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「だから、私は山へ行く」#29 田中マリナさん

山を愛し、山とともに生きる人に迫る連載「だから、私は山へ行く」。今回は、北海道と東京の二拠点生活をするアーティストの田中マリナさん。「“心地よいライフスタイル”が人生のテーマです」と微笑む彼女が都市と自然を行き来しながら、絵を描く理由とは。

山や森を歩くことで自分自身を取り戻している

仕事として絵を描くようになったきっかけは「趣味で作ったイラストをプレゼントしたら、仕事が来ちゃったから」。東京に住むようになった理由は「出張のときになんとなく見に行った家が、とてもかわいかったので」。

人にはだれしも人生の分かれ道があるけれど、田中マリナさんは、ひょいと軽やかに自分の道を選んでいるように見える。

「流れに身を任せるのが得意なのかもしれないです。でも、『一度決めたらそこでがんばる』みたいなところもあって。そんな性格が、いまにつながっているのかな」

人の想いに寄り添う

北海道と東京の二拠点をベースに、アーティスト/イラストレーターとして活躍する田中マリナさん。札幌市に生まれ育った彼女は、子どものころから「いろんなことをしたい」性格だった。

「小学校1年生から日本舞踊を習っていたので、一時期は日本舞踊の先生になりたいと本気で思っていました。いっぽうで、絵を描くのが好きだったから中高は美術コースのある学校に行くことに。でも、学校には自分よりも絵が上手な子がたくさんいたし成績も悪かったので、絵を仕事にするなんて考えてもいなくて。高校卒業後は食べるのも作るのも好きだったパンの世界に入ることにしました」

札幌のベーカリーで働くかたわら、“遊び”で絵を描くことも続けていたマリナさんに転機が訪れたのは、20歳のころ。ニセコを旅した彼女は、“遊び”の延長で気に入ったお店のイラストなどを描いた小さな冊子を制作。「せっかくだから」と観光協会に贈ったところ、仕事のオファーが届く。この仕事を引き受けたことが、フリーランスとしての第一歩に。

「当時はパソコンも使えなかったし、デザインの知識もあまりなかったから、すごく苦労しましたね。でも、この仕事を終えて実感したのは、私は『人の想いに寄り添う』のが、好きだということ。だれかの期待に応えて、喜んでもらって、お金をもらう。それはとてもシンプルにうれしいことだなって」

こうして、北海道の自然や人、動物など、さまざまな対象を描くようになったマリナさんの絵は少しずつ評判となり、やがて幅広い仕事につながっていく。さらにここ数年は、依頼された絵だけでなく、より強く自身の感情を込めた作品も手がけるようになった。

▲「人物を描くときは、過去の記憶が頭の中をぐるぐるとめぐります」とマリナさん
▲マリナさんの作品は、優しいタッチと淡い色彩が印象的。雪景色なのに不思議な温かさを感じる風景画

「依頼をいただいて描くものは、やっぱり明るくて楽しい雰囲気の絵が多いです。いっぽうで、自分の内面を描いた作品には、悲しみなどの暗い感情が出ることも。最初はその絵を人に見せることが怖かったけれど、ある展示で実験的に暗い絵を置いてみたら『この作品が好き』と言ってくれる方もいて。きっと私自身が内面をさらけ出すことで、安心してくれた部分があるんだと思うんです。自分の感情を絵に込めることで、だれかが喜んだり、癒やされたりしてくれる。『これって、すごいことかも!』と思いました」

頼まれて絵を描くときも、自分の感情を込めるときも、本質的にはおなじだとマリナさんは言う。

「その作品がだれかの暮らしに寄り添う存在であってほしい。いつもそう思って、絵を描いています」

▲2023年の秋に行なった個展「Sun&Moon」の展示では、太陽と月、光と影、都会と田舎など、いっけん相反するものの美しさを描いた

生き方と絵は直結している
だから、暮らしを大切にする

東京と札幌と山歩き

1年半ほど前から東京にもアトリエ兼住居を構え、二拠点生活を送るマリナさん。日々の暮らしの変化は、彼女が描く絵にも大きな影響を与えているという。

「たとえば東京に来たばかりのころは、人が多すぎて一人ひとりの顔が見られなかった。だから、そのころに描いた絵は人の顔がはっきりしなくて、その代わりに人の周りの空気みたいなものを一生懸命描いているんです。その絵を観ると、揺れ動いていた当時の自分を客観視できるし、もう二度とおなじような絵は描けないとも感じます。やっぱり生き方と絵って、直結しているんです。だから私の人生のテーマは『心地よいライフスタイル』。日々の暮らしが、すべてにつながると思うから」

▲出張のときになにげなく内見に行き、ひと目惚れした東京の部屋。「いつか、緑に囲まれた広い場所にアトリエを構えるのが夢なんです」

そんなマリナさんにとって、山を歩くことは、心地よい暮らしに欠かせない時間だ。円山や藻岩山、八剣山……など、札幌だけでもお気に入りの山はたくさんある。

「都会は刺激にあふれているけれど、どこか影響されすぎちゃう部分もある。だから、自分自身を保つために自然は必須条件です。山では人の目を気にすることもないし、黙々と歩いて森の匂いを感じることで、思考も体もクリアになっていく。そうすると『またがんばろう!』と思えるんです」

▲北海道の自然を愛するマリナさんは、山や森はもちろん、湖や川も大好き。洞爺湖(とうやこ)は、最近よく訪れるお気に入りの場所

軽やかに、しなやかに。マリナさんはきっとこの先も自分自身をまっすぐに見つめて、だれかを幸せにするために絵を描いていく。

田中マリナさん
1993 年北海道札幌市生まれ。イラストレーターやデザイナーとして全国のクライアントワークを数多く手がける。2020 年からは絵画や立体アート作品、エッセイなどの創作も積極的に行なっている。www.maribonzu.com

 

「だから、私は山へ行く」
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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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