奥大和の美しい景観に魅了された、1泊2日のトレッキングツアーのようすを編集部員がレポート!|Day.2 黒滝から吉野まで
ランドネ 編集部
- 2024年12月27日
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トレッキングやカヤック、自転車などのアウトドアアクティビティを通じて、日本各地の美しい自然や人々との交流を楽しみながら、地域の新たな魅力を発見する旅のスタイル「ジャパンエコトラック」。
今回、奈良県南部・東部の19市町村を指している「奥大和エリア」が新たにジャパンエコトラックへ登録されたということで、奥大和の壮大な自然と歴史を満喫する1泊2日のトレッキングツアーに、編集部員のみかみが参加することに。
絶好の天気に恵まれながら、奈良県・奥大和エリアを歩いた山旅のようすをたっぷりと紹介します!
奈良のへそと呼ばれる「黒滝村」からスタート
2日目は、奈良県の中心に位置する「黒滝村」から、吉野駅を目指すトレッキングコースを歩くことに。黒滝村へは下市口駅からバスでアクセスすることが可能。公共交通機関を使って手軽にトレッキングを楽しみたい方にぜひおすすめしたいコースだ。
黒滝案内センターのバス停に到着すると、すぐ近くには道の駅「吉野路黒滝」があり、特産品のこんにゃくをはじめとしたお土産を購入することも。周辺の観光情報をチェックしたり、山歩きのまえにお手洗いへ立ち寄れるのもうれしい。いずれはモンベルの出店も計画中だ。
たくさんの吉野杉に囲まれた修験の道を歩く
道の駅から粟飯谷バス停へ向かい、しっかりと準備体操をしてから登山道に入ると、あたりには立派な杉の木が。これらは「吉野杉」と呼ばれる日本三大人工美林の1つで、さまざまな用途に使用されている。「密植(通常より3~4倍もの密度で木を植える)」、「多間伐(何度
も間伐を繰り返す)」、「長伐期(長期間育ててから伐採する)」という独自の育成方法により、まっすぐ同じような太さで成長をし、節の少ない良質な木材となるそう。吉野杉で酒樽を作ると、水が漏れにくいんだとか。
さらに登っていくと、標高533メートル地点の地蔵峠に到着。ここには地名の由来でもある地蔵堂があり、江戸時代に造立されたという地蔵菩薩像が鎮座している。
地蔵菩薩のご真言は「オン カカカ ビサンマエイ ソワカ」。参加者全員で暗唱してみるが、絶妙なむずかしさがある。「少し長いですが、ぜひ覚えて帰ってくださいね」とガイドの關さん。このあとの山道でもボソボソと声に出しながら、先へと歩みを進めていった。
山を歩きながら、歴史ある建造物を巡っていく
急登を登り終えた先には、修験の拠点となった鳳閣寺と、金剛山、葛城山、二上山などの眺望を望むことができる絶景ポイントがあり、ここでひと息休憩をすることに。
吉野山奥千本の山続き、百貝岳の中腹に佇む鳳閣寺の本堂には、山伏の姿をした理源大師像が祀られているとのこと。はるか昔、山中の滝に大蛇が棲みつき人々に危害を加えることから、山で修行を行なう修験者が減少したことがあった。そこで、理源大師が修験者の先導者であった屈強の箱屋勘兵衛を連れて山に入り、法螺貝を吹いて祈祷した。すると、まるで百の法螺貝が一度に吹かれたかのような大きな音が鳴り、大蛇を呼び起こすことに成功し、無事に退治をすることができたそうだ。
この言い伝えから、この山は百貝岳と呼ばれるようになったそう。いまでも鳳閣寺には大蛇の頭骨が残されているそうで、とても興味深い。
『新古今和歌集』を代表する、平安時代末期の歌人のひとりである西行が、法師となり3年ほど住んでいたとされる「西行庵」。付近の木々は紅葉の準備を始めており、赤や黄に色づいた世界に惚れ惚れする。
先には「金峯神社」と呼ばれる古社が。こちらで祀られている「金山毘古神」は、金峯の地主の神であり、生物の枯死を防ぐ神として崇敬されたほか、金峯総領の地主神として金鉱の山を司る黄金の神として祀られてきたそう。社殿を少し下ると、追っ手に追われた源義経が身を隠していた「義経隠れ塔」もある。
お昼休憩には、伝統食の柿の葉寿司を!
美しく色づく紅葉を眺めながら、昼休憩のポイントである高城山展望台へ。広々とした屋根付きの休憩場所があり、登山者が各々で昼食を楽しんでいる姿が見られた。
ここで奈良の名物である柿の葉寿司をパクリ。塩で締めたさばと酢飯の味が、長時間歩いてきた体に染み渡る。大きな柿の葉でしっかりと包まれているため、昼食だけでなく行動食にもぴったり。柿の葉に抗菌作用があるため、保存性も高いそうだ。
今回いただいた「柿の葉すし本舗 たなか」の柿の葉寿司は、さば・さけ・たいの3種類。参加者同士で好みの種類を話し合った末、1番人気を集めていたのはさばだった(個人的にも1番!)。
山頂での時間を満喫して、山を下っていく。2日間を通じて、参加者同士の交流も増えた。
たっぷりの満足感を抱えながら帰路へ
吉野の歴史に思いを馳せながら、帰路へつくことに。下山途中には、法螺貝を吹いている音が聞こえることもあり、道中の社寺での偉人の話が思い返される。
旅の締めくくりに向かったのは、花見の名所として知られる𠮷水神社。源頼朝に追われた源義経が身を隠した場所であったこと、南北朝時代に後醍醐天皇の行宮になったこと、豊臣秀吉が花見の本陣としたことなど、数多くの歴史的逸話が残る神社だ。
参道のお土産屋さんで買い物を楽しみながら、最終ポイントである金峯山寺に到着。修験道の総本山の寺院であり、蔵王堂の風格のある佇まいに心が惹かれる。ご本尊である3体の金剛蔵王大権現は高さ5~7mもあり、普段は巨大なお厨子の中にお祀りされていることから、日本最大の秘仏と称されることもあるそうだ。
長いようであっという間に終えてしまった奈良県での山旅に、故郷を離れるかのような寂しい気持ちで別れを告げる。今回のトレッキングツアーでは、奈良の自然の美しさだけでなく地域の方との交流も満喫することができ、2日間では収まりきらないほどの満足感を得ることができた。
公共交通機関を繋ぎながら山を歩き、新しい奈良・奥大和の魅力を発見したい方は、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
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ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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