サスペンション調整はバイク初心者こそ必要!【ネモケンの今さら聞けないバイクのギモン】

いつの時代もライダーは探究心が旺盛だ。バイクに乗れば乗るほどに詳しくなればなっただけ次から次へと、新たな疑問が沸いてくる。そして、そんな小さな疑問の答えにようやくたどり着いたとき、初めはあれほど遠かった、自分とバイクとの距離がまた一歩、近づいたのを実感できるのだ。

そこで、ライダーの素朴な疑問を元世界GPライダーにして、ワークスマシンから市販車まで幅広いバイクに乗り続け、読者にライテクを指南しているネモケンこと根本健が分かりやすく解説!今回のテーマは「サスペンション調整」について。サスペンション調整は初心者にこそ必要なことだった!?

サスペンションの基本

サスペンションの役割とは?

バイクは上図のように後輪の接地点とステアリングヘッドを結ぶ斜めの辺を軸に車体を傾けると、最も素直に曲がる。しかし実際はライダーがその動きを邪魔してしまうが、サスペンションはそれを誤魔化してくれる。だから乗り手に合わせてセッティングすることで、愛車はさらに乗りやすくなる。

サスペンションの基本構造

衝撃に対してサスペンションが担う役割は多岐にわたる。衝撃の吸収ひとつをとっても、大きな衝撃だけでなく、完全に平滑ではない路面から伝わる細かい衝撃も吸収しなければいけないのだ。さらに衝撃を吸収して縮んだスプリングは、瞬時に縮んだときと同じ勢いで伸びようとする。この振幅を抑制しているのがダンパーだ。ユニットの筒内はオイルで満たされており、衝撃による筒の伸縮時、オイルが狭い小穴を通る。そこで発生する抵抗力を利用して、伸縮運動を抑える減衰力を発生させているのだ。

(左)サスペンション:穏やか、かつスピーディにストロークが収束する

ダンパーはオイルが小穴を通る際の抵抗を利用して減衰力を発生させる。その小穴をふさぐように重ねられたシム(金属板)は、オイルの流速が速いほど抵抗が大きくなるというバイク向きの性質を持っている。

(右)バネだけ:バネのみでは衝撃がいつまでも続いてしまう

スプリングは衝撃によって収縮すると、受けた力を瞬時に解放する性質がある。さらにそのまま伸び縮みを繰り返すため、いつまでも車体は安定しない。スプリングだけでは車体を支えられないのだ。

「1本=モノサス」と「2本=ツインサス」の違い

バイクのリヤサス形式を大きく分けると、1本の「モノサス」、2本の「ツインサス」がある。モノサスは一般的に運動性能に優れると言われ、昨今の高性能スポーツバイクが採用。しなやかさと力強さを持ち合わせた二次曲線的な動きが特徴だ。対して「オートバイらしい雰囲気」 を醸し出すツインサスも、二次曲線的な動きを求め、直立ではなく前傾させて装着するタイプが一般的となった。

ネモケンに聞いてみよう!「サスペンション調整のメリットとは?」

先生:ご存知、我らがボス「ネモケン(こと根本健)」
生徒:永遠のライテク初心者「フジタ(RIDERS CLUB編集部員)」

 

フジタ/ライダースクラブの先輩たちから、しきりに乗りやすくなるからサス触れ、フロントもイジれるパーツを組み込めって言われるんですけど、ボクなんかコーナーで深くバンクしてるワケじゃないし、まだバイクに慣れるのがやっとの段階だから、ビギナーには関係ないって思うんですけど。

ビギナーにサスセッティングはまだまだ先の話?

ネモケン/ンー、ホントはビギナーや体重が軽い人ほど、サスペンションの設定を調整したほうがイイんだけど……。でも何でそんなに難しそうで関係ないって思ってるコト聞く気になったの?

フジタ/この前、車載工具を見ていたら、あの引っ掛けて回すサス調整レバーが入ってるじゃないですか。ムム、コレはプロしか触れないってことではなくて、もしかすると自分で調整する前提だから、メーカーが車載工具に入れてるんじゃないかと思ったんです。

ネモケン/ホー、イイ勘してるナァ。正しいヨ。でもこの工具、回すのにかなりチカラが要るしコツも必要でネ。それにどう調整するかの知識も要る。もともとサス調整は、メーカーが設定したライダーの体重よりユーザーが極端に重かったり、大柄な人がタンデムするとリヤサスが頻繁に底ヅキして車体が振られたりすると危ないので、これの対策なんだナ。

フジタ/ハァ〜、やっぱりボクには関係なさそうじゃないですか・・・。

ネモケン/じゃなくて、落ち着いて聞けヨ。これは極端に体重が軽いケースでも実は支障があるんだ。

フジタ/そー、このところ体重また減ってきてイイ感じなんデス!

ネモケン/イヤイヤ、そうじゃなくて、あの最初にリヤサスが沈む量が、じつは重要ってコト、分かるか?

フジタ/1Gダッシュって先輩が言ってるアレですね。でも用語だけ耳で覚えてるだけで、よくは分かりませんっ。

ネモケン/フツーに考えれば、サスはストロークが長いほうがショックを吸収できるから、跨がっただけで沈んじゃムダのように思えるじゃないか。

フジタ/確かに。沈んでくれたほうが足着きが良かったりするんで、というボクの事情とは違う効果がありそう・・・。

ネモケン/あれはリバウンドストロークと言ってネ、まずはショックを吸収した後に、元のストロークに落ち着くまで伸びるマージンがないと後輪が跳ねちまうのを防ぐ意味がある。でもそれにしては跨がっただけで深々と沈むよネ。もっと大事なのは、カーブで車体が傾いた旋回中に、何かの拍子で後輪がスリップしたとき、サスが伸びることで一気に滑ったりするのを抑える効果があるんだ。

フジタ/ちょっと待ってください。バイクが傾いていて、後輪がスリップして外側へズレようとして・・・。アッ、なるほど、このときリヤサスが伸びてくれれば、いきなり滑って転倒ってコトにはならない!

ネモケン/だよネ。だから体重が軽いからといって跨がったときに沈み込む量が少ないままだと、イザというときの安全マージンが十分じゃないことにもなりかねない。それに最近フジタが覚え始めたトラクション。カーブでエンジンの駆動を加えるとグッとリヤタイヤのグリップが強まって、安定した気持ちイイ旋回加速ができるあの特性も、リヤサスが沈む位置で路面に食いつく効果が変わってしまうんだゾ!

フジタ/ヤヤヤヤッ、それは困ります。ちょっと〜、やったほうがイイけどなんて、最初に軽く言わないでくださいヨ。

ネモケン/というコトで、サスセッティング超初級編の開講といこうか。

モノサス(1本サス)とツインサス(2本サス)の違いとは

フジタ/超初級って言っていただいたんで、基本的なトコロを質問しちゃいますネ。バイクのリヤサスって、後ろに2本、ツインショックって言うんですか?もしくは車体の真ん中奥の方に1本、よくモノサスって言ってますよネ。これは何の違いがあるんでしょう?

ネモケン/2本サスは、見ての通り後輪の車軸近くと車体のシート下とを結んでいて、スイングアームのストローク方向とほぼ同じ角度になってるよネ。少し前傾しているのは、深くストロークするほどスプリングの反発力を2次曲線的に強められるからなんだけど。モノサスは、スイングアームの動きをリンクを介して伝える方式。ほとんどがショックユニットをエンジン後ろにマウントしている。

これは車体の重心近くに置くことで、リーンやピッチングなどの車体の動きがあるとき、慣性力が少なく軽快にする効果があるのと、リンク方式の工夫でサスを2次曲線的に強めやすく、路面追従性で大事なスムーズな動作を得やすい。レーシーなバイクは、ほぼモノサスだ。

フジタ/性能面で言えば、モノサスが優位ってコトなんですネ。

サスセッティングが初めから合っていない?

ネモケン/まァ、そんなところだ。でもセッティングする内容は変わらない。で、さっきの1Gダッシュ、跨がったときに体重で沈み込む量だけど、ビッグバイクだと前提が身長180cmくらいで体重が80kgあたりの欧米男性なんで、フジタにはまるで合ってないってワケ。

フジタ/どうすればイイんですか?

ネモケン/プリロードといって、例の車載工具でスプリングをあらかじめ締め付けている量を変えればイイ。体重が重かったり、タンデムするときにはもっと締め付ける方向へ、軽い体重に合わせるなら緩める方向へ調整する。どのくらいが適量かは、日本人だったら70kgくらいの人に跨がってもらい、どこまで沈むかを測っておき、今度はフジタが跨がって同じような位置まで沈むようアジャスターを緩めていく。

フジタ/自分のカラダに合わせる……。まだ乗りこなしてもいないのに、そんなコトして良いなんて、フツーは抵抗感あるんじゃないかと思います。

ネモケン/自信もないうちに、だから無理もないとは思うけど、ここまで説明したようにうまいとかヘタとかではなく、バイクの機能をマージン側に使うためなんだから、ぜひ調整してほしいネ。

フジタ/でもコレはうまいライダーじゃないと効果ないと思うんですけど、スプリングじゃなくてダンパーのほうを、強めたり弱めたりとか言うじゃないですか。もちろんビギナーは触らないほうが無難ですよネェ。

乗りやすくするために最弱セッティングからスタートしよう

ネモケン/それが違うんだよナァ。ビギナーはもちろん、ベテランでも神経を張り詰めて乗るのは勘弁ってライダーも、基本的に伸び側を弱める方向、つまりまずは最弱ポジションがオススメだヨ。

フジタ/それってどういう効果があるんですか?

ネモケン/バイクってサァ、リーンしていくときロール運動、つまり車体が回転していく動きになるよネ。で、旋回していくには、後輪の旋回軌跡の外側をなぞるように前輪が旋回軌跡を描いていく。ここへすんなり何も妨げず車体の体勢をもっていってやれれば、バイクのセルフステアという特性の機能そのままに、無理なく曲がれる。しかも軽快かつ素直で何のチカラも必要としないで済む。

フジタ/ところが、人間はとくにビギナーほどハンドルにチカラが入ってしまって、うまく曲がれないんですよネ。

ネモケン/そういうコト。で、さっきのロール運動へ話を戻すけど、バイクは前輪をフロントフォークが支えていて、これが左右にステアすることで、真っ直ぐ走ったり旋回に追従したりできる。このステアする動きの支点は、ステアリングヘッドと呼ばれるフォークに車重が乗っかる箇所にあるワケだ。後輪は接地点が軸になるから、そことステアリングヘッド下側とを結ぶ直線、ロール軸を中心にリーンしていくのが理想ってことになる。

ちょうどエンジンのシリンダー後ろの、クランクケース背面あたりに重心があるので、この一番動きにくいトコロを中心に挙動するワケ。ロール軸はちょうど三角定規の二等辺じゃないほうの、長い斜辺に跨がっているとイメージしてみよう。魔法使いの箒に跨がって、前にある前輪が少し外側へ逃げる動きを妨げず、支点となる後輪を外側に振り出さない動きになればイイ……。

フジタ/ウーン、股の下に中心軸があって、そこを軸に回転……て、そんな乗り方、どんなに気を遣っても、できるワケないじゃないですか。ただでさえ、どこかにチカラが入っちゃうんですよ。

ネモケン/だよネ、そこを誤魔化してくれるのもサスペンションなんだ。ライダーが前後に捻るような挙動をバイクに与えたとするよネ。そこで前後のサスが敏感に伸びたり縮んだりしてくれれば、ロール軸が多少は妙な動きをしても、後輪と前輪は本来なら自然になぞる方向へ軌跡を描きやすくなる。これってハンドリングも軽く感じるし、曲がり方が素直でいきなり違和感がでることもなくなるので、安心で乗りやすく感じるんだナ。

フジタ/ダンパーってそういう役割だったんだ……。

ネモケン/いやいや、もちろん本来はスプリングが衝撃で縮んだ後、戻る動きでフワフワと往復を繰り返しながら収束するのを抑えるのが主な役割だヨ。でも最新のサスは大きな動きだけじゃなく、小さな動きに対しても、硬くなったり柔らかくなったり、ダンパーが減衰力を発揮する。主に伸び側でイイんだけど、これを最弱にしても、船酔いするような上下動になっちまうワケじゃない。

それにこれもスプリングと同じだけど、欧米の大柄な男性がタンデムしてアウトバーンのコーナーを200km/h以上で駆け抜けたときでも、バイクがユラユラしないようガッチリ硬めに設定して出荷してる場合がほとんど。つまり一般的にビッグバイクのダンパーは、ビギナーには硬過ぎるってことだ。

フジタ/ついていける限界、超えちゃいました……。でもだからといって、やみくもに弱めると危険でしょ?

ネモケン/ダンパーの調整機構って、基本的にメインのダンパーオイル通路ではなく、サブの通路を狭くしたり拡げたりして調整してる。だから最弱でも減衰力がゼロって危険な域にはならない。フジタだったら、間違いなく最弱のポジションが乗りやすいはずだヨ。

あと知っておいてイイのは、一流のライダーほどサスを動きやすく、つまり柔らかく設定するんだナ。このほうが、限界付近のリカバーがしやすいんだ。動き過ぎるときは前後のブレーキとか使って、サスの動きを抑える対応をしてる……。

フジタ/言われてみると、確かにトップの人たちのマシンは揺れてるように見えます。アレって柔らかいんだ。

一度味わったら止められないリプレイスサスの魅力

ネモケン/それと高価なリプレイスサスも売られてるだろ。分解すると分かるけど、部品の数が標準で装着されてるサスの何十倍もある。しかも各部品の材質や加工精度が格段に高い。だから大きな動きの中に小さな反復があっても、そこを逃がしつつ路面追従性を優先して、シッカリ減衰してくれる。発進した瞬間にビギナーにも違いが分かるほど、路面を舐めるような安心感が伝わってくるんだ。

フジタ/ゲッ、そんなに違うんだ・・・。ウォォ、知りたくなかったかも。

サスペンション調整の基本

サスペンション設定は1G’から

ライダー&バイクの荷重を支えるスプリング。バイクにセットされたサスでは、車重と体重でスプリングが縮められてバランス(1G’)する。この状態が走行するための機能を設定する出発点だ。1Gから縮んだ分が、衝撃などで伸縮できるリバウンドストロークとなり、路面追従性の大事なポイントとなる。

0G:両輪が地面に接していない状態
1G:両輪が地面に接し、車重のみの負荷
1G’:ライダーが跨って、1Gより沈んでいる

サスペンション調整をやってみよう

フルアジャスタブルのサスペンションであれば、前後合わせて6カ所も調整機構が付いており、それぞれの調整可能範囲もさまざま。まったく同じ体型の人がいないように、理想的なサスペンションの調整は人によって違うのだ。自転車のサドル高を調整するように、気軽な気持ちで試してみよう。

F/プリロードアジャスター

1回転でスプリングを1mm締めたり緩めたりするタイプが主流。初期作動性を変えることができる。

 

F/伸び側減衰アジャスター

バイクの挙動の「重い・軽い」を調整することができる。ノッチ式、または無段階タイプがある。

 

F/圧縮側減衰アジャスター

ノッチ式か無段階タイプ。補助的な役割で、装備されていない場合もある。写真のDAEGは標準装備。

 

R/プリロードアジャスター

写真はフックレンチで段階を切り換えていくタイプ。ライダーの体重差や車体姿勢の変化を補正する。

 

R/伸び側減衰アジャスター

ノッチ式、または調整段階の数字が書き込まれている。セッティングによる、フィーリングの変化が大きい。

 

R/圧縮側減衰アジャスター

ツインサスの場合、この調整による乗り味の変化は大きい。ノッチ式か調整段階の数字が書いている。

 

 

出典

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PROFILE

ネモケン

ネモケン

根本健。75 ~78年まで世界GPに参戦。帰国後はライダースクラブ編集長として、ワークスマシンから市販車まで幅広く試乗。70歳を超えた今も最新マシンに乗り、読者にライテクを指南している

ネモケンの記事一覧

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