ニューアルバム『LUMINOUS』を3月20日にリリース|SCANDALのTOMOMIさんが考える、山と音楽のさらなる楽しみ方とは
ランドネ 編集部
- 2024年03月23日
宇宙的感覚を研ぎすます「山と音楽のさらなる楽しみ方」をテーマに、さまざまなミュージシャンにインタビューしていくシリーズ。音楽フェスをはじめ、アウトドアフィールドで聴きたい音楽を紹介する。
SCANDALのTOMOMIさんが語るアウトドアと音楽
結成17年、デビュー15年のキャリアを誇るSCANDAL。昨年、「同一メンバーによる最長活動ロックバンド(女性)」としてギネス世界記録認定されるという、ひとつの節目を経て、ニューアルバム『LUMINOUS』が完成した。今回はYouTubeのキャンプ番組でMCを務めるなど、アウトドアに強いメンバーTOMOMI(B&Vo)に話を聞いた。
——アウトドアに目覚めたきっかけから伺いたいです。
TOMOMI:兵庫県の加古川という町で育って、お休みの日に河川敷でデイキャンプみたいなことをする家族で、アウトドアはもともと好きだったんですけど。2017年くらいかな、私の周りでキャンプをやっている人たちが増えて、ついて行くようになりました。キャンプしたてのころは、だいたい厚木のほうの河川敷に行っていて。そこは利用料もいらないし、行きたいときに行けばいいんですけど、岩場だから、ちょっとペグを打つのが大変で体力が奪われるんです。そんなハードなキャンプではじまりましたが、そこから、自分用のイスとかマグカップとか、ひとつずつギアをそろえはじめて、いまは、ソロキャンプできるくらいにはすべてそろえました。
——ソロキャンプの魅力は?
TOMOMI:よく、それぞれのギアを持って、ソログルな感じで行っているんですけど、ひとりのテントがあると気を使わずにすごせるというか。同じテントだとだいたい、いっしょにごはんを食べて、寝る時間もそろえてみたいなことになりますよね。ひとりだと時間の使い方も含め自由になるので、よりリラックスできると思います。
——ひとりの時間はやはり大事ですか。
TOMOMI:私はわりと人といるのも好きだし、お出かけするのも好きだから、ひとりの時間を意識していたわけではないのですが、大人になってから大事なんだろうなということに気づきました。たとえば、おうちの中でも植物と暮らしていて、ひとりで自然と向き合う時間は、私にとってものすごく整う時間だったということに気づきました。
——自然と向き合う作用とは?
TOMOMI:本当、忙しく過ごしていると何も気づけないまま時間が過ぎていきますよね。目の前のやるべきことに一生懸命になって、それしか見えていない時間の使い方をしてしまうけど、小さい芽が出てきたとか、花を咲かせたとか、そういう季節ごとの変化に気づくようになって、それがどんどん自分の視野を広げてくれているような気がするんです。小さなところにも喜びを見つけられるようになるというか。自然と触れるようになって、心の豊かさみたいなものに気づくようになったのかなって思います。
——アウトドアや自然から得たことは、音楽の制作にも影響がありますか?
TOMOMI:キャンプに行くとき、最初のころはスピーカーを持って行ったりしていたんですけど、やればやるほどどんどん音っていらないなって思うようになって、音楽は聴かなくなっているんです。自然の音を聴いているほうがリラックスするというか。だから、直接的に自分の楽曲制作に影響しているかどうかはわからないんですけど、ライブを全然意識しない日常生活に溶け込む音楽というのは、2017年くらいからちょっと増えてきているのかなとは思います。
——いま、TOMOMIさんは、YouTubeのキャンプ型音楽メディア『WildStock』のMCを担当されていますね。
TOMOMI:はい! バンドがキャンプに行くようすを収める番組で、今、シーズン2なんですが、シーズン1の第1回に私たちSCANDALが出させてもらって。そのときに、メンバーの中で私がキャンプが好きだという話をしていたら、シーズン2のMCのお話をいただきました。
キャンプ型音楽メディア『WildStock』
◎SCANDAL・MAMIをキャンプ沼へ!都内超大型店Alpen TOKYOでキャンプギアを購入!
◎前回購入したキャンプギア&麦ノ秋音楽祭「手ぶらでキャンプ」でSCANDAL・MAMIと快適キャンプ!
——番組をやることで、より詳しくなりました?
TOMOMI:だいぶなりました。好きだと言っても詳しくはなかったので、同じくMCの阿諏訪(泰義)さんやキャンプ好きのゲストの方のギアとか見ながら、「これ絶対ほしいな」ってギアを増やしていって知識を深めていきました。
——具体的にはどんなギアを? おススメなどあれば。
TOMOMI:阿諏訪さんが作っているBlue Momentの野包丁です。ちょっとお値段はするんですけど、1本1本職人さんが手打ちで作っていらっしゃるので、めちゃくちゃ切れるんですよ。ステンレス製だから取り扱いも簡単だし、ビジュアルもいいのでおすすめです。
——料理も楽しみのひとつですもんね。
TOMOMI:そうですね。手の込んだことはしないんですが、その土地のお肉とかお野菜を買って調理します。そういうのが楽しいですね。
——場所的なおすすめはありますか?
TOMOMI:どこだろうな? 月川荘という埼玉のキャンプ場はおすすめです。そこは、森のなかのサイトもあれば、河川敷もあったりして、自分の好きなシチュエーションを選べるというのがよかったです。河川敷は水の音がやっぱり気持ちよかったりしますよね。
——3月20日にSCANDALは11枚目のオリジナルアルバム『LUMINOUS』がリリースされます。すごく今のバンドのリアルを伝える詞も飛び込んでくる、4人の進化が詰まっているように思いましたが、制作はいかがでしたか。
TOMOMI:ありがとうございます。今作の制作は、ギネス世界記録に向かって走り続けていくなかでできた曲と、とったあとに作った曲がある、そのくらいの時期でした。
——2023年8月、SCANDALが「同一メンバーによる最長活動ロックバンド(女性)」としてギネス世界記録に認定されましたね。
TOMOMI:私たちもそのギネス世界記録については、「絶対にとりたい」みたいな気持ちでいたわけではないんですが、もしかしたら本当にとれる? となった3年くらい前からは、それに向けて生活していましたが、わりと楽観的にSCANDALはいつまでも続いていくんだろうなという気持ちでいたから、記録をとったあとのこととかって、ちゃんと考えたことがなかったんです。でも、記録をとったあとのことは想像もつかないぶん、どういうふうに自分たちがバンドとしてかっこよくあり続けられるのか、人間としてもどういうふうに暮らしていけるのか、本気で考えた時期になりました。自分たちの未来について、将来について向き合って曲を書いて。最初は記録を意識していたつもりはなかったけれど、いつのまにか自分たちにとって大切なものになっていたんだなって、制作していくなかで気づくことができました。「ハイライトの中で僕らずっと」「ファンファーレ」「あなたへ」は、ギネスをとった、その先の自分たちの覚悟みたいなものを歌っていますが、バンドとしての自分たちのことを歌った曲っていままでそんなになくて、初めてに近いんですが、改めてちゃんと自分たちに向き合うことができたと思います。
——近年、Haimとかboygeniusとか世界で女性バンドの活躍も目立つようになっていますが、海外ツアーにいくたびに、長く続いていることを珍しく思われていましたよね。
TOMOMI:そうですね。私たちのデビューはダンススクールに通っていたのに、制服を着て、楽器を持ってバンドでデビューしたりした、ちょっと特殊なもので。その当時、好きになってくれた小学生の子が大人になって、いま、子どもを連れてライブにきてくれるようになっていたりするんです。「久しぶりにSCANDALのライブにいったら全然違うバンドになってた」みたいな声も聞いたりするし。17年続けると、自分たちももちろん変わっていくけど、同じように来てくれる方もどんどん変わっていっていく、そういう変化を見られるのも貴重な体験だし、自分たちも制作を重ねるにつれて大事にするところが変わってきて、続けないとわからなかったこと、やれなかったことも多いなと思うんです。
——背負うみたいな感覚はあるんですか?
TOMOMI:ギネス世界記録も居続けて取れた記録だから、背負うという感覚は特にないです。ドヤという感じもないんですけど、大事な記録ではありますけどね。ガールズバンドというジャンルはないし、バンドによって全然色が違うから。似ているバンドってあまりいないと思うんです。だから、私たちに言えることは、長くつづけていなければわからないことがあるし、長く続けることでわかってもらえることもある、ということでしかなくて。背負うつもりもないんですけど。
——続けることは大変でもありますけどね。
TOMOMI:そうですね。自分たちはただ4人で居続けただけだと思っているけど、実際に、同期・同世代のバンドやアーティストが同じように活動しているかというと、ものすごく少なかったりするし、そんなに簡単なことじゃないというのは、あとから気づきました。
——『LUMINOUS』は、4人の経験値と進化もあるのですが、瑞々しさもありますよね。
TOMOMI:うれしい。今作は、前作『MIRROR』からのグラデーションだとは思っていて、『MIRROR』のときはコロナ禍で、ライブができないなか、どう制作していけばいいか模索しながら迷っていることをそのまま表現したアルバムでしたが、そこからライブも再開して、自分たちの気持ちとしても明るい方向に向かっている、そういったメンタル面は如実に出てるなと思います。もちろん、自分たちのことを歌った歌もあって、ただ明るいみたいなアルバムではないんですけど、雰囲気として明るい方向にしようというのは、みんなでずっと掲げていたテーマで。サウンド面で明るいものを取り入れられたかなというのと、今回お友だちに入ってもらった共作曲があるんです。Rhythmic Toy Worldとの共作で「あなたへ」、EOWとの共作で「Plum」という2曲ですね。なにか自分たちのなかから出てくるアイデア以外のものをこのタイミングでちょっと入れてみたいと思っていました。今回はEOWとRhythmicにお願いすることになったんですけど、そういうものが、瑞々しいアイデアとして、なにかちょっとキラッとする要素になっているのかもしれません。
——EOWというバンドはTOMOMIさんがブックしたんですか?
TOMOMI:そうです! ボーカルのLacoとは小中からの友だちで。SCANDAL結成のきっかけとなったダンススクールでいっしょにダンスをして、ユニットを組んでいたくらい仲がよかった子なんです。EOWは泣けて踊れるっていうのをテーマにしたバンドで、私たちに、もうとにかく明るくて楽しすぎて泣けちゃうみたいな要素があれば、もっといいなと思ってお願いしました。小・中学校のころ「いつかいっしょにお仕事したいね」って話していたことが、20年越しにかなって、個人的にはものすごくエモい、宝ものの1曲になりました。
——わかりあっているからこそ生まれるヴァイヴスというか。
TOMOMI:そうですね。ここまでの恋愛ソングを久しぶりに書こうと思ったのもEOWとやるからで、楽しかったんですけど。あとは、ゴスペルとかもいっしょにレッスンしていたから、そういうルーツでコーラスをいっぱい入れてもらったりしたし、ボーカルのHARUNAも歌いやすいって言っていましたけど、「やっぱり同じスクール出身だって感じた」みたいな話をしてて、知らない間に体に染み込んでいるんだなと思いました。この曲を聴いて、EOWを知ってもらえたらいいな。
——コロナ禍からの変化も感じますか。
TOMOMI:そうですね。ここ最近は本当に日常のことを書いた曲が多かったので、自分たちが一人称の曲を作るというのは、ちょっと変化でした。覚悟みたいなものをこのタイミングで形に残しておかないとという、そういうモードになって、未来につながる曲を入れられたのはよかったですね。
——『LUMINOUS』というタイトルにしたのも?
TOMOMI:そうですね。光の方向に進んで行くとか、自分たちが進む方向が光であることをことを信じているとか、自ら発光するとか、そういう意味を込めてつけました。アルバムのジャケットがクラゲなのも、自ら発光するからなんです!
——4月2日から全国ツアー「SCANDAL TOUR 2024 “LUMINOUS”」がはじまります。
TOMOMI:19本、久しぶりに細かくまわれるので、めちゃくちゃ楽しみです。ライブハウスでしか見せられないようなライブになったらいいなと思うし、今回のアルバムは結構ライブではアレンジが変わりそうな曲が多いから、ライブでしか味わえないサウンドでお届けできたらなと思っています!
Field Like Music
◎アウトドアで聴きたい1枚。
七尾旅人/『ひきがたり・ものがたり vol.1 蜂雀(ハミングバード)』
2011年にNHKの佐野元春さんの音楽番組に七尾旅人さんがゲスト出演していたのを見て、ギターと声だけで景色を見せることができる、魔法使いみたいな人だと衝撃を受けました。その後、作品をチェックしてライブに行ったりしているうちに一番好きなアーティストになりました。いったい何面あるんだと思うほど作品ごとに色が違うけど、どのアルバムもアウトドアには合うと思います。「ひきがたり・ものがたり vol.1 蜂雀(ハミングバード)」(2003年)もおすすめです(TOMOMI)。
SCANDAL
写真左からMAMI(G&Vo)、RINA(Dr&Vo)、HARUNA(Vo&G)、TOMOMI(B&Vo)。2006年、大阪で結成。2008 年「DOLL」でメジャーデビューし、翌年、「少女S」でレコード大賞新人賞を受賞。国内外問わず、多くのフォロワーを持ち世界中でコンサートを実施。自身のアパレルブランド「FEEDBACK」をプロデュースするほか、2019年、自身のレーベル“her”を設立するなど、名実ともに日本を代表するガールズバンド。scandal-4.com
Information
SCANDAL『LUMINOUS』
now on sale
(CD+Blu-ray)¥4,950
(CD+雑誌)¥4,950
(CD)¥3,300 ほか/her
LIVE info.
4月2日(火) 広島・HIROSHIMA CLUB QUATTRO
4月4日(木) 福岡・DRUM LOGOS
4月5日(金) 福岡・DRUM LOGOS
4月7日(日) 熊本・B.9 V1
4月12日(金) 岡山・YEBISU YA PRO
4月13日(土) 香川・MONSTER
4月18日(木) 茨城・水戸LIGHT HOUSE
4月19日(金) 宮城・Rensa
4月21日(日) 青森・Quarter
4月27日(土) 新潟・NIIGATA LOTS
4月28日(日) 石川・EIGHT HALL
5月4日(土) 愛知・Zepp Nagoya
5月6日(月祝) 神奈川・KT Zepp Yokohama
5月11日(土) 大阪・Zepp Osaka Baysid
5月12日(日) 奈良・EVANS CASTLE HALL
5月16日(木) 北海道・PENNY LANE 24
5月17日(金) 北海道・PENNY LANE 24
5月19日(日) 北海道・函館club COCOA
5月25日(土) 東京・Zepp Haneda
SHARE
PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。