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勝てなかったシーズンーー 2020ホンダMotoGP「チャレンジャーとして挑む」

新型コロナウイルス感染拡大の影響で例年とは異なったスケジュールで進行した2020シーズン
開発の現場ではいったい何が起こっていたのだろうか スズキが躍進した原動力は? それに対しヤマハとホンダはどう対策していったのか……元MotoGPライダーの中野真矢さんがHONDA RC213Vの開発者にインタビュー

タイヤの理解に苦しんだ1年 HONDA RC213V

最高峰クラス復帰後の’82年に、フレディ・スペンサーが初優勝を遂げて以来、ホンダにとっては初めての「勝てなかったシーズン」となった
完敗を認めながらも、RC213Vの性能には揺るぎのない自信が覗く

RC213V開発者の皆さん
ホンダ・レーシング取締役レース運営室長としてHRCの全レースを取り仕切る桒田哲宏さん(写真右)と、同開発室でRC213V 20YM(’20年型)開発責任者を務めた子安剛裕さん
聞き手:中野真矢さん
MotoGPではヤマハ、カワサキと移籍し、’07年 はコニカミノルタホンダで、’08年はグレシーニホンダでRC 212Vを走らせている

タイヤの旨味をいかに引き出すかがポイント

中野  マルク・マルケス選手の怪我があり、レース、マシン開発を含め厳しいシーズンだったと思います。20年型ファクトリーマシンはどんな方向性をめざしていたのでしょうか。19年型から強化した点などを教えてください。

子安  プレシーズンでの開発は、20年に向けて基本的にはエンジン、車体すべてについて見直しました。

エンジンは19年型の流れを汲みながら出力向上を図り、さらには扱いやすさの向上を主眼に据えて、細部にわたって磨いてきました。

車体は、減速や加速時の安定性や旋回性、そしてトラクションの向上を主眼に、フレーム、スイングアー ムなどの基本骨格を見直しました。部品の配置などの細部も含めて変更を施しています。

さらに電装システム、制御も変更。 特に減速時の安定性が向上したところが、19年型と20年型の大きな違いと言えると思います。

20 年型の開発コンセプトのひとつに、加速や最高速といった動力性能を19年型以上に向上させるという目標があったので、開幕前テストではその確認を行いました。

そのために空力面ではウイングレットを見直し。主にはウイリーを抑制することを狙い、さらにダウンフ ォースを稼ぐ形状にしました。

いい評価だったんですが、カタールテストで旋回性に悪影響していることが分かったんです。開幕まで時間がないタイミングでしたので、19年型のウイングに戻す決断をしました。本来はシーズン中にアップデートする予定でしたが、コロナ禍でレギュレーションが変わったこともあ って、シーズン中もそのまま戦ったかたちになります。

中野  ミシュランが新型のリアタイヤを投入ましたが、そのタイヤに合わせるために、何か変更した点はありましたか?

子安  リアタイヤそのものが具体的にどう変わったのかは、我々ではわからないのでむしろ教えて頂きたいくらいですが(笑)、新しいリアタイヤは総じて「グリップが高い」と言われていたんです。でも装着すればそのままグリップを得られたわけではありません。使いこなし方を理解する必要があったんです。

どう使うと新しいタイヤの旨味を引き出せるのか、トライ&エラーを繰り返しました。その中で改善の糸口のひとつになったのは、サスペンションの動き方に着目したことです。そこから正のスパイラルに入ることができ、後半戦の中上貴晶選手のポールポジションやアレックス・マルケス選手の表彰台獲得につながったと思っています。

HONDA RC213V

’19年はマルク・マルケスが19戦中18戦で表彰台に立ち、12勝を挙げた。それでもホンダは開発の手を緩めず、’20年型でエンジンも車体も磨き上げ直した。誤算はマルケスの欠場だったが、ミザノテストでのアップデートを経て終盤戦は各ライダーとも徐々に調子が向上。未勝利に終わったものの、アレックス・マルケスが2度の2位表彰台獲得を果たしている

中野  最新の20年型RC213Vには、どのライダーが乗っていたのでしょうか。また、中上選手が使用していた19年型との相違点はどこでしょうか。

桒田  アレックス選手、カル・クラッチロー選手、そしてマルク選手の代役として参戦した開発ライダーのステファン・ブラドル選手は20年型 ですね。

中上選手のマシンは19年型のエンジンを使っていましたが、それ以外のパーツは実質20年仕様と考えてもらっても構いません。いいものがあれば中上選手のマシンに積極的に採用しました。
シーズン途中では、チャンピオンを狙えるような位置でレースをしてくれていたので、これまで以上のサポートやアップデートを行いました。

中野   中上選手は練習、予選、決勝と安定した走りをしていましたが、マシン、ライダーともどの辺りが向上したのでしょうか。

桒田   中上選手にとっては、これまでの経験を活かせたシーズンになりましたね。モトGP3年目となる20年を勝負の年として、強い思いで取り込んでいました。

「どうすればRC213Vを速く走らせられるか」ということで、彼が注目したのがデータでした。我々と一緒にデータなどを確認しながら、「こういうところが足りないんじゃ ないか」、「もっと何かできるんじゃないか」と研究していましたね。

そうやってシーズン中にRC213Vのよさを引き出すようなスキルを身に付けていきましたね。そうやって彼のポテンシャルが高まったことで、好成績が出せたという部分はあると思います。

中上選手自身のステップアップに加え、彼のために準備したRC213Vをシーズン中にもアップデートしていった。その結果、ライダー+マシンというパッケージのパフォー マンスを上げられたのだと思います。

ただ、中上選手の伸びしろが大きかったのは確かですね。

子安   私も同じ意見です。20年に中上選手が走らせたのは、エンジンは19年型でしたが車体は「中上仕様」。そのマシンを理解し、しっかりデータを自分の目で確認して、それを感 覚だけではなく定量的に捉えながら、自分の走りにフィードバックしていました。

走った結果も開発側に明確にフィードバックしてくれるので、開発を進めていく上でも非常に優秀なライダーだと思っています。

桒田  20シーズンはマシンの仕様を評価するという役割もかなり担ってもらいました。コメント的にもマルク選手に似た方向で、はっきりしたことを言ってくれます。有意義なフィードバックをしてくれましたね。

そういった評価能力を非常に高められた、あるいは元々彼が持っていた能力がうまく出てきた。そういう1年だったかな、という風に考えています。

’21年はチャレンジャーに

中野  ルーキーのアレックス・マルケス選手も急成長して、終盤戦には2位表彰台を2回獲得しましたね。

桒田  シーズン後半でトップ5に入ってくれれば、と考えていましたが、それ以上の結果を出してくれました。

彼はもともと慎重なタイプ。我々の方針としても、シーズン序盤はあまりセッティングをいじらずにマシンを理解してもらおうと思っていましたので、適応に時間がかかることは織り込み済みでした。

最初からお互いに「じっくり行こう」という理解が一致していた分、 変に混乱することもなく、次はこれ、それができたら今度はあれ、と着実にステップアップできた。そこにマシンのアップデートが重なって、終盤はいい成績が出せたのだと思っています。

中野  序盤に結果が出せないと新人は焦るものですが、あんなに落ち着いていたのはお兄ちゃん(マルク選手)の支えもあったんでしょうか?

桒田  どうでしょう(笑)。ただ、マルク選手が来たばかりの時も、我々は同じようにまずはマシンに慣れてもらうところから始めました。

マルク選手はそのやり方の良し悪しを理解していますし、仲のいい兄弟ですから、何かアドバイスはあったのかもしれませんね。

中野  中上選手とアレックス選手のふたりは、後半戦に飛躍的に調子を上げたように見えましたが、共通するきっかけはあったのでしょうか?

桒田  進入でも立ち上がりでも、やはりリアタイヤの理解だったのかな、と思います。

中野さんならよくご存知だと思いますが、例えば減速時の安定性を高めて限界域の挙動をつかみやすくすれば、より自信を持ってマシンを操縦できるようになりますよね。

減速だとフロントタイヤが注目されるんですが、リアも同じぐらい重要です。そのあたりのコントロール幅が、ミザノテストから広がった。今は減速を例に挙げましたが、リアタイヤの使いこなし方がつかめたことで進入、旋回、加速の各領域での扱いやすさが増し、アベレージタイムの向上につながりました。

中野  万が一マルク選手の復帰が遅れた際のプランはありますか?

桒田  シーズン再開に間に合わせるために、マルク選手は3度目の手術を済ませています。でも身体のことですので何が起こるか分かりません。

今のところは経過観察中ですが、我々としては彼が復帰した時にきちんといいマシンを提供できるように準備していますし、マルク選手もなるべく早いタイミングで100%に戻れるように、少しでもできることをやっている状況です。

復帰まで長引いた場合は、我々にはもうひとりポテンシャルのあるライダーとしてステファン・ブラドル選手がいます。ただ、あまりに長引くとレースと開発の両方ということでブラドル選手の負荷が上がりすぎてしまいますので、何か手段は考えておくつもりです。

中野  21年型RCVの開発の方向性と狙いを教えて下さい。

子安  去年の結果を真摯に受け止め、チャレンジャーという思いで取り組んでいます。レギュレーションに適合するかたちで、吸・排気系を含めたパワートレイン系、車体系を可能な限りしっかり見直しています。

桒田 今年は3冠奪還が一番の目標。ファンのみなさんに「やっぱりホンダは強いんだ」と感じてもらえるようなレースをしたいですね。

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PROFILE

RIDERS CLUB 編集部

RIDERS CLUB 編集部

1978年の創刊時から、一貫してスポーツバイクの魅力を探求し続けるオピニオンマガジン。もはやアートの域に達している、バイクの美しさを伝えるハイクオリティの写真はいまも健在。

RIDERS CLUB 編集部の記事一覧

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