【RIDERS CLUB 500号記念コラムvol.3】 レーサーレプリカ時代の口火を切ったヤマハ 【KEN’S TALK 特別編】

ホンダの復帰で、海外のビッグバイク市場での熾烈な闘いに火がついた’80年代序盤、国内でも波乱の幕開けが訪れていました。その火付け役は’80年に登場したヤマハRZ250。’70年代、このクラスは世界GPと同様、2ストローク・エンジンが圧倒的優勢を誇っていました。しかし、アメリカの厳しい排気ガス規制でエンジン出力は低下するいっぽう。鋭い加速でビッグバイクをブチ抜くイメージもどこへやらで、2ストが終焉を迎えるのは時間の問題と囁かれていたのです。

そこへヤマハが投じたRZ250は、世界GPで上位を独占していたTZ250同様にエンジンを水冷化、リヤサスもレーサーと同じモノサスを採用するなど、まさに衝撃的な仕様でデビューしたのです。デザインもレーシングマシンを彷彿とさせるロングタンク・イメージ……いまの感覚でみればフツーのネイキッドかも知れませんが、当時はこれがまさしくレーサー・レプリカでした。とりわけマフラーをレーシングマシンそのままにみえる真ん中が膨らんだ黒くペイントされたチャンバー型を装備するという、それまでメッキで4ストと同じストレートな形状が常識だったのを覆すレーシーな構成は画期的でした。

【RIDERS CLUB 500号記念コラムvol.3】 レーサーレプリカ時代の口火を切ったヤマハ 【KEN’S TALK 特別編】

試乗すると、その走りは250の常識を打ち破る、まさしくレーシングマシンのように中速域からピークパワー域まで力強く伸びていくパワーフィーリングで、一般のユーザーには体験できなかった異次元感覚に包まれていました。ひとクラス上の400ccスポーツと遜色ないどころか、それを上回る走行性能だったのです。ライダースクラブでもケニー・ロバーツ選手が駆るYZR500とオーバーラップさせた表紙で、まさに新時代到来をアピール、皆さんご存じのレーサーレプリカ時代への突入を告げるプロローグとなったのです。

国内へも全力傾注をはじめたホンダ!

250ccという車検もなく維持費の安いポピュラークラスで、従来の大型スポーツでは味わえなかった、コーナリングの醍醐味を存分に楽しめるRZ250は、いうまでもなく爆発的なヒットとなりました。それを黙ってみているホンダではありません。世界GPへ不利と言われた4ストロークで2スト勢に対抗しようと、20,000rpmという超高回転で気筒あたり8バルブでオーバルピストンV4エンジンのNR500を投入したホンダは、’82年になるとそのイメージを継承するV型でDOHC2気筒、しかも水冷で気筒あたり4バルブのピークパワーが11,000rpmという、市販車では考えられなかった超高回転型エンジンのVT250Fを投入したのです。しかもビキニカウルを装着し、さらに流れるようなデザインにまとめ、リヤサスをプロリンク、ブレーキもインボードディスク、そして何と前輪に16インチという世界GPでも試されたばかりの小径タイヤを装着するという、すべてに新しさで満ち溢れていました。ジュラルミン製のセパレート・ハンドルだったことも、パイプハンドルだったRZ250のレーシングマシン・イメージを旧態依然なものに感じさせてしまうなど、その攻勢ぶりは徹底したものでした。

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もちろんヤマハの圧倒的なシェア獲得に、指をくわえていたホンダ・ファンが待ってましたとばかりに殺到しました。レーシングマシンからのテクノロジー・フィードバックによる革新的なマシンの開発競争が、250ccクラスというほぼ日本国内専用クラスで火花を散らすとは、我々にとっても夢のような状況でした。

この何から何まで相手を上回る新しさの競い合いは、ヤマハも負けじとビキニカウル装着のRZ250Rへマイナーチェンジ、するとVT250Fはボディマウントのさらに大きなカウルとするなど、真っ向からの激突が繰り返されました。そこを他メーカーは黙ってみていただけかといえば、そうではありません。さらにレーシングマシンそのままを感じさせる殴り込みをかけたのは’83年に登場したスズキのRG250Γ(ガンマ)でした。その度肝を抜いた仕様については次回に。そのエスカレートぶりはさらに加速して、僅か5年後に何と市販車とレーシングマシンが同時開発されるという凄まじい開発競争が展開されたのです。
(根本健)

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