RIDERS CLUBの表紙を撮り続けた男。大谷耕一さんが写真展を開催!

かつてライダースクラブの社員カメラマンも務めたフォトグラファーの大谷耕一さん。その写真は、光と影を追求し、バイクの美しき姿を写し出す。

大谷さん自身も無類のバイク好き

“光とバイクが融合する瞬間”をテーマに、大谷耕一カメラマンが写真展を開催する。かつて本誌社員カメラマンを務め、現在も本誌の表紙や特集でお馴染みの大谷さんの写真は、得も言われぬ陰影と、バイク好きなら誰もが見入ってしまう構図のカッコ良さに溢れている。

“カッコ良い”という簡素で平坦な言い回しでしか大谷さんの写真を表せないのが恥ずかしいが……、誤解を恐れずに言えば、カッコ良い写真を撮るカメラマンは大谷さんの他にも、もちろん多く存在する。が、そこには「バイク好きが納得する」という前置きが付く。

例えば表紙や特集のトビラページの写真には、そこで表現したいテーマが必ずある。期待のニューモデルならそのバイクの魅力をいかに伝えるかが大切だし、向き変えやトラクションなどライテクの企画なら、バイクがリーンして向きを変える瞬間や、荷重がかかった後輪がシッカリ潰れて路面を蹴る様子を象徴的に見せたい……というより、読者に直観的に感じてもらいたい。大谷さんに撮影をオーダーする際には、そんなシチュエーションを伝えるだけで、キチンと編集者の意図が“伝わる”のだ。その原点は、大谷さんも無類のバイク好きであるところにある……と思う(ちなみに大谷さん、走るのもかなり上手くて速い)。

「ずっと昔、僕がライダースクラブの社員カメラマンだった頃ですが、毎晩のように根本さん(当時は編集長)の“バイク講座”がありました。深夜の2時3時に及ぶことも度々でしたが、“明日の仕事が……”という不安より、バイクが走る理屈やライディングの技術など、とにかく話が面白くて。それが現在の撮影にも生かされていることは間違いありません。走行撮影やレースでも“ライダーが何をしているのか、バイクがどういう状況にあるのか”を理解できるから、そのシーンで“何”を撮影するべきか分かるんです。他にもインプレッションの撮影の時などは、ライダーがそのバイクを“乗りやすい、乗りにくい”と、どう感じているかも、分かります(笑)」

まさに”光とバイク”を象徴する1枚

編集部の撮影オーダーに挑戦する

とはいえ、編集部から出るオーダーが、かなり無理難題なことも少なくない。例えば“ブレーキリリースの瞬間の、右手の指からブレーキレバーに入れる力が弱まるところを中心に(その部分をセンターにピントを合わせた)、向き変えするバイクの全景の写真”といった具合だ。そんなオーダーを受けると大谷さんは『それじゃあ、やってやろうじゃないか』と、お題に対してどんな答えを出そうか、チャレンジ精神がむくむくと首をもたげてくるという。

1998年4月号。通常、表紙用の写真は文字スペースなどを考慮するが、敢えてそのスペースを無視。それに応えたのが当時の特約デザイナーである白石祐二さん。この号によって大谷さんと白石さんの信頼感と絆が深まったという

そして大谷さんが長くテーマとしてきた“光と影”。大学生の頃から、光を浴びるビルや建築物を被写体に追求し、バイクの撮影を生業としてからも、その姿勢を貫いてきた。

「現在は撮影機材が進歩したので、コンパクトで大光量や発光回数を確保できるストロボを使用していますが、以前は昼夜を問わず必要に応じて発電機を回して大型ストロボやタングステンライトを使っていました。でも、人工的な光を使わずとも、感動的な絶景に出会うことがあります。その時の“ライト”は、太陽光もしくは月光の1灯のみ。天候や時間帯によってその状況は変わるので、どのタイミングでその絶景に遭遇できるかは、運も関係するでしょう。ですが、本当はバイクを撮影するときも太陽が味方してくれて、太陽の1灯だけで素晴らしい写真が撮れたら良いな、と思います。だから頭の中では常に『光は1灯』と言い聞かせながら撮影しているのです」

1998年1月号。“光とバイクが融合する瞬間”を求め、富士山の駐車場に深夜から待機し、夜明けの自然光と人工のライトが絶妙にバランスする瞬間を切り取った一枚。本誌や姉妹紙ドゥカティマガジンでご記憶の読者も多いはず

耐久レースはカメラマンにとっても実験の場だった

そんな大谷さんだけに、レースの中でもとくに“耐久レース”に力を入れたのには理由がある。

「GPや全日本ロードレースなども、バイクをカッコ良く撮る、という部分では魅力的ですが、いかんせん時間やシーンが限られます。しかしル・マンのような24時間耐久レースなら、朝の日の出や夕暮れなど、僕にとってさまざまな“光の実験”ができます、走行台数も多いですから。バイクに対してどう光を配置するか、背景とのコントラストは……等々、本田宗一郎さんのセリフではないですけれど、僕にとって耐久レースはまさに“走る実験室”なのです」

……と、ココまで読むと大谷さんのカメラマン像は“すごく真面目でアーティスティックな人”と映るだろう。実際その通りだが、かといって決して“頑固な写真家”ではない。

「たとえばニューモデルのスタイリングやディティールカットですが、それが陰影をつけたどんなにカッコ良い写真だとしても、読者の方が“この陰になっている部分が見たいのに……”って思ったら意味が無い。だとしたら、まんべんなく光が当たってきちんと見えるフラットな写真の方が価値がありますよね」と、しっかり読者の気持ちと編集者の意図を理解して、アーティスティックなイメージ写真と分けて撮影してくれる。これも“バイク好き”という確固たるベースがあるからに他ならず、だからこそ我々は、大谷さんに長く撮影を依頼しているのだ。

朝日や夕日、闇に浮かぶライトなど、さまざまな“光と影”を試せる耐久レースは、大谷さんにとって“走る実験室”。そこで培った技術と感性を、市販車やカテゴリーの異なる撮影にも活かす。“引き出し”の多さも大谷さんの持ち味

R/C読者のみなさんと話したい

「編集者は読者さんと接する機会が多いですが、カメラマンはなかなか無い。それもあって今回の個展を企画しました。会場にいらっしゃったら“この写真はどうやって撮るの?”、もしくは“コレ、ちょっとおかしいよ”でも良いので声をかけてください。僕の写真を皆さんがどう感じているのかお話したいです」

いつも楽しくカッコ良い誌面作りに協力してくれる大谷さんの写真展。ぜひ足を運んで、その技術と感性に触れてみてはいかがだろう。

東京と大阪のCANON GALLERYで開催

CANON GALLERY銀座 
2019年10月31日(木)~11月6日(水)
10:30~18:30 (最終日15:00まで)日・祝休館
〒104-0061 東京都中央区銀座3-9-7
トレランス銀座ビルディング1F

CANON GALLERY大阪 
2019年11月28日(木)~12月4日(水)
10:00~18:00 (最終日15:00まで)日・祝休館
〒530-005 大阪市北区中之島3-2-4
中之島フェスティバルタワー・ウエスト1F

期間中、毎日ギャラリーにいるという大谷カメラマン。見かけたらぜひ声をかけて、バイク談義に花を咲かせて欲しい

 

 

 

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PROFILE

RIDERS CLUB 編集部

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1978年の創刊時から、一貫してスポーツバイクの魅力を探求し続けるオピニオンマガジン。もはやアートの域に達している、バイクの美しさを伝えるハイクオリティの写真はいまも健在。

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