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魅惑のスーパーパワー!! 『中野真矢』と『青木宣篤』がレーシングエンジンを語る

レーシングライダーはマイルドさを要求する

「走る実験室」と称されるレースの現場で磨き上げられ超高性能化を果たし、スーパーパワーを発揮するレーシングエンジン
それは、ごく一部の選ばれし者たちだけのために存在するのだろうか?
私たち一般ライダーには、まったく無関係なのだろうか?
レースを戦ってきた中野さんと青木さんは「限界域でこそ、マイルドなエンジンが必要」と口を揃える
その言葉には、レースの意味を考えるうえでとても重要なポイントが隠されている

HONDA RC211V
GPマシンのエンジンに4ストが使われ始めた02年、ホンダはV型5気筒のRC211Vを投入した。Vバンク角は75.5度で一次振動を打ち消しながら、不等間隔爆発により良好なトラクションを得ていた

中野真矢の場合 ニッキーのマシンがうらやましかった

シーズン開幕前のテストは、いつもドキドキしたものだ。ニューマシンにまたがってピットアウトしたその瞬間に、バイクの良し悪しが分かってしまうからだ。

ちなみに、レーシングライダーのいう「良し悪し」とは、自分の感覚に合うかどうか、自分が安心して思い切り攻められるかどうか、に尽きる。第三者的な正確な評価とはまた違う軸にあるのだ。

いずれにしても、「発進して走り出す」という動作をすれば、エンジン特性のうち私がもっとも重視する部分――10〜15%のスロットル開度――を必ず体感することになる。

その時のフィーリングは、バイクとの信頼感に直結する重要なポイントだ。そしてもう少しスロットルを開けながらピットロードを出てコースインする頃には、トラクションの出方が分かり、そのシーズンの行方すら読めてしまう。

「うまく行きそうだぞ」あるいは「苦労するかもしれないな」という予感は、まず外れることがない。ライバルたちと競り合いながらも、そのバイクを観察し、自分の乗っているマシンとの違いがどこにあるのかを確認している。

04〜06年はカワサキZX-RRに乗り、開発にも関わっていたため特に他車を意識していた。

素晴らしかったのは、04年にニッキー・ヘイデンが乗っていたホンダRC211Vだ。もちろん当時はライバルで「越えるべき壁」ではあったが、純粋な興味としてどんな挙動のバイクか興味津々だった。

ニッキーの走りからは、加速のよさが明らかだった。ほとんどのコーナーで強力なトラクションがかかり、しっかりと車体を前進させていた。

「すごい……。まるでタイヤからクサビが生えていて、路面に食い込んでいるみたいだ」

しかも低速コーナーから高速コーナーまで安定してトラクションを発揮している。ニッキーのテクニックもあったが、リアが滑ってもコントロールしやすそうだ。ライバルとは言え惚れ惚れしてしまう走りで、素直にうらやましかった。

高速域の伸びも両立していた。モトGPマシンのトップパワーは、人間がコントロールできる範疇をとっくに超えていた。コンピュータが適切にパワーを抑えなければ、スロットルを全開にすることもできない。

となれば、カギは「いかに制御するか」だ。RC211VはV型5気筒の素性の良さに加え、エンジン制御のレベルも相当高かった。ZX-RRの開発にあたっては大いに参考にさせてもらった。爆発間隔を変えたいくつかの仕様を試しながら作り込んでいく。パワーはあり余っている。あとはどう制御し、マイルドで扱いやすくするかだった。

熟成を続け、06年開幕戦のスペインGPでホンダのマルコ・メランドリ、そしてケーシー・ストーナーと5位争いを繰り広げた時は、「やっとここまで来たか」と感慨深かった。

その後、私はホンダRC212Vで2シーズンを戦った。V型4気筒800㏄エンジンはもちろん高度に制御されてはいたが、マイルドどころかかなりピーキーな特性だった。やはりV型5気筒の素性は、かなり優れていたのだろう。

04~08年までレプソルホンダに所属していたニッキー・ヘイデン。06年は世界王者に。SBK参戦中だった17年5月22日、自転車トレーニング中に車との衝突事故で死去

青木宣篤の場合 欲しいのは“ホタルの光”

私は2ストエンジンが好きだ。今となってはかなりの昔話で、分かる人も少なくなってしまったかもしれない。だが、私は2スト好きを譲るつもりはない(笑)。

2ストが優れているのは、コーナーの立ち上がりでスロットルを開けた瞬間だ。パラッ、パララッとあいまいでバラつきのある燃焼フィーリングが、スロットルを開けるにつれてパララララッと整い、最終的にはパキーンと鋭く回転が上昇する。

秀逸なのは、あいまいさとバラつきだ。それが微妙なタメと言おうか、間と言おうか、深いバンク角からスロットルを開ける時に、人の感覚に絶妙に寄り添ってくれるのだ。

2ストは中〜高回転域にかけての回転上昇の凄まじい跳ね上がりっぷりが印象的だが、私はどちらかといえばパーシャルから開け始めた時の、グズグズした状態が好きだ。最初はポワッとした柔らかい爆発で、それがスロットルオープンに比例して力強さを増していくイメージが、自分の走行感覚にはしっくり合う。

実際には点火の強さ自体はほとんど一定とのことだから、「ポワッとした柔らかい爆発」など妄想だ。だが、これは2ストでも4ストでも大事なポイントだと考えている。

スズキ・モトGPマシンの開発にあたり、本当にエンジニアに要求したことがあるほどだ。「スロットルの開け始めは、ホタルの光みたいにポワッとした爆発がいい」と(笑)。

私のレーシングライダーキャリアの中でもっとも印象に残っているエンジンは、96年型NSR500だ。私が乗ったのは97年。サテライトチームから世界GP500㏄クラスに参戦を開始した年だった。

ピークパワーよりも、扱いやすいマイルドさが欲しかった。そして96年型NSR500は、トルクの扱いやすさがズバ抜けていた。

スロットルと後輪がくっついているような感じ、と言えば分かるだろうか? ちょっと開ければその分だけマシンが加速し、ちょっと閉めれば閉めた分だけタコメーターの針が落ちる。過剰にリアクションすることも物足りなさもない、ちょうどいいレスポンスのエンジンだった。

量産車では、個人的に所有し続けている初代ハヤブサのエンジンが好きだ。インジェクションを搭載しているとはいえ、高度な電子制御盛りだくさんの最新モデルに比べれば、かわいいものだ。だがその分、人の感覚に寄り添ってくれる面もある。

初代ハヤブサの場合は、スロットルを開けた瞬間に、無駄に燃料を噴いている感覚がたまらない。現代的燃焼効率としては褒められたものではないのだろうが、空気量に対する燃料量や、スロットルをひねった時の燃焼の仕方、そして爆発エネルギーが後輪に伝わる感覚など、すべてがダイレクトで密接にリンクしているように感じられる。

最新モデルは燃焼効率を極めながらパワーを絞り出し、そのパワーもコンピュータ制御されている。すべてが理論や理屈に裏付けされ、無駄がない。隙なく生み出されるスーパーパワーも、凄いことだと思う。

でも時には、ホタルの光のようなあいまいな爆発や、無駄な燃料噴射が懐かしくなることもあるのだ。遠くを見つめ、目を細めながら「あの頃はよかった」と。

あいまいだったり、無駄だったり……。青木さんが愛して止まないエンジンは、96年型NSR500と99年ハヤブサのもの。「最新バイクは優れているが、失ったものも多い」

レーシングマシンも量産車も行き着くのは同じ場所

モトGPマシンのエンジンは、確かに凄まじい。とどまるところを知らない加速は圧倒的で、乗るたびに驚きを感じる。

300㎰近いと言われるパワーをそのまま公道用の量産車に持たせることは、もはやできないだろう。だが、その開発過程で生まれた技術的なエッセンスやコンセプトは、ダイレクトに量産車にも生かせる。

GSX-R1000Rで言えば、パワーアップに貢献しているフィンガーフォロワーや可変バルブタイミングVVTなどが、モトGPマシン直系と分かりやすいテクノロジーだ。

一方で、目には見えない形で受け継がれているコンセプトもある。最近のモトGPマシンのエンジン開発においてかなり重視されているのは、フリクション――摩擦だ。

最新モトGPの現場は厳しい燃費や開発制限、そしてタイヤのワンメイク化などにより、限りあるエネルギーをいかに有効に使い切るかが勝負となっている。

かねてより「フリクションロスの低減」は金科玉条のように言われ続けているが、さまざまな制限が厳しくなっている今だからこそ、モトGPではごくごくわずかなフリクションロスさえ見逃さなくなっている。

効率の向上とは、いかにも今の時代にふさわしいコンセプト。あと何年残されているか分からない、内燃機関を楽しめる時間をより長くするためにも、モトGPテクノロジーはもっともっと量産車に活用されていくだろう。(青木宣篤)

MotoGPマシン(上)と量産車(下)、似ているのはカウル形状やカラーリングだけではない。ある制限の中からいかに効率よくパワーを引き出すか、という技術的な調整が、同じように盛り込まれている

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PROFILE

RIDERS CLUB 編集部

RIDERS CLUB 編集部

1978年の創刊時から、一貫してスポーツバイクの魅力を探求し続けるオピニオンマガジン。もはやアートの域に達している、バイクの美しさを伝えるハイクオリティの写真はいまも健在。

RIDERS CLUB 編集部の記事一覧

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