世界最高峰のスポーツバイクって、どんな乗り味なのか?【ドゥカティ・パニガーレ1299】

エキスパートはどう見ているのか?

一般の人に、世界最高峰のスポーツバイクの乗り味を伝えるのって難しい。

たとえば、弊社のバイク専門誌RIDERS CLUBの2015年4月号、 1299Sパニガーレの試乗記(小川勤)にはこう書いてある。

『ハンドリングはドゥカティのみが持つ幅の狭いLツインエンジンとエアボックスも兼ねる超軽量で合理的なモノコックフレームが生み出す軽快さが際立っており、さまざまなコーナーでアドバンテージを見せてくれた。特に切り返しではスマートECの効果もあり、驚くほど簡単に決まる』
『そのエンジンは排気量を感じさせないほどレスポンスが良い。まるでうなり声のようなエキゾーストノートを放ちながら、1万回転を超えても勢いを失わずに加速していく。ビッグボアのストレスはどこにもない。それよりもショートストロークのメリット、デスモドローミック特有の高回転の伸びの良さが勝っている』

……経験の長いバイクのライダーには細かなニュアンスまで伝わるのだが、そうでない人は別の世界の言語のように聞こえるかもしれない。

バイクに乗らない人はどう感じるか?

では、1299パニガーレに試乗した時の印象を、ドゥカティに乗った事のない、バイクに乗った事のない人だったらどう感じるか、ひも解くように努力してみよう。

まず、バイク未体験の人が跨がってみたらどうだろうか?

跨がるのはとっても大変だ。シートは高いし、跨がって両足を突くと175cmの身長の僕でも両足つま先立ち。ハンドルは低く、握ると、大きく前屈した姿勢になる。ステップはとっても高く、地面に足を着いた時のヒザぐらいの位置にある。足を乗せてみると非常に窮屈な姿勢。

スタンドをはね上げると、つま先立ちでとっても不安定な姿勢で、倒れてしまわないのが不思議なほど。ちなみに、倒れたらミラーやレバー類が折れることもあるし、カウルにもキズがつき修理するのに数万円から数十万円かかるはずだ。緊張する。

大型バイク未体験のライダーはどう感じるか?

スクーターや普通二輪に乗った事のある人なら、跨がった状態での視界の豪華さに驚くだろう。トップブリッジ周りはアルミ製。ゴールドやブルーのアルマイトパーツがふんだんに使われ、メーターはなんとカラーの液晶。サスペンションには複雑な調整機構が付き電子制御でアジャストされる。赤い塗装も塗膜が厚く、何層も塗り重ねられておりツヤツヤだ。

エンジンをかけると、普通二輪や国産車からは信じられないほどの大きな排気音。これでも昔のドゥカティとは比較にならないほど消音されているのだが、初体験の人にとっては地響きのような迫力ある音に聞こえるに違いない。ドロッ、ドロッというデスモドローミック90°Vツインだけが刻む独得のビートだ。

クラッチをミートして走り出しても、その脈動の大きさにギクシャクして立ちゴケしそうになるかもしれない。ハンドルも低いし、足つきも悪いし、このあたりを軽くトラブルなくこなすのが第一関門だろう。しかし、これらはすべてベテランにとっては、走りだしてからの至極のパフォーマンスのために犠牲にされている部分に過ぎない。そして、これでも昔のドゥカティよりは飛躍的に乗りやすくなっているのだ。

ドゥカティ未体験の大型バイクライダーはこんな風に感じる?

大型バイクの経験のある人なら、スロットルを大きく開けて加速することもできるかもしれない。

ドゥカティの本当の楽しみが顔を出すのはこのあたりからだ。高回転になるほどパワーが出る国産4気筒と違って、Lツインは中有低速域からでもスロットルをワイドに開けると独得の破裂感をともなう排気量とともに、ドッと後輪が地面を蹴る。どこまでスロットルを開けられるかは技量(と環境)次第というところだが、最高出力は175馬力(年式や仕様による。2015年のSは205馬力)とパワフルな2.5リッターぐらいのクルマ並の馬力……だが、車重は乾燥で175.5kg(これもそれぞれ仕様による)。馬力当たり重量はF1マシンに近い数字になるが、それはライダーがバイクを制御できればの話。四輪と違って、そこまでのパワーになるとバイクはウィリーしたりホイールスピンしたりしないようにするだけで大変。

最新のパニガーレ1299には電子制御が入っているので、ウィリーもホイールスピンもせずに加速が可能だが、それでもフル加速するにはそれなりの技量が必要だ。

車体は驚くほどコンパクトで、本来的には先の小川のインプレッションにもあるように非常に軽快にバンクすることができるはずだが、ドゥカティのスーパースポーツモデルに乗り慣れない人だと、逆にハンドルを抑えてしまって、重くリーンしにくいように感じるかもしれない。
20-4_1299 PANIGALE
パニガーレ1299の性能はすべて、その先の『スーパースポーツ』の領域のためにある。だから、初体験だとドキドキするばかりだったり、緊張したり、ギクシャクしたりするかもしれない。しかし、そこにあるのは間違いなく世界最高峰のパフォーマンスを持つ趣味のオートバイの世界なのだ。

技量さえあれば、そのハイパワーと超軽量を駆使し、めくるめくスポーツライディングの世界を体験することができる。

しかし技量がなくても、ブレーキレバーの触感ひとつとっても、デリケートなコントロールが可能な至極の性能が与えられていることを感じられるはずだ。乗りこなせるかどうかはともかく、猫ではなく本物の虎に触れる体験は、どんな人にも大きな感動を与えてくれるはずだ。

(村上タクタ)

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