というと、小屋を閉めている冬季に、スタッフの方が爺ガ岳スキー場にあるピザ屋さん「パウダーパフ」で働いていることがきっかけだそう。生地種からソースまで手作りし、冷凍した生地を山に運び、具を盛り付けるというこだわりの一枚。標高2,450mの種池山荘の厨房に設置されたオーブンで焼かれています。

外のベンチで待っていると番号で呼ばれ、ピザの焼き上がり。薄めの生地がさっくり香ばしい！　ピザにはやっぱりコレでしょ、と合わせて購入した缶コーラをぷしゅーと開けたとき、「はーい‼　全員集合っ」。先生の号令が響き渡りました。ちょうど長野県の教育行事“学校登山”で登ってきた中学生たちの集会がすぐそばで始まったのです。規律正しく並ぶ彼らの羨望の眼差しを尻目に、ピザとコーラを頬張るワタシ。ぜいたくで自由な気分に浸り、大人になるって楽しいぞ！　と思えた味です。

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四角友里

「山スカート」を日本に広めた女子登山ブームの火付け役。講演や執筆、山ウエア・ギアの企画開発に携わる。日本全国の山を旅しながら、土地の食や文化を味わうのがライフワーク。
Instagram：@yuri_yosumi