バイクエンジンの基本やトリビア、歴史を彩った名作などを詳しく解説

バイクの要になるのはやはりエンジンだ。エンジンがバイクのキャラクターを作りライダーに楽しさや感動を与えてくれる。4気筒が登場した’60年代、DOHC化が加速した’70年代、次々と革新的なエンジンが生まれた’80年代。その進化の歴史は、メーカーのフィロソフィーが色濃く反映され、ユーザーが求める要望に応えてきた。

そんなバイクエンジンにおける歴史はもちろん、よく耳にする「DOHC」「OHV」や「4ストローク」「2ストローク」などの基本的な構造から、時代を代表する名作など、エンジンのすべてを詳しく解説しよう。

まずはエンジンの基本から。「バルブ形式」と「ストローク」を知ろう

エンジンの個性はバルブ形式で変化する

高回転・高出力を目指して大きく変化したのがバルブの駆動方式。’70年代、SVはすでに淘汰されていたが、OHVからDOHC まで急速に進化した。

SV(サイド・バルブ)

吸排気バルブをピストンと並べて配置。燃焼室が大きいため高圧縮による高回転化が望めず、現在はほぼ消滅。

OHC(オーバー・ヘッド・カムシャフト)

高回転時の“プッシュロッドの踊り”を解消するためカムをバルブの上に配置。カムが1本なのでSOHCとも呼ぶ。

OHV(オーバー・ヘッド・バルブ)

吸排気効率の向上と燃焼室の小型化(高圧縮化)を狙い、バルブをピストンの頭上に配置し、プッシュロッドで開閉。

DOHC(ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト

OHC以上の高回転化を狙い、吸気と排気バルブを独立したカムで開閉。バルブ直押し式とロッカーアーム式が存在。

4ストロークはクランク2回転、2ストロークは1回転で爆発する

4ストロークエンジンは、ピストンの動き1行程ごとに吸気、圧縮、爆発、排気を行う。クランク2回転、すなわちピストンが4行程で1度爆発。対する2ストロークエンジンはピストン上昇時の1行程で吸気と圧縮、下降時の行程で爆発と排気を行うため、クランクが1回転(ピストンが2行程)するごとに1度爆発する。

4ストローク

(1)ピストンの下降による負圧で開いた吸気バルブから混合気を吸う→(2)ピストンが上昇して混合気を圧縮→(3)プラグで点火・爆発してピストンを押し下げる→(4)ピストンが上昇し、開いた排気バルブから排気ガスを排出。

2ストローク

(1)ピストンの上昇とともにクランクケースがポートから混合気を吸い、前行程で燃焼室に吸気した混合気を圧縮→(2)爆発後にピストンが下降しながらケース内で混合ガスを圧縮するとともに、ポートで吸排気を同時に行う。

バイクエンジンを語るうえでハズせない3つのトリビア

その1「’80年代初頭までにあらゆるエンジン形式が登場」

現在もメジャーな並列4気筒の他にも、’70~’80 年代には並列6気筒やV 型4気筒、ホンダのゴールドウイングが搭載した水平対向4気筒(後に6気筒化)など、ほとんどのエンジン形式が登場している。今は無きロータリーやターボなど、チャレンジ精神も旺盛!

SUZUKI RE-5(1974)

国産で市販(輸出車)された唯一のロータリーエンジン搭載車。排気量は497cc。

Honda CBX(1978)

Z1300より1年早く登場した国産初の6 気筒は、空冷DOHC4 バルブだった。

KAWASAKI Z1300(1979)

カワサキ初の6気筒エンジンはDOHC2バルブで最高出力120psを発揮。水冷方式もカワサキ初の試み。エンジン幅を抑えるためロングストロークを採用した。

Honda CX500 TURBO(1981)

同年にヤマハ、’82年にスズキ、’84年にカワサキもターボ車を発売。国内認可が下りず、ターボは短命に終わった。

Honda VF750 SABRE(1982)

世界初の水冷V型4気筒エンジンを搭載。油圧式クラッチも二輪で世界初の試み。

その2「さまざまな機構の基礎は’80年代に確立されていた!?」

’80 年代は国産各メーカーのカラーが明確にエンジンに投影され、現代の4気筒に通じるさまざまな技術が確立された時代だった。なかでもヤマハの前傾エンジンの発想や、カワサキのサイドカムチェーン方式などは、現行エンジンではメーカーを問わず採用している。

【SUZUKI】エンジンオイルでヘッドの冷却を行う

オイル噴射により熱境界層を吹き飛ばして冷却効果を高める油冷エンジンを’85年のGSX-R750に採用。水冷より小型軽量、空冷に勝る冷却効率でハイパワー化に対応。

【Honda】NRの技術を転用したV4エンジン

’80年代初頭からレーサーやレプリカのエンジンの主軸をV4にシフト。ギヤによるカム駆動やバックトルクリミッターなど、さまざまな技術をNRからフィードバックした。

【KAWASAKI】横置き並列4気筒初のサイドカムチェーン

エンジン幅を抑え、吸排気のストレート化や冷却にも有効なサイドカムチェーンを’84年にGPZ900Rが採用。現行スーパースポーツの並列4気筒は、すべてこの方式。

【YAMAHA】吸気効率を高めるストレートポート

’85年のFZ750ではシリンダーを45度前傾させ、エアボックスからダウンドラフトキャブを介して吸気ポートまで一直線に結んで吸気効率を高めた。低重心化にも貢献。

その3「海外メーカーは刷新ではなく熟成させて進化する」

メーカー独自のエンジンレイアウトを長く使うのが特徴。モト・グッツィなどは、最初期型から現行型まで共通するエンジンパーツが存在するほど。しかし毎年のようにリファインを重ねて性能向上を図る姿勢に、アイデンティティの強さを感じる。

【DUCATI】90度Lツイン

1969年の空冷500ccから進化を重ね、水冷や4バルブも登場。パニガーレで完全刷新。

【HARLEY-DAVIDSON】45度Vツイン

1909年に登場した空冷Vツインは、独特なリズムの爆発間隔とサウンドを守り通す。

【BMW】水平対向ツイン

1923年から続く水平対向は、OHVからDOHCへ。’13年にヘッドのみ水冷化を果たす。

【MOTO GUZZI】縦置Vツイン

1966年に登場以来ひたすら熟成を重ね、現在もOHVが主流。(SOHCも存在する)

バイクエンジンの歴史を一気に振り返り!

ホンダ CB750Four搭載並列4気筒エンジン登場の衝撃

バイクのエンジンの歴史を紐解けば、戦前・戦後にも優れたレイアウトや機構を備えたエポックなモノが数多く存在する。しかし、近代の大排気量スポーツバイクのエンジンを語るとき、決して外せないのが69年にホンダが世に放ったCB750Fourの「並列4気筒エンジン」だ。

多気筒エンジンといえば純粋なレーシングマシンか外国製のプレミアムバイクしか存在しなかった’60年代末に、並列4気筒を搭載したCB750Fourが登場。排気量、馬力、最高速すべてがケタ違いのスペックに世界が驚愕。国産ライバルメーカーも追従した。

多くのバイクメーカーが2ストロークでスタートして軌道に乗ったのに対し、ホンダは創業当時から4ストロークに力を注いでいた。そして50年代にはマン島TTにチャレンジし、4気筒DOHC4バルブのレーサーまでも完成させ、60年代には世界GPを総ナメ……。 そんなバックボーンがあるから可能だったとはいえ、750㏄の4気筒エンジンを搭載した市販量産車はあまりにも衝撃的。発売から時をおかずに、それまで名声を欲しいままにしていた英国メーカーを完膚なきまでに駆逐した。

Honda CB750Four(1969)
量産市販バイクで世界で初めて並列4気筒エンジンを搭載。’68年東京モーターショーで発表され、世界中のバイクファンに衝撃を与えたエポックモデル。

日本製4気筒エンジンがバイク界を制覇

「ビッグバイクは4気筒」という新基準がCB750Fourで確立されると、国産ライバルも黙っていない。同時期から4気筒を開発していたカワサキはDOHCのZ1を72年に投入し、スズキも76年にGS750を発売、ヤマハは3気筒だがDOHCのGX750を登場させた(翌77年には4気筒DOHCのXS1000を発売)。そこでホンダが黙っているワケがなく、ワークス耐久レーサーと同時開発した1気筒あたり4バルブのCB900/750Fで迎え撃つ……。

カワサキもCB750Fourと同時期に“4気筒・750㏄”を開発していたが、先を越されたCBを倒すべくDOHCを採用した900㏄のZ1を’72年に発売。続いて’76年にスズキがGS750を、ヤマハも3気筒DOHCのGX750を発売。対するホンダは4バルブ化で迎え撃った。

そして80年前後には空前のバイクブームが巻き起こる。免許制度の兼ね合いで国内バイクは400㏄や250㏄が中心だったから、これら中型排気量にも4気筒DOHCが相次いで登場した。今では想像できないが、並列4気筒で初めて水冷化されたのはビッグバイクではなく400㏄(83年のスズキ・GSX400FW)だったのだ。そして80年代中盤には「レーサーレプリカ」ブームにより、中型バイクのエンジンが飛躍的に高性能化していった。

KAWASAKI Z1(1972)
市販量産バイク初のDOHC4気筒エンジンを搭載。発売直前に設けられた自主規制により、国内モデルとして翌’73年に750㏄のZ2が登場した。

2ストロークの復活と頂点後の突然の終焉

レプリカと言えば、ハズせないのが「2ストローク」。そもそもホンダ以外のメーカーは2スト主体だったのが、大排気量化や4気筒の登場で、一気に4ストにシフトしたため、70年代中頃は2ストは消滅寸前だった。しかしヤマハが市販レーサーTZ250 の技術を投入した、水冷のRZ250 を80年に投入したことで一気に復活。しかも、バイクブームの影響でWGPや全日本などのレースもメジャー化したため、GPマシンと同じ2ストエンジンが人気を博したのも当然の成り行きと言えた。

YAMAHA TZR250(1985)
本格2ストレプリカの先駆けとなったTZR。並列2気筒→後方排気(写真)→ V型2気筒と、市販レーサーTZ250の進化を忠実にトレース。

2ストは構造がシンプルで軽量、しかも単純に比較すると同排気量なら4ストは2ストの2倍回さないと同じパワーを稼げない。だから250クラスで2ストが人気なのは当然。400㏄の4気筒相手でも十分以上に勝負できたのだ。エンジンの吸気方式も、ピストンリードバルブからレーサー同様のロータリーディスクバルブに変化したり、燃費や扱いやすさも両立したクランクケースリードバルブ方式が採用されたりした。

また「ピーキーで扱いにくい、低速時のトルクが弱い」といった2ストならではのエンジン特性も(そこに惹かれたマニアックなファンも多かったが)、ヤマハのRZ250R(83年)が装備した排気デバイス「YPVS」により大幅に改善され、同様な機構をライバル車も備えた。そして80年代中頃を過ぎると、市販レーサーと同時開発した、「保安部品付きレーサー」のような2ストレプリカも登場。この流れは、90年代半ばに2ストロークエンジンが排ガス規制や燃費・省エネに対処できずに姿を消すまで続いたのだ。

そして90年代は、意外なことにエンジンにとって革新的な技術はあまり登場していない(もちろん既存の技術の熟成・進化は図られていた)。そんな中で注目されたのは92年に販売されたホンダのNR750。楕円ピストン8バルブのV4エンジンは、まさにレーシングテクノロジーからのフィードバック。しかし残念ながら、あまりの高コストとレースレギュレーションの変更により間もなく終焉を迎えてしまった。

扱いやすさを追求する海外メーカーの猛追

さて国産バイクのエンジンばかり解説してきたが、外国勢はどうなったのか? じつは国産メーカーのように、短いサイクルでエンジンのレイアウトを変更したり、全面刷新されることはほとんどなく、基本レイアウトを80年代以前から踏襲するものが多かった。こう言うとほとんど進化していないように感じるが、そんなことは決してない。

ドゥカティは伝統の空冷L ツインをベースに、88年に水冷4バルブDOHCの851を登場させたし、フラットツイン一辺倒と思われがちなBMWは90度寝かせた水冷4気筒を縦置きに搭載したK100を83年に発売している。そしてこの2台で注目すべきは、フューエルインジェクション(FI)の採用。その後もドゥカティやBMW はFI を熟成して行くが、なぜか日本メーカーがFIに本腰を入れたのは90年代後半からだった。

DUCATI 996R(2001)
’88年に登場した水冷4バルブの851を鬼才M.タンブリーニが刷新し、916シリーズを開発。’01年の996Rで狭角バルブの“テスタストレッタ”が登場した。

2000年代中頃までは、ことスーパースポーツにおいては日本製が圧倒的に優位を誇っていたものの、2010年代前半に海外製スーパースポーツが目覚ましい躍進を遂げる。エンジン刷新で日本製4気筒に勝るとも劣らない高出力を発揮したのも驚きだが、それ以上に高出力エンジンを「扱いやすく」制御する電子デバイス技術で先行したのだ。

日本メーカーも黙ってはいなかった。15年のYZF-R1 を皮切りに、各メーカーが次々と新作を投入。バイクのエンジンはここにきて、高回転・高出力を追求した時代から、いかにライダーが扱いやすく、効率よく使えるかの時代へ明確にシフトしている。躍進する海外メーカーと、栄華を築いてきた日本メーカーのエンジン制御における熾烈な争いは今後も激化を極めていくだろう。その動向からは目が離せない。

YAMAHAYZF-R1M(2015)
2009年型で投入したクロスプレーン・並列4気筒を、コンセプトをそのままに全面刷新。IMU(運動を司る3 軸の角速度と加速度を計測する慣性計測装置のこと)を軸としたフル電子制御化で、海外勢への逆襲の狼煙を上げた。

バイクエンジンにおける注目すべき次世代の電子制御は?

エンジンパワーモード

最高出力やトルク、スロットルレスポンスを、レイン、スポーツ、レース等の走行シーンに合わせて切り替え可能。スリックタイヤ装着時のモードを装備する車種もある。

トラクションコントロール

後輪の空転を検知し、電子制御スロットルや点火・燃料制御でトルクをコントロールして、最大効率でトラクションを得る装置。介入レベルやオン/オフの選択が可能。

オートシフター

スロットルを戻さず、クラッチも切らずにペダル操作のみでシフトアップ可能。トラクションが途切れないので、コーナー立ち上がりのバンク中でもシフトアップできる。

DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)

奇数ギヤ/偶数ギヤそれぞれにクラッチを装備する有段式ミッションを採用するホンダのオートマチック機構。フルATはもちろんボタン操作によるセミATでも走れる。

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RIDERS CLUB 編集部

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1978年の創刊時から、一貫してスポーツバイクの魅力を探求し続けるオピニオンマガジン。もはやアートの域に達している、バイクの美しさを伝えるハイクオリティの写真はいまも健在。

RIDERS CLUB 編集部の記事一覧

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