
中野真矢が乗りたいバイクをインプレ! 『Ducati Panigale V4S&V2』

RIDERS CLUB 編集部
- 2020年11月23日
ヨーロピアンデザインの完成形とも言えるドゥカティ・パニガーレは、中野さん憧れのバイク。ここへきてエンジンが2バリエーションになり、憧れは悩みへと変わった。どっちがいいのか? どういいのか? いつも以上に真剣に乗り込んでのテストとなった
中野真矢の乗りたいバイクに乗ってみた! Ducati Panigale V4S & V2
現役時代、モトGPやスーパーバイク世界選手権でヨーロッパ中心の生活を送りました。その中で僕が一番刺激を受けたのは、デザインだったのかもしれません。
レーシングマシンのボディやカラーリングのカッコよさから始まり、何気ない街並みや建物、インテリアなど、ヨーロッパには優れたデザインがあふれています。
もちろん日本にも素晴らしいデザインはたくさんありますが、特にバイクやクルマのジャンルはヨーロッパから学ぶべきことがたくさんあるように思います。
中でも、ドゥカティの造形美は本当にスゴイですよね。決して奇抜なわけではないのに、パッと見た瞬間に「美しいな」と心が奪われる。
以前、自分のバイクアパレルブランド「 56 デザイン」のカタログ撮影用に小道具としてパニガーレを借りたんですが、写真の仕上がりを見て本当にビックリしました。映りが良すぎて、まわりの空気までも変えてしまうぐらいの力がありました。
そんなこともあって、パニガーレのカッコよさは十分に理解しているつもりです。では肝心の走りはどうなんだろう? しかも今、パニガーレには大きく分けてL型2気筒のV2と、V型4気筒のV4、ふたつのラインがあります。ちょっとわがままを言わせていただき、今回は「同時に2台乗りたい!」とお願いしました。
Ducati Panigale V4S
Ducati Panigale V2
乗りたい人 中野真矢

どこから眺めてもカッコいいデザインが最高なドゥカティ・パニガーレ。本気でいつか所有したいと夢見ていましたが、エンジンがL型2気筒とL型4気筒の2バリエーションになりました。これは悩ましい……。乗って、どちらがいいか決着をつけたいと思います!
同じ名を冠しながらも明確に個性が違う2台
美女ふたりに囲まれたかのようで、3ショットの写真を撮られるのはちょっと照れてしまいましたが(…… 我ながら大丈夫でしょうか?)、インプレはマジメに行いました。
214psものハイパワーを叩き出すV4Sと、155psのV2との間 には、約60psもの開きがあります。 これはとても大きい。試乗した筑波サーキット・コース1000はコンパクトなレイアウトですが、それでも歴然としたパワー差を感じました。
V4Sのエンジンは、低回転域からたっぷりとしたトルクが出て、しかも高回転域も非常に伸びやか。 1万2000rpm以上回り、しっかりパワーもついてきました。「高回転域なら直4の出番」という 印象もありますし、実際、V型4気筒エンジンは直4のキレイに回るフィーリングとは異なります。試しにトラクションコントロールをカットして素顔を見せてもらうと、かなり荒々しい表情でした。
でも、僕が気に入ったのはエンジンからもたらされる豊富なトラクション感なんです。コーナー立ち上がりでアクセルを開けて行った時に路面をガッと掴む感じはとても頼もしいものでした。
トラクションが優れているこの印象は、L型 2 気筒エンジンのV2も同様です。特に中回転域まではV4Sとそれほど大きな差は感じませんでした。僕が「歴然としたパワー差」を感じたのは、あくまでもサーキット走行中の高回転域での話なんです。V4Sは 回しても回してもパワーが出てきて、しかもそれがしっかりと路面を掴む。猛烈な速さです。トラクションコントロールがすぐに作動し始めるのは、パワーが有り余っている証拠でしょう。ちなみにトラコンの作動は、V4SもV2も滑らかで、違和感がありませんでした。
下から上までパワフルなV4Sのエンジンですが、あえて弱点を見出すなら、若干のピーキーさでしょうか。テストではわざとウイリーさせてエンジンのドライバビリティを確認するのですが、一定角度を維持するのが少し難しかったですね。
電子制御をカットした素の部分では、相当にワイルドなエンジンということ。逆に言えば、電子制御があるからこそここまでパワフルにでき た、ということでしょう。
もうひとつ注文をつけるとしたら、スロットルレバーが軽すぎること。パワフルなだけにアクセルワークには気を使うのですが、すぐ回ってしまおうとするのを抑えるのに右手が疲れるんです。もう少し鈍感でもいいと思うんですが……。
V4のパワーか

●エンジン:水冷4ストローク90°V型4気筒 バルブ形式 / デスモドロミック DOHC4バルブ●総排気量:1103cc●最高出力:214ps/13000rpm●最大トルク:12.6kgf・m/10000rpm●サスペンション:F=φ43mm電子制御テレスコピック倒立(オーリンズ製)/R=電子制御モノショック(オーリンズ製)●ブレーキ:F=φ330mmダブルディスク/R=φ245mmシングルディスク●タイヤサイズ:F=120/70ZR17(ピレリ製ディアブロ・スーパーコルサSP)/R=200/60ZR17(ピレリ製ディアブロ・スーパーコルサSP)●全長/全幅/全高 …NA●シート高:835mm●重量:195kg●燃料タンク容量:16L●価格:344万2000円
一方のV2のエンジンは、出力の特性がスムーズで驚かされました。ドゥカティのL型 2 気筒には何度も乗っていますが、「こんなに熟成が進んでいるのか!」と驚かされました。
ドコドコッと回転を上げる独特のツインらしさはそのまま残されているんですが、アクセルを開けた瞬間のドンツキはよく抑えられています。 国産モデルのようによくしつけられている分、「ドゥカティらしさってなんだろう……」と思うところはあるのですが、メカニズムとして正常進化するとだいたい似たところに落ち着く、ということでしょうね。
圧倒的なパワーのV4S、扱いやすいV2。エンジンキャラクターは明確に違います。それと同じぐらい違いがあったのは、サスペンションです。V4Sには前後ともオーリンズ製の電子制御サスがおごられていて、これの動きが素晴らしい!
今回は、電子制御の詳細についてテストしたわけではありませんが、素のサスペンションとしての動きが優れています。ブレーキレバーを握った瞬間から滑らかに減衰力が立ち上がり、滑らかに増加する。荷重をかけていくほどコシが出てくる感じ で、安心感、安定感も高い。コストをかけているだけのことはあるな、と感心しました。
これと比べてしまうと、V2のサスはちょっと分が悪いですね。ブレーキをかけた時にスコッとフロントが入ってしまい、減衰力もやや遅れて立ち上がってくる感じがします。
ただ、これは同時に乗り比べたから感じること。単体で乗っていたら、僕も分からなかったはずです(笑)。約120万円もの価格差があることを考えれば、「微妙な違い」と言ってもいいと思います。
V2のエレガンスか

●エンジン:水冷4ストローク90°L型2気筒 バルブ形式/デスモドロミック DOHC4バルブ●総排気量:955cc●最高出力:155ps/10750rpm●最大トルク:10.6kgf・m/9000rpm●サスペンション:F=φ43mmテレスコピック倒立(ショーワ製)/R=モノショック(ザックス製)●ブレーキ:F=φ320mmダブルディスク/R=φ245mmシングルディスク●タイヤサイズ:F=120/70ZR17(ピレリ製ディアブロ・ロッソ・コルサ2)/R=180/60ZR17(ピレリ製ディアブロ・ロッソ・コルサ2)●全長/全幅/全高:NA●シート高:840mm●重量:200kg●燃料:タンク容量17L●価格:225万円
ハンドリングそのものに大きな差はありません。どちらも軽快でありながら落ち着きがあり、どんどん攻めたくなるタイプ。ブレーキングの安定感も高いので、タイムが上がれば上がるほど気持ちよく走れます。
さて、ここまで読んでいただいた方は、「中野真矢的にはかなりV4Sに気持ちが傾いているな!? 」と思われているかもしれません。ところが、話はそう簡単じゃないんです(笑)。
はっきり言って、動力性能だけ見ればV4Sに軍配が上がります。でも、冒頭に書いたヨーロピアンデザインの美しさは、V2の方が勝っているんです。V4Sは「サーキットウエポン」という感じ。メカメカしい魅力はありますが、V2のようなエレガントさとは違います。
乗っていてエキサイティングなのはV4Sですが、ほれぼれして、うっとりと眺めるのは、V2。ガレージにどちらを置きたいかと言われれば、V2なんですよね……。
もうひとつ気になるのは、フレキシビリティです。寒い時や雨の中など、公道の悪コンディションの中を走る時は、扱いやすいV2の方が向いていそうです。
いざ自分が手に入れることを想像すると、非常に悩ましいですね。さんざんアタマを抱えながら、価格を見ては現実に引き戻されています。さすがドゥカティ、どっちにしてもスペシャルプライス。僕も「いつかはパニガーレ」で頑張ります……。
Ducati Panigale V4S Details




Ducati Panigale V4S 気に入ったポイント
エンジン

サスペンション

サイドスタンド

Ducati Panigale V2 Details




気に入ったポイント
スリムな車体

- BRAND :
- RIDERS CLUB
- CREDIT :
-
PHOTO/S.MAYUMI, K.OHTANI TEXT/G.TAKAHASHI
取材協力/ドゥカティジャパン 0120-030-292 https://www.ducati.com/jp/
SHARE
PROFILE

RIDERS CLUB 編集部
1978年の創刊時から、一貫してスポーツバイクの魅力を探求し続けるオピニオンマガジン。もはやアートの域に達している、バイクの美しさを伝えるハイクオリティの写真はいまも健在。
1978年の創刊時から、一貫してスポーツバイクの魅力を探求し続けるオピニオンマガジン。もはやアートの域に達している、バイクの美しさを伝えるハイクオリティの写真はいまも健在。