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コマクサ取材、とってもDeepなこぼれ話|植物ライター・成清 陽のヤマノハナ手帖 #37

登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します!

 

ハイカーに大人気のコマクサは、テレビ番組の山旅特集でも必ずといっていいほど登場する、メジャーキャラ。そんなコマクサについて、大町山岳博物館での取材(ランドネ本誌8月号)で掲載しきれなかったこぼれ話をご紹介。学芸員・千葉悟志さんに教えていただいた、豊富でDeepすぎるネタの数々を楽しんでください!

山岳に関する知識の宝庫はココ!

Data
大町山岳博物館
住所:長野県大町市大町8056-1 TEL:0261-22-0211
開館時間:9:00~17:00(4~11月)、10:00~16:00(12~3月)/閉館30分前までに入場
定休日:毎週月曜および祝日の翌日、年末年始/7・8月は無休
料金:大人450円、高校生350円、小中学生200円
※団体はそれぞれ50円引き。各種割引については、HPをチェック!

世界にもある!?コマクサ

Q.コマクサは貴重とされていますが、日本でしか見られないんですか?

A.「日本では高山の限られた一部に見られるため、登山をしたからといって必ず見られる植物ではありません。また、世界の分布を見ても、カムチャツカ半島・サハリン・シベリア東部に限られているので、貴重と言えば貴重ですかね」。

コマクサのどこがすばらしい?

Q.そもそもですが、コマクサの魅力ってなんなんでしょう?

A.「『高山植物の女王』という呼び名があるうえに、インパクトある見た目が興味をそそるんでしょうね。生態面でも、タネにエライオソーム(昆虫を誘引する化学物質)がついていているのですが、アリとの関係が判然としていない上、遺伝系統などにもナゾが多いのです。ほかの花よりもミステリアスなところに惹かれますね~」。

種子の運び屋は……鳥?

Q.コマクサの種は、だれが運ぶのでしょうか?

A.「博物館で栽培しているコマクサでは、アリがタネを運ぶ姿を観察しています。しかし、高山では『蒔いてみたら』アリがタネを運んだそうですが、自然による散布ではないので、断定とまではいきませんよね。いっぽうで観察中、何回か高山の野鳥であるイワヒバリが、コマクサの果実を食べているようすを見たことがありますし、報告もチラホラ見られます。ただ、こちらも『運ぶ』までは断定できないんですけどね。また、散布とは関係ありませんが、ライチョウってコマクサの花を食べることもあるんですよ」。

なぜ芽吹きが「子葉」?

Q.コマクサの芽吹き、「異形子葉」ってそもそも呼び名がヘンじゃないですか?

A.「うーん、たしかに。植物の芽吹きって『双葉』のイメージがありますもんね。双葉(=子葉)の形もそうですが、双葉がある期間ってあまり気にしませんし、いつ枯れたかなんてまったくわからないっていう存在ですからね。当博物館のロックガーデンでの観察だと、2カ月くらいは見られるんですよ」。

蜜ドロボウの記憶力!!

Q.本誌でご紹介したとおり、マルハナバチが蜜を盗むといいますが、ドロボウを覚えたら、やり続けるんでしょう?

A.「たしかに蜜を盗む盗蜜行動は、一度記憶すればやり続けると私は考えていますが、どうやってここに穴を開ければ蜜が吸えるって思いつくんでしょう。頭のよさを感じます。ただ、働き蜂は基本メスで、当年で死滅してしまうんですよ。そのため、幸運にも(!?)来年には引き継がれないので、ご安心を!」。

 

さてさて、今回ご紹介してきた、コマクサ取材のこぼれ話。いかがでしたでしょうか?興味深いテーマが次々に飛び出した、大町山岳博物館での取材。話の流れで、いわゆる“自然”(ガーデンではない自然)に注目するのは、ニッポン人独自の感性では?という話題も飛び出しました。「ガーデンのようなつくられた環境で、めずらしいものを見つけるのは難しいですよね~」という千葉さんのご指摘も、ごもっとも!自然好きなニンゲンが集まると、こうも楽しいのか!という盛り上がりぶりでございました。

なかなか深い(マニアックな?)取材ができた、このたびの取材。編集部としても、テーマを深く掘り下げることにも注力していくとのことですので、今後もご期待くださいね!

それでは、また。
みなさまのココロに、すてきな花が咲き誇りますように。

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PROFILE

成清 陽

ランドネ / 植物ライター

成清 陽

持ち前の強い好奇心で、大学時代から山・海・島を渡り歩いてきた個性派。自然ガイド、環境コンサル、アウトドア誌編集者、市営公園管理人、企業の森づくりなどなど、自然にまつわる職を転々としたのちにフリーランスに。好きな山は尾瀬、白山、御嶽、北岳。2023年春から岐阜県山間部のプチ古民家に移住し、半隠居ライフを通じて、どこまでユルく生きていけるのか絶賛お試し中!

成清 陽の記事一覧

持ち前の強い好奇心で、大学時代から山・海・島を渡り歩いてきた個性派。自然ガイド、環境コンサル、アウトドア誌編集者、市営公園管理人、企業の森づくりなどなど、自然にまつわる職を転々としたのちにフリーランスに。好きな山は尾瀬、白山、御嶽、北岳。2023年春から岐阜県山間部のプチ古民家に移住し、半隠居ライフを通じて、どこまでユルく生きていけるのか絶賛お試し中!

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