ヤマハの歴史を変えた二輪車初の5バルブエンジン! YAMAHA FZ750 -PART2-

ライダーの趣向を重視し、ヤマハは’80年代までスーパースポーツが存在しなかった。そのこだわりを脱ぎ捨てたトップパフォーマンスの追求に対してもライバルと同じテクノロジーに甘んじないという意地がジェネシス(創世記)という革新的なエンジンを生ませたのだ。それはFZ750はYZR-M1やR1へ至る進化の源流となった。人気のR/Cアーカイブスとして、今回はFZ750の2回目をお届けする。ヤマハのスポーツジャンルの転換点にもなったモデルでもあり、現在のラインナップにさまざまな影響を与えているのだ。今回は、ジェネシスとFZ750のデビューを中心に、改めてFZ750を振り返る。語り部はもちろんネモケンだ。(第2回/全3回)

V4の片バンクを並列4気筒として使う独自の発想を実現-創世記②-

来たるべき4ストロークビッグバイクのハイパフォーマンス時代に対してヤマハは遂に90度V4の片バンクに4気筒を並べたカタチのレイアウトで新しいエンジンを開発した。

ジェネシス(Genesis)=旧約聖書の創世記と命名されたこの形態は、世界GPマシンと違って低中速域のパワーとトルクを重視、吸気3バルブ排気2バルブの気筒あたり5バルブを、バイクエンジンでは世界で初採用し、V4開発で得たVバンク間に吸気系を収めながら、真上から燃焼室までストレートに吸気させる効率の良さをそのまま踏襲。従来の燃料タンク前半をエアクリーナーボックスのスペースに割き、燃料タンク後部を従来のキャブレターとエアクリーナーがあった箇所まで下げ、深く前傾したシリンダーと共に低重心化に貢献するという、幾重にもメリットを得るまさに画期的な仕様を誇ったのだった。

パフォーマンス重視のFZ750

そのジェネシス・シリーズの先陣を切って1985年、ヤマハはFZ750の発売を開始した。ビッグバイクでも他と変わらないチェーンドライブを採用し、遂にパフォーマンス最優先のスーパースポーツ仕様に踏み切ったにみえたFZ750は、車体も当時の世界GPマシン直系の、捩り剛性に強く軽量な角断面パイプのダブルクレードルフレームを採用、前輪16インチの小径タイヤなど最新の足周りでライバルと覇を競うフィーチャーが目白押し。

FZ750(1985)

FZ750(1985)ホンダもV4を発表したため、開発中のV4路線を断念。しかしそこで得たノウハウを注ぎ込み革新的な直4を完成させた。しかしデザインは意外なほど概念を積み重ねた路線に。そのフォルムにはライバルがAMAプロダクションレースでパフォーマンスをアピールした影響がみえる

イメージとのギャップをE・ローソンが払拭!

しかし、ここでもXJ系まで守り通したフィロソフィーへのこだわりが見え隠れしていた。そのひとつが前輪のベンチレーテッド・ディスクブレーキ。鋳鉄のローター断面に冷却風用のスリットが設けられた仕様は、ヨーロッパなどでタンデム走行の超高速クルージングをした場合、その高荷重に日本製スーパースポーツのフロントブレーキが、過熱で効きが甘くなる風評に応えたものだった。とはいえ、重量が嵩むベンチレーテッド・ディスクはツーリングスポーツ用といった位置づけで、ユーザーメリットを最優先するヤマハの良心と、マーケットの求めるイメージにギャップを生じていたのは否めなかった。

さらには既にスーパースポーツは、フルカウルのレーサーレプリカ然としたフォルムがデザイン的には新しく、アメリカAMAのスーパーバイクで人気を得ていた、いかにもプロダクションバイクをベースにレーサー仕様としたハーフカウルは、男らしい逞しさとイメージがオーバーラップしてこれを好むライダーは多かったが、総じて斬新さという意味では新鮮味に欠け、せっかくのイメージ刷新を自ら中途半端にみせていたのだ。それでもファンの期待に応えて、翌年エディ・ローソン選手が念願のデイトナ200マイルを制し、ビッグバイクでもパフォーマンスでトップを走るヤマハが長い間を耐えてきた鬱憤を見事に晴らしたのだった。

1986 年、デイトナ200マイルでE.ローソン選手が念願の優勝を果たす。ヤマハもビッグバイクでパフォーマンスの覇を競う時代へ突入したのだった
燃料タンク前半のエアクリーナーBOXから吸気がストレートに燃焼室へ送り込まれ、吸気3バルブ・排気2バルブの二輪車初の5バルブ燃焼室というジェネシス・コンセプト。細部の方式に革新的なメカが奢られていた

このFZ750の、メーカーの意図はともかく、結果的にはハーフカウルでセミアップハンドルという、トラディショナルなスーパースポーツのスタイルは、その後ほかにはないオリジナリティとして好まれ、固有のファンを掴んでロングセラーとして名を連ねることになったのである。とはいえ、ひと度パフォーマンスを追い求めるカテゴリーに参入したからには、そこでの闘いに手綱を緩めるワケにはいかない。継続された開発は、レース参戦で鍛え上げられながら進化の一途を辿り続け、現在までの流れを育んできている。

独特なFZ750の個性ともいえる横に長い四角いヘッドライトだったが、国内向けが中に2 灯を収めていたのに対し輸出向けは1灯が収まるという実は大きな違いがあった

DETAIL

写真右:輸出仕様のフルパワーは、110ps1万500rpmと当時の750㏄市販車では異例な高回転。同時に逞しいトルクを誇る。写真左:ハーフカウルに装着されたチョークレバー。燃料タンク位置が低く電磁ポンプ仕様なので予備燃料スイッチが並んでいる

DETAIL

写真左:前輪ディスクブレーキは既に珍しかったベンチレーテッドタイプを採用。鋳鉄ローターの中に冷却風用スリットがある。写真右:国内仕様のみに装着されていたフロントフォークの減衰調整機構。ライバルがレプリカ路線を突っ走っていたのに配慮

FZ750(1988)

FZ750(1988)ライバルがレーサーレプリカブームの渦中に邁進するのに対抗してFZ750もフルカウルに。マフラーも集合タイプへと変更された

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