【KAWASAKI】カワサキに惚れた!最強市販車の秘訣にせまるNinja ZX-10RR①

バランスの追求で“勝つ”

ここ数年、毎年のようにWSBで勝つための進化を繰り返しているNinja ZX-10RR。 今シーズン、ZX-10RRはWSBでは厳しい回転制限を受けつつも、圧倒的な強さを発揮している。 2019年型のZX-10RRは、さらなる強さを誇示するためエンジン内部を大幅に変更、 そしてそれは、一般 のライダーも恩恵を受けられるバランス追求の極みといえる進化だった。

今回は最新のカワサキSSモデルNinja ZX-10RRに迫る。WSBで4連覇を遂げている「市販車最強」マシンの魅力を4回にわたりお届けする。今回は、19年モデルの新型発表での試乗で編集長・小川勤が試乗した模様と、その最新技術にクローズアップしてみよう。

オートポリスで行われてた試乗会のゲストとして走ったレイ選手。ダウンヒル手前のヘアピンでミラーにレイ選手が映り込み、この直後から最終コーナーを 立ち上がるまで見える位置を走ってくれた。 コーナーを鋭く切り取るようなライディングスタイルは痛快だった。

目の前を走るジョナサン・レイ 選手のライディングは、頭を目センターに残した、大きくアクショ ンしない映像の中で観ているそのままのスタイルだった。アグレッシブ というよりはスマートで、速いのに バイクは暴れずにビタッと安定し、理想的といえる効率で旋回していく。欧州の一流ライダーはバンクしてい る時間が短い。日本のようにグリップするサーキットはないため、素早く向きを変え、素早くバイクを起こして立ち上がっていく。対して日本は、ハイグリップな路面とタイヤだ から、バンクしている時間が長くなりがちのライディングスタイルになる……。そのライディングを一瞬と はいえ、目の前で見られるとは…… まるで夢のような時間が流れる。

9月2~4日、全日本ロードレース選手権のオートポリスに合わせて行われたZX10RRのワールド・プレス・イントロダクションに参加してきた。JSBクラス決勝前にジ ョナサン・レイ選手のライディング によりデビューしたNew ZX10RRは、正直思ったほどの衝撃はなかった。しかし、翌日の試乗会で実際に走るとそのキャラクターは別物で、僕は並列 4 気筒の等間隔爆発でこれほどトラクションするエンジンを知らなかったし、204psというスペックを恐怖感なく扱える世界があるとも思っていなかった。

今回の10 RRの変更点はエンジンだ。レイ選手のスイートスポットに入っている車体は大きく変更しなくても〝勝てる”という判断である。

カワサキのホームサーキットであるオートポリスの全日本ロードレース選手権で発表!

JSBの決勝前にジョナサン・レイ選手がNew ZX-10RRを駆って、ホームストレートに登場。川崎重工業モーターサイクル&エンジンカンパニー バイスプレジデントの堀内勇二さんもスピーチ。New ZX10RRとレイ選手のタッグで今後も強さを証明していくことを日本のファンの前アピールした

レイ選手の声は車両開発に活かされる。車体を変えないこともオーダーのひとつだった。その代わりエン ジンには大幅に手を加えた。

WSBではピレリタイヤを装着しているが、今年は鈴鹿 8 耐でブリヂストンを装着。大雑把に言うとタイヤのキャラクターとして、ピレリは柔らかく、ブリヂストンは硬い。 そんな両極端な性格のタイヤだが車 体は両方にマッチした。フレーム、そして70 ㎏ものエンジンは搭載位置や形状が物凄くハンドリングに影響を及ぼす。正直ブリヂストンにはマッチしないのかもしれない……という不安もあったという。でもZX-10 RRの車体バランスはピレリも ブリヂストンも履きこなした。レイ選手も開発陣も鈴鹿8耐でさらなる車体の手応えを得たという。

チタンコンロッドは 出力アップだけなく ブレーキングからターンイン ここでのハンドリングの軽さに 大きく貢献していた

オートポリスをきちんと走るのは20年振りくらい……。旋回中にいろいろな操作を強いられ、コース幅も立ち上がりは思ったほど広くないためとてもテクニカルに感じる。

試乗するNew10RRの仕様は、タイヤをOEMのピレリ製スーパーコルサSPV3からプロダクションレース用のスーパーコルサSC1に変更。サスペンションもオートポリ スに合わせている。モードはフル、ミドル、ローの中からフルを選び、トラクションコントロールは5 段階+OFF(5がもっとも介入度が高い)の中から 3 をチョイス。

電子制御はとても緻密

メーターは前モデルを継承。しかし、電子制御は 驚くほど細かく煮詰められている。パワーモード、 ABS、トラクションコントロール、ローンチコン トロールなどを装備。IMUはボッシュ製の6軸だ

ピレリ製ディアブルスーパーコルサSC1で走行

OEMのタイヤはピレリ製のディアブロスーパーコ ルサSP V3。国産車がV3をOEM採用するのは初。 試乗はスーパーコルサ SC1で行われた。フィーリ ングが明確なピレリの特性も馴染みやすさに貢献

コースインして驚くのは、変更されたエンジンよりもハンドリングだった。バイクはそれほど小さくないし重量も軽くないが、そのハンドリングはとても軽く、ニュートラルだ。

これまでの 10RRはブレーキン グで前輪に荷重が乗るとフロント周 りに少し重さやクセを感じたし、そ こからライダーが積極的に曲げてや る必要があったが、New10RRはバイクが積極的に曲がりたがって いる印象で、ライダーはその軽いリ ーンに追従していくような感覚だ。 しかもペースを上げていっても回転 を上げていってもハンドリングに重さが出ない。サスペンションをアジ ャストしていることも影響している が、ブレーキング、旋回、立ち上が りのすべてで、理想的な姿勢を導き 出してくれ、簡単にいうと難しさを 感じさせないのである。

フィンガーフォロワーをMotoGPで最初に採用したのはカワサキだった

他メーカーも採用しているが ついにZX-10RRもフィンガ ーフォロワーバルブシステム を採用。これによりアグレッ シブなプロフィールのカムシ ャフトが使えるようになりレ ブリミットが向上。そのレイ アウトはKX450と同じで部 品番号も同じ。ヘッドカバー は今年から赤くなった

204ps!!-102g /1本

レースホモロゲーション用のRRの みに採用されるチタンコンロッドは パンクル製。これもMotoGP時代 があったからこそ実現したアイテム。コンロッドの軽量化がトラクション とハンドリングに大きく作用する

それどころかペースを上げるほど に一体感が増す。これにはスロット ル開け始めの過渡特性の良さが貢献 していて、それはすべてのコーナー で他のバイクよりもワンテンポ速い 段階からスロットルを開けていける ようなイメージなのだ。これは凄い。

こんなフィーリングの等間隔爆発の並列4気筒エンジンを僕は知らない。204psなのに開けられるフィーリングは、最初は違和感を覚えたが、イケる、と分かってからは立 ち上がりが俄然楽しくなってくる。

さらに走り込んで気が付くのはコ ーナリングでアプローチに失敗し、パーシャルになった時、スロットル を開け閉めし、普通ならその度にラインを乱すが、そんな時も比較的バイクの挙動が少なく、スロットル操作に対する車体の 動きが緻密に制御されていることだ。これもスロットル を早く開けていける要因だろう。

減速でもブレーキングがどんどん深くなっていく。ABSが効いている実感はないが、確実に僕をサポートしてくれ、その減速時の挙動は抜群に安定している。そしてここでも秀逸なのは制御だ。オートシフターを頼りに、言葉は悪いが乱暴にシフ トペダルを踏む。するとどこまでも正確にブリッピングしてくれ、エンジンブレーキコントロールが緻密に働く。これもハンドリングの軽さに 大きく貢献している。ブレーキングで前輪に荷重が載りすぎることがな いため、リーンのきっかけを掴みやすい。しかし、このハンドリングの 軽さを根本的につくり出しているのは、イナーシャを少なくしたチタン コンロッドとクランクシャフトだ。

実はWSBで 3 シーズンもの圧 勝劇を続けているカワサキだが、今シーズンは大きなハンデを負って走 っている。レイ選手とZX-10RR が強すぎるため、レギュレーション によりレブリミットは1万4100回転に抑えられおり、これは昨年までの市販車の1万3800回転+3%というレギュレーション(しかし、最後の一文にはドルナが決める、とある)によるものだ。開幕時 はライバル達から最大で600回 転のハンデがあったが、それでも強 さが揺るがないためアッセンからは ライバル達の上限がさらに上がり、その差が850回転になったという。

いま、WSBでカワサキはパワーではなく、バイクの素性で勝負している。その素性とはトルクデリバリー、ブレーキングからの倒し込み、あとは電子制御だ。そこで勝負できる車体のバランスをレイ選手が完璧だと言っているのである。

RRは限定500台の レース用ホモロゲマシン

昨年に続き、エンジンを大幅にアップデートしたZX10Rシリーズ。レース用ホモロゲーションマシンのため 勝つための装備を強化したRRは、500台限定だ

 

 

 

 

 

 

 

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PROFILE

小川 勤

RIDERS CLUB編集長

小川 勤

ライダースクラブ編集長。18歳からSRを所有し続け、カスタムと走りを探求。世界各地で行われる試乗会に参加し、最新モデルの進化を熟知する。現代のバイクに合ったライテクや最新パーツにも精通する

ライダースクラブ編集長。18歳からSRを所有し続け、カスタムと走りを探求。世界各地で行われる試乗会に参加し、最新モデルの進化を熟知する。現代のバイクに合ったライテクや最新パーツにも精通する

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