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アウトドア好きなわたしたちができるSDGs【#7 喜多川キャンピングベース】

「100年続く森をつくりたい」。その想いを掲げ3年前にオープンした埼玉県飯能市の北川地区にあるキャンプ場「喜多川キャンピングベース」。自然のなかでキャンプが楽しめるだけではなく、訪れた一人ひとりが森をつくり、愛される場所になること。そんな未来につながる構想を描く、支配人にお話を伺いました。

おじゃましたのはこちら

喜多川キャンピングベース
埼玉県飯能市北川318-1
TEL. 042-978-5511
www.kitagawa-cb.jp

お話を伺ったのは

合田忠功さん
喜多川キャンピングベースの支配人。前職は「休暇村 奥武蔵」でホテルマンとして勤務。ワークショップやイベント企画のほか、自ら撮影・出演するYouTube動画でキャンプ場の魅力を発信中。

山を訪れて、森を知ることが自然と暮らしを守る大切な一歩に

――キャンプ場はまっすぐと伸びる杉の木に囲まれていて、各テントサイトの位置も、となり同士があまり干渉することなく、プライベート感があります。

合田 はい、谷地形をうまく生かしながら造りました。強い風も吹きにくく、快適にすごしていただけるかと思います。

――すべてのサイトの地面にウッドデッキが敷かれていますね。

合田 社長の森田美明は、森田建設緑化という会社を経営していて、森林環境整備や木材の有効利用を経営理念に掲げ、林業や薪の販売等を行なっています。そのため、このキャンプ場に使われている木材は、すべて飯能の山で伐採されたもの。社長の弟さんが大工ということもあり、 センターハウスも含め、すべて自分たちの手で造ったものなんです。

――山の斜面を整備し、キャンプ場にしようというアイデアは、まさに林業をやられている会社だからこそですね。

合田 一度でも人の手の入った山は、定期的に間伐をして管理していく必要がある。しかし昨今、手入れがされずに放置されている山が全国各地に多くあります。それが土砂災害の原因にもなっているんです。放置されてしまう大きな理由のひとつは、世の中で木材の利用が少なくなったから。木は一本切り出すだけでは赤字です。伐採する数を増やすには、もっと木材を使わないといけない。そのサイクルがあるからこそ、結果、山を守り維持することにつながっていくんです。

▲現在オープンしているのは12サイト。今後はさらに見晴らしのよい場所にサイトを開設予定。
▲文字を切り出した木の看板がお出迎え。
▲センターハウスでは、レンタル品の貸し出しのほか、薪や炭の購入も可能。売店は充実したラインナップで、オリジナルグッズや冷凍鹿肉の販売もあり。

――だから、ここはウッドデッキのサイトなのですね。サイトの中に残る木を生かしていたり、温もりある 雰囲気で、とても快適にすごせそう です。

合田 メンテナンスのたびに木材が必要になりますからね。必然的に循環が生まれています。キャンプ場の薪も、木材として出荷できずに残ったもの。木はゴミが生まれないんです。日本人はもっと木に誇りをもつべきだと思っています。

かつて、このあたりで育てられた良質な木材は、水量の多いタイミングで川に流し、東京まで運ばれて売られていました。木場のあたりには貯木場があったくらいで。いまでは飯能は木材の町であったことを知らない地元の人もいます。高麗川や越辺川、荒川へと流れ込む水の源流が、すぐそばの山にあるということも。

▲キャンプ場をベースに歩ける、登山コースも。
▲関東三大不動尊にも数えられる「高山不動尊」までは、キャンプ場から徒歩約1時間20分。境内でひときわ存在感のある樹齢約800年、高さ37mの大イチョウは見どころのひとつ。ここからさらに30分歩いた先には、奥武蔵や丹沢山系の山々を望む「関八州見晴台」が。

森をつくる活動に参加するサブスクサービス

――会員を募集している「川上ノ森 オーナーズクラブ」とは、どのようなものですか?

合田 ここでキャンプを楽しんでいるようなアウトドア好きの方たちに、〝川上〞にある山や森のことをもっと知ってもらいたいと思いでスタートした、キャンプ場のサブスクサー ビスです。

――100年続く森をつくる。というキャッチコピーが印象的です。

合田 私たちの暮らしは、さまざまなところで森に支えられています。都会に暮らしていると、そのことに気づくことはなかなか難しい。だからこそ、川上にある森を守ることがいかに大切かを知る機会をもっても らいたい。川下にきれいな水が流れていくことにも、災害で崩れない山 づくりができるのにも、間伐は欠かせない。そのことを、喜多川キャンピングベースでキャンプを楽しむ延長線上で体験してもらえたらと。

――会員向けの体験プログラムにある植樹体験は、自分の手で森をつくっているという実感がわかりやすいのかなと。

合田 そうですね。まずは目の前の山をどんな森にしたいのかを考えます。それにより植える木を決める。植えた苗木が育ち、 5〜10年後には日陰を作り、キャンプ場がより快適にすごせる場所になっていく。そうすることでまた人が集まり、山がさらに守られていく。

――すてきな循環です!

合田 社長がアイデアマンで(笑)。 ほかにはないものつくりたいという思いが強いんです。いま、斜面の上にあったサイトを閉鎖しているのですが、その代わりに、もっと見晴らしのよい場所に星空を眺められる天空サイトを新たに造れないか、と計画しているところです。オーナーズクラブの会員さんは、そのサイトを優先して予約できるようにしたいなと。

――それは楽しみですね。自然のなかですごす静かな夜の時間がキャンプの醍醐味ですから。

合田 夜になると、キャンプ場内の杉の木の上でムササビが飛んでいたり、暗闇にライトを照らすとシカの目が光ったり。ほかにも、ヤマネやフクロウなんかもいます。

川上ノ森オーナーズクラブ

市域の約75%を森林が占め、かつては林業と織物の町として栄えていた飯能市。林業の衰退により荒廃の進む森林を先の未来まで維持管理していくため、アウトドア好きの会員メンバーに、さまざまな体験プログラムを通して、山や森を学び・守る機会を設けている。

会員料金(1年間) ソロ・オーナー121,000 円、デュオ・オーナー14,3000 円(2名加入)、ファミリー・オーナー165,000 円(家族4名、追加11,000 円/ 1名、幼児無料)
会員特典
• 年間合計10 泊まで宿泊利用無料
(施設利用料、サイト利用料含む)
• 森の各種体験プログラム参加費半額

 

▲山での木の間伐作業を目の前で見学できる(写真)森田美明 森田建設緑化社長。
▲おもに建築材に使用される木材の伐採作業。切り出されるのは樹齢60~70年ほどの杉。倒された木はまっすぐなところを4mごとに切り落とし、競りに出される。幹の太さ、年輪の細かさ、節の有無、色などで値段は変わるという。
▲山を整備し造られたキャンプ場内の明るい林床には、地元の人に親しまれる山茶が。6月には茶葉を摘む体験プログラムも予定。

森を守り維持するための間伐は、さらに豊かな森と食物連鎖を作り出す

――本当に自然が豊かな場所なんですね。

合田 間伐をしたことで、林床に草が生えて、すると虫が増えて、そこに小動物が集まる。キャンプ場を造ったことにより、食物連鎖ができあがり動植物が棲みやすい環境に変わってきています。元々ここは自然公園の人の手が入っている場所だったので、ほどよく間伐をすることでいままでよりも、よりよい環境ができたのだと思います。

――森は手をつけないほうがよいものだと思っていました……。

合田 ここは、町と山、川を維持していくためのベースでもあります。そして、体験して知ることのできる場所です。なので、若い方たちもぜひ来ていただきたいです。山に目を向け、そしてできる範囲でいっしょに森を守る活動をしてもらえたらいいなと。

――新しい2拠点生活のスタイルにもなりそうですね。

合田 体験プログラムやワークショップは季節ごとに変わりますし、テントサイトもファミリー向けやソロ向けのスモールサイトもあります。アクセスも、最寄りの西吾野駅から送迎もあるので、女性でも来ていただきやすいかなと。

――川上ノ森オーナーズクラブは、 登山が好きな人たちにも興味をもっていただけそうです。

合田 この周辺には、奥武蔵ロングトレイルをはじめ、数多くのトレッキングコースがあります。キャンプ場をベースに、山歩きも楽しんでもらえるはずです。来年1月14日には、社長の話を聞きながら、植林やワークショップができる体験会を行なう予定なので、気軽に参加してもらえたらうれしいです。そしてここでの取り組みが、またどこかの川上の町に広がってくれたらいいなと思っています。

▲手作り箸とプレートでキャンプごはんを。
▲良質な材として知られる、飯能ブランド「西川材」での木工体験は、桧でマイ箸、杉でプレートを制作。箸は木をかんなで削り、自分の好みの細さまでやすりがけを。プレートは節のある材を活用するため個性ある一枚に。
▲耕作放棄地となった柚子畑で、柚子狩りを。
▲サルやイノシシ、シカなどによる獣害や、後継者不足などを原因に維持が困難になった畑を、新しい体験の場としてキャンプ場が管理。会員さんは柚子狩りができるほか、ここで育てられた北川産柚子は、地元クラフトビールなどに活用。オリジナル柚子胡椒も開発中。
▲伐採を行なったキャンプ場内の杉の木の並ぶ斜面に苗木を植える作業も体験できる。ヤマザクラやイチョウなど、針葉樹と広葉樹が混合になるよう植樹をしたあとは、定期的に草刈りも実施。時間をかけた手入れが必要に。
▲キャンプ場のすぐ横にはサワガニやイワナなども棲む美しい清流が。キャンプ場内に設営されるテントサウナの水風呂としても利用。源流に近いこの水は、いずれ川下の街まで流れていく。暮らしを守るヒントは川上に。
▲7~8年前から山の整備を行なっているキャンプ場の斜面には、剪定作業などで切り落とした杉の木の枝があちこちに。枝を拾い、必要な長さにナイフでカットしたらカゴの中へ。またクリスマスシーズ前には、森で集めた素材を使ってオリジナルリース作り体験もあり。

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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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