最速神話のはじまり-KAWASAKI Z1-part3

後発メーカーだったカワサキに『最速』のイメージを植え付けたのが、初代Zだった。世界を震撼させた排気量750cc、並列4気筒を搭載するホンダCB750フォアが発表されたちょうどその頃、カワサキは次世代に向けたニューモデルを開発中だった。“NEW YORK STAEK”のコードネームを持つバイクはCB750フォアを超える使命をおび900cc並列4気筒DOHCという超ハイスペックをまとって登場し、当時の最強・最速となったZ。今回は「R/Cアーカイブズ」としてカワサキZ1をプレイバック。第3回は開発にいたる背景となった当時の模様をお伝えする。

カワサキのバイクづくりはZ1から変わっていない

1972年に登場したZ1は、そのスタリング、スペックから長い間ライバルたちが意識せざるを得ないモデルの中心となり、「アップハンドルのスーパースポーツ=カワサキ」がスタンダードという時代が続いていた。さらに時代はZを中核として、大排気量バイクが主流となっていった。

当時のバイクの中でも車体は大柄だが、走り出せば驚くほど素直なハンドリングを示した。アイドリングを上回るあたりから力強さを増すエンジン特性も扱いやすいものだった

Z1000Rがバイクのデザインを変えた

大排気量バイクの人気に伴い、高速化がカウリングなどウインドプロテクションの装備をもたらし始めていたが、たくましさを象徴するカワサキの「男のバイク」は、カウルを装着しないフォルムがもてはやされたのだ。アメリカのAMAレースが、レーシングマシンではなくプロダクションバイクをベースとするレギュレーションへと変更されたこともあって、このイメージはより定着していった。エディ・ローソン・レプリカと呼ばれたZ1000Rに象徴されるように、ハンドルマウントのミニカウルまでが、サバイバルなスポーツバイクのウインドプロテクションの定番とされたのだから、その影響力が如何に絶大だったかが伺い知れるだろう。

1982年 Z1000R-R1  AMAシリーズタイトルを獲得したエディ・ローソンが乗るレーサーのレプリカ。カーカー製エキゾーストなどが装着された特別仕様だ

トラッドなスタイルがネイキッドブームを生んだ

後年、レーサーレプリカブームが一段落した頃、レーシングマシン然としたフルカウルモデルへの反動として、原点回帰とも言えるカウルを装着しないバイクが多く登場し、「ネイキッド」という新たなカテゴリーが生まれた。そのブームを牽引したのが、Zシリーズの復刻とも言えるゼファーだった。Zシリーズやゼファーが持つ「バイクらしいカタチ」が個性的に見えるほど、効率と性能を追い求めたマシンが没個性化することを、過熱したレーサーレプリカ・ブームが立証たのだ。

カワサキはZシリーズによって追われる存在になった

ゼファーはそれから暫くネイキッドブームを築き、再びリーダーとしてのポジションをカワサキに与え、他のライバルたちが追随するという流れが続いた。日本のメーカーの中で、パフォーマンス以外でこうした影響を及ぼすのは、カワサキをおいて他にないというのも痛快な話だ。命運というべきなのだろうが、後発メーカーだったカワサキが大逆転劇を狙ったZ1デビューも、ホンダがCB750フォアの投入で先行していなかったら、Z1はナナハンどまりだっただろうし、DOHCがその後のスタンダードにもならなかったかも知れない。

1978年 Z1-R  カワサキがZをベースに作り上げたカフェレーサー。ビキニカウルの装着や13ℓのスリムな燃料タンク、前後18インチホイールを採用していた

さらに言えるのは、後にそのホンダでさえナナハンの上位としてCB900を設定。他のメーカーでもこだわりを感じさせる排気量として、キリの良い1000㏄ではなく900ccを採用する例は多い。これらはすべてZ1の伝説的な成功ストーリーに端を発しているのだ。多様なニーズに応えるために、様々な要素を盛り込んだモデルを作ると、当初明確だったコンセプトを見失い、平均的で個性を失ったバイクになることをどのメーカーも分っているがやめられない。一方カワサキには迷いがない。そのスタンスの違いは、今も昔も明白である。

1978年 Z1300  カワサキは空冷Zシリーズと並行して水冷6 気筒エンジン(!)を搭載するZ1300を’78 年に発表。最高出力は120ps/8000rpmを誇った

 

デジタル・テクノロジーを駆使したバイクが前提の時代を迎えている。それは以前のレーサーレプリカブームにも通ずるものがある。どれも似てしまう……そんな状況で期待されるのは、まさしくZ1以来カワサキによってもたらされた、分りやすい差別化に違いない。あらためてZシリーズのフォルムを眺めていると、依然として色褪せていない魅力を感じてしまうのだ。

1983年 GPZ1100  空冷エンジンを搭載する最後のZ。ハーフカウルを装備し、リヤ周りがモノサス+アルミスイングアームに変更。’85 年まで生産された

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