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日本を縦断する1万㎞の道!ジャパントレイルの魅力と今後の可能性を探るフォーラムが開催されました

2023年11月21日、第1回目の開催となる『JAPAN TRAIL FORUM』が東京都・池袋で行なわれた。

ジャパントレイルとは、北海道から沖縄までを繋ぐ山旅の道。今回のフォーラムは「およそ1万㎞ほどあるロングトレイルを歩くことで、日本が誇る美しい自然や歴史を体感し、新たな姿の日本が見えてくる」というコンセプトを軸に、山岳文化に携わる多くの著名人が登壇。今後あるべきロングトレイルの理想の姿についてさまざまな意見がくり広げられた。

名誉会長のあいさつからスタート

安藤宏基/安藤スポーツ・食文化復興財団理事長、日清食品ホールディングス㈱代表取締役社長・CEO、日本ロングトレイル協会名誉会長

「道というものは歩かないと道にならない。歩かないとただの草原になってしまう」。日本ロングトレイル協会名誉会長の安藤理事長は、30ヵ所ほどある美しいロングトレイルコースを、まずは多くの方々に歩いてみてほしいと話す。

ロングトレイル自体をあまり知らない方々に興味をもってもらい、まずは現地まで足を運んでもらうことが一番大切なこと。そのためにも、今回のフォーラムで、山に関係している多方面のゲストからのお話の中から、山旅の魅力や地域活性化につながる手がかりを探り、ロングトレイルの今後の可能性について発見したい。

宇宙から眺める、日本の自然の美しさ

野口聡一/宇宙飛行士、東京大学特任教授

「宇宙から見た日本の山と川」

3回もの宇宙飛行に成功し、世界ギネス記録に登録された功績をもつ野口さんが感じた、宇宙からみた山・川の印象、ジャパントレイルがもつ意義とは一体なんなのか。

宇宙ステーションから地球を見下ろしていると、一日として同じ姿はない、生きている地球の姿を満喫できるという。宇宙から見る地球は美しいが、同じように地上でみる自然風景だって劣らず美しい。そう述べた野口さんは「ジャパントレイルがもつ役割とは、各地に点々と存在している日本の美しい姿を一つの線としてつなぐことなのではないか?」と話した。

それと同時に、トレイルを維持管理している方々の努力が表に出ることで、各所からの維持金を受け取りやすくし、日本の美しい自然を次世代へ繋げていけるように持続可能な形を作っていくべきなのではないか?と、今後の展望についてを語った。

ロングトレイルで知る、新しい日本の魅力

中村達/日本ロングトレイル協会代表理事、安藤百福センター センター長

「JAPAN TRAILから見える風景」

現在、日本ロングトレイル協会には約30の団体が加盟しており、総距離は4,500㎞にも及ぶ。

「ロングトレイルは険しそうなイメージをもたれることも多いが、ハードな山行は避けたいという方に対してのエスケープルートを定めているため、だれでも楽しみながら歩くことができるのが魅力です。歩き疲れたら宿に泊まって休憩したり、道の駅に立ち寄ってみたり、途中で鉄道を使ってもいい。個々のスキルに合った楽しみ方を提案することで、短い距離であったとしてもロングトレイルを歩いてみてほしい。」

歩くことで、北海道と沖縄がつながっていることを実感し、そうすれば日本が見えてくる。日本だけではなく、海外から訪れる観光客からも高い評価を得られるに違いないと、中村さんは話す。

世界のロングトレイルが抱える大きな問題

Sarah Adams(セイラ・アダムス)/リージョナルマネージャー、ジョージア &ナンタハラ アパラチアントレイル コンサーバンシー

「An Overview of the World Trails Networks and some common issues」

2022年に行なったワールドトレイルネットワークにおける調査の中で、ほとんどのトレイルにはビジター管理プランがなく、半数だけが政府からの資金により支えられていることが判明。調査を続けるにあたり、「トレイル資金の制約・トレイルの劣化・自然災害・気候変動」の4つが大きな問題として挙げられているという。

「今現在、ワールドトレイルアンバサダーと呼ばれているプログラムを中心として、次世代を担うトレイルリーダーを世界各地にて育成しています。そのような体制が進むなかで、色々な人を巻き込むことが重要となり、将来的なトレイルの保護につなげるためには、世界中の子どもたちを巻き込んでいく必要がある。しかし、トレイルの長期的な維持管理には限界があるので、今後の動きとしては異なる機関との連携が必須となっていくでしょう。」

国立公園とロングトレイルの繋がりについて

水谷 努/環境省自然環境局国立公園課 国立公園利用推進室長

「国立公園とロングトレイルが地域や来訪者にもたらす価値と可能性」

国立公園の利用において、「充実した自然体験アクティビティは必須」と考える水谷さん。近年増えつつある、インバウンドの顧客や富裕層に向けた長期間滞在を想定する際には、ロングトレイルは重要な要素となり得るのではないだろうか、と話す。

「自然アクティビティでの体験を通じて、自己の価値観に変化をもたらしたり、価値のある旅行を提供することが、ロングトレイルの推進に繋がる。ロングトレイルが、心身の健康と地域社会において大きなメリットとなるのではないか?という考えから、ロングトレイルの維持管理、長距離自然歩道の再活用などを課題にもち、地域の地域の方々と連携を取りながら、引き続きロングトレイルの魅力発信に努めたい。」

ロングトレイルがもつ観光客への需要

奥田青洲/観光庁観光地域振興部観光資源課 自然資源活用推進室長

「サステナブルツーリズムとロングトレイル」

地域の発展における重要なポイントは「自らの文化・地域の価値を再認識すること」。旅行者に地域や文化へ触れてもらうことをきっかけに、住民がより地域に対しての理解を深めることが重要と、奥田さんは話す。

「コロナ禍によるダメージを受けていた観光客の減少も回復傾向にあるなかで、今後の動きとしては、旅行者数を持続しながら各地の自然アクティビティを充実させることを目標にしています。日本のアドベンチャーツーリズムに対する興味関心を調べるアンケートでは、7割がハイキング&ウォーキングに需要を感じていることが可視化され、ロングトレイルのポテンシャルを再確認できた。訴求力の高い観光コンテンツとしては、地域がもっている本物の体験であると定義し、観光客に対して取り繕うことをせずに、地域がもつありのままの文化・食事・自然を提供することが現代では必要となってくると思います。」

山岳のプロが感じたロングトレイルの可能性とは

近藤謙司/国際山岳ガイド、田中陽希/プロアドベンチャーレーサー

「山岳のプロが見るJAPAN TRAILの可能性」

一生に一度、富士山に登ってみたいと考える人が多くいるなかで、「一生をかけてロングトレイルを歩いてみよう」という考えが定着したら、経済循環の促進や地域発展につながるのではないか?と考える近藤さん。

「一日で終わってしまう富士登山に比べ、長い年月をかけてロングトレイルに挑戦することで、自身のペースで文化や歴史を体感しながら自然を満喫することができる。そんな楽しみ方が、ジャパントレイル構想を通じて広がっていくことが理想なのではないか。」

いままでに数え切れないほどの山に登っている田中さんは、登山では気づくことのできない地域性の違いなどが、ロングトレイルを歩けば気づくことができる部分におもしろみを感じるとのこと。

「県境でガードレールの色が切り替わったり、話している方言の違いを実感したり、地域と密接に関わることで知ることのできる文化の違いはとてもおもしろい。」

「長い時間、長い距離を歩くことは多くの方におすすめしたい。ぜひロングトレイルを歩いてみて、風に当たることで自然の恵みを感じながら、人間がもっている五感を使いながら、四季を通じて日本の美しさを味わってほしい。」

ロングトレイルを通じて、より充実した旅へ

安仁屋円香/『ランドネ』編集長、ルーカスB.B./『PAPERSKY』編集長、若菜晃子/編集者・文筆業

「ロングトレイルを楽しむ旅の演出」

アウトドアメディアに携わる3名が登壇し、歩くことに対する考え方や、今後ロングトレイルがどうあるべきかを考えるディスカッションが行なわれた。

個々が思う「長く歩くことへの意義」とはいったい何なのか。歩いていると瞑想をしているかのような感覚に陥ったり、自分自身を顧みることができる。ついついスマートフォンを触ってしまう日常生活から離れて、自分の心が動くものを探しに行く。そんな非日常的な体験をできることが意義なのではないだろうか、などの意見が交わされた。

ロングトレイルをはじめとした「長い道を歩いてもらうための提案方法」を考えるなかで、自然のなかを歩くことで特別な体験ができることをアピールしたり、ロングトレイルコースを小分けにして、ぐっとハードルを下げることで挑戦しやすくすることがを良いのではないか?一人だけでは気乗りしなくても、参加型イベントのような形であればロングトレイルを楽しめるのではないか、という提案も挙げられた。

まずは歩くことによって得られるものが多いことを、より多くの方々に知ってもらうために、アウトドアに関係するメディアから積極的に情報を発信することが重要となるだろう。

木村宏/北海道大学客員教授

加盟ロングトレイルについて

フォーラム間では、日本ロングトレイル協会に加盟している団体からのプレゼンテーションも。その中から、今後の動きに注目しておきたい2つの団体をピックアップして紹介!

みちのく潮風トレイル

青森県から福島県までを繋ぐ、全長1000㎞を超えるロングトレイル。地域の方々だけでなく全国のハイカーが訪れ、観光だけではなく地域との交流を楽しむ姿が多く見られている。環境省や観光関係者、地域住民などと協力し、「みんなで育てる道」として管理を続けている。

牡蠣やホタテの養殖が盛んな地域であることから、事業の手伝いをしに来てくれるハイカーなども印象的だという。来年で5周年を迎えるロングトレイル、ぜひ東北へ立ち寄る機会があれば足を運んでみてほしい。

ぐんま県境稜線トレイル

みなかみ町、中之条町、草津町、嬬恋村の4つの町を通るトレイル。稜線は100㎞続いていることから、国内最長の稜線ロングトレイルとして知られている。草津温泉をはじめとした温泉資源が豊富で、著名温泉地で旅の疲れを癒すことができるのが魅力のひとつ。

また、数多くのコース設定を組むことができるため、さまざまなレベルの登山者が楽しむことができるのが特徴。中級者から上級者から定評のある谷川岳の縦走コースや、初心者には片道30分程度のコースも提案可能だ。少しずつ歩く距離を増やしてみたいと考えている方にぴったりなロングトレイルとなっている。

会長を務める節田さんからの挨拶

「外へ出て思いっきり歩いてみたい」という考えは、コロナ禍をきっかけに広がっていったと考える節田さん。山を愛する人が、さまざまな方面からアプローチを続ける中でも、ジャパントレイルを通じて要望を叶えることができるはずだと述べた。

今後ロングトレイルへ足を運ぶ方や、地域住民の方のために、たくさんの人々に愛されるような道を作っていきたいという。

ランドネがおすすめするロングトレイル

今回ランドネからおすすめするトレイルは「国東半島峯道ロングトレイル」。たくさんの苔むした石仏や磨崖仏、四季によって色々な表情を見せてくれる古道など、貴重な文化財を目にしながら山歩きを楽しめる道だ。

中山仙境の地形が見渡せる大パノラマの道。

鬼の棲む半島として多くの伝説が残る「くにさき」。アルプスの山々にも引けを取らないほどの絶景が楽しめるのが魅力のひとつで、いくつもの石仏が置かれているのも見どころのひとつ。細い尾根道やクサリ場も登場するが、慎重にゆっくりと進めば問題なし。歩行時間3 時間ほどとは思えない魅力的なコースを歩けば、満足感ばっちり。

中山仙境にある札所は35 カ所。石仏は2 体ずつ置かれている。
スリル感を味わえる幅50㎝ほどの無明橋。
下山ルートに残る、隠れ洞穴。
四季によってさまざま姿を見せてくれる旧千燈寺跡。
旧千燈寺の奥の院へ続く美しい古道。

フォーラムの内容をもっと知りたい方はこちら!

初の開催となったフォーラムでは、ジャパントレイルの現状や加盟トレイルについて、今後どのように周知をしていくか、どのような可能性を秘めているかについてを話した。

数多くのゲストが考察するジャパントレイルの展望、山歩きの魅力や地域活性化につながる手がかりをみつけたい方は、下記リンクより動画をチェックしてみては。

動画の視聴はこちらから

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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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