
Adventure 時代を切り開いた唯一無二の存在タイガー『いまトライアンフ熱い』

伊丹孝裕
- 2020年09月30日
「いまとトライアンフが熱い」というテーマで、独特な鼓動のトリプル、伝統のツインと紹介してきた最終回は、これまでと異なりワンテーマを取り上げる。ズバリ「タイガー」だ。トライアンフの中でも、ボンネビル、デイトナと並ぶ歴史と伝統を受け継ぐモデルだが、その存在は孤高と言える。ネイキッドのボンネビル、SSモデルのデイトナという明確なジャンルの中で、タイガーはやや違う。タイガーは「タイガー」という唯一のジャンルだったのだ。近年のアドベンチャージャンルの確立により、その存在がクローズアップされたが、タイガーはADVの源流としてBMWのGSシリーズと双璧をなすモデルだった。トライアンフの熱さに迫る最終回は、そんな孤高の存在のタイガー、その魅力に注目していく。
トラクション体感マシン Tiger 900 Rally Pro & GT Pro
10年に渡り、トライアンフのミドルアドベンチャーの座を担ってきた タイガー800がフルモデルチェンジを受け、タイガー900へと進化 。エンジンもフレームもすべて刷新され、大幅に走破性が上がっているその実力を本誌テスターの伊丹がモロッコで体感してきた
エンジンがもたらす抜群の走破性と安定性
現在、トライアンフのアドベンチ ャーモデルはタイガー800とタイガー1200の2本柱で展開され、それぞれに数機種のグレード違いが用意されている。
今回、登場したタイガー900は800の後継モデルであり車名の数値が示す通り、排気量を拡大。水冷3気筒エンジンは800㏄から888㏄となり、日本にはこの4月から導入が開始される。
それに先立ち、モロッコにてワー ルドローンチが開催された。試乗は足掛け3日間に及ぶかなり大規模なもので、そのパフォーマンスを広大な大地でじっくりと堪能。先に印象 を書いておくとなによりそのエンジンが素晴らしく、優れた走破性と安定性の要になっていた。
グレードにはオフロード性能を高めたラリーとオンロード寄りのGTがあり、プロの名がつくと装備が充実する。ここからは最上級仕様に当たる「ラリープロ」の印象を中心にお届けしよう。
駆動力の秘密はTプレーンクランクシャフト

足周りはフロントに 21インチホイール、リヤに17インチホイールが装着され、それぞれに240㎜、230㎜という、たっぷりとしたトラベル量が確保されている。プロにはグリップヒーター、シートヒーター、クイックシフター、タイヤ圧モニタリングシステム、エンジンガード、アンダーガード、フォグランプなどを標準装備。通常のグレードが、レイン/ロード/スポーツ/オフロードというライディングモードを備えるのに対し、ライダーセットアップ/オフロードプロという2パターンが追加設定される。
車体サイズは決してコンパクトではないがシート形状はスリムで、2段階に切り換えられるシート高(850㎜/870㎜)を低い方にセットすれば足着き性は思いのほかいい。タイガー800比で5㎏軽量になった車重も確実に体感できるもので、フワリとストロークするサスペンションの効果も手伝ってストップ&ゴーやUターンにストレスはない。
トライアンフ共通の美点として、ディスプレイの視認性やスイッチの操作性のよさがあるが、もちろんそれらはタイガー900にも引き継がれ、特にレクチャーを受けなくとも電子デバイスの設定などは簡単に行うことができた。
アプリによるコネクティビティが充実

さて、肝心のエンジンに関して。最初のページにイラストを掲載した通り、最大のトピックは新たに設計されたクランクシャフトだ。不等間隔爆発になったそれは、等間隔爆発のエンジンに対して明らかに低く、くぐもった音でアイドリング。厚みのあるトルクを連想させ実際800㏄のユニットに対して、ピークトルクは10%も向上している。
それによってオンロードのライディングがよりイージーなものになっているのは確かながら、真骨頂はやはりオフロードにあった。ミドルクラスとはいえ、装備重量は226㎏に達し、普通に考えればダートは避けたいところだ。本誌の特性もあって、当初はGTプロをメインに扱うことも考えていたが、いざダートに踏み入れてみて考えが一変。驚異的なトラクションを発揮するエンジンに度々助けられ、ダートを丸一日走ったにもかかわらず、何事もなく、つまり転倒することなく走り切れてしまった。
オンロード感覚なら転倒しないなど当たり前のことだが、オフロードの場合はその限りではなく、ましてモロッコである。ゴロゴロとした岩石で覆われたガレ場に踏み入れることになったにもかかわらず、もしも車体が大きく揺さぶられたらスロットルを少し開ける。そうするだけで車体は安定性を取り戻し、グイグイ と進むことができたのだ。
走りの幅を広げる電子制御

豊富なアクセサリー

本誌のライテク記事で度々用いられるトラクションという言葉の意味。それを最も体感しやすいのが、おそらくこのTプレーンクランクシャフトエンジンだ。「ドドン…ドン…ドドン…ドン」という爆発の波が路面をとらえ、力強く蹴り出してくれる 時の安心感は他のアドベンチャーモ デルにないものだった。
そこに適切なトラクションコントロールや、前方&下方にオフセットされたエンジン搭載位置の効果が加わり、高い走破性を実現。ファッションではない、本気のサバイバル性能がそこにあった。
Tiger 900 Rally Pro & GT Pro DETAIL






Rally Pro 186万円
GT 158万円~160万6500円
電子制御式サスペンションを装備するGT Proのオンロード性能

- BRAND :
- RIDERS CLUB
- CREDIT :
- PHOTO/TRIUMPH TEXT/T.ITAMI 取材協力/トライアンフモーターサイクルズジャパン https://www.triumphmotorcycles.jp/ TEL03-6809-5233
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