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イラストレーター松屋正蔵が描く『熱狂バイク』クロニクル/M・ドゥ―ハンのレース戦略

特徴的なフォームも人気だった、M・ドゥ―ハンさんのレース戦略

今号では世界GPの最高峰であるGP500クラスで、94~98年まで5年連続世界チャンピオンを獲得した、王者ミック・ドゥ―ハンさんを取り上げます。

ロードレースのイメージとして「けがは付きもの」というのがありますが、王者ドゥ-ハンさんも例外ではありませんでした。そのキャリアは壮絶なけがとの戦いでもあったと思います。

特に右足のけがは酷く、一時は「右足切断か!」とも言われました。幸い、その後の治療はうまくいきましたが、「右足が3㎝ほど短くなってしまった」という話を聞いています。また、鈴鹿8耐での転倒で、左手の小指を切断しました。しかし、その小指の第二関節を外し、小指の先端だけを繋ぎ合わせる手術をしています。

世界王者をその手にするための代償として、数々のけがは大きいものだったのか、小さいものであったのか……。ドゥ―ハンさん自身にしかわからない世界です。

そんなドゥ―ハンさんのレース展開には特徴がありました。それは序盤戦にはペースを上げない事です。
おそらく大けがを負っていたため、無理してペースを上げることのリスクを避けていたからだと思われます。

面白かったのが周囲のライダーさんたちで、ペースを上げないドゥ―ハンさんに「勝てるのでは?」と可能性を感じて、レース中盤まではドゥ―ハンさんに絡んでいくライダーがいた事でした。観ている側とすれば、激しいトップ争いが観られるわけですから、面白くてたまりませんでした。

ところが、これは後になって分かるのですが、ドゥ―ハンさんはラストスパートに入るまでは、タイヤのエッジから1㎝ほどを使わず、残して走っていたのでした。ドゥ―ハンさんに勝とうと目一杯走っているライダー達からすれば、レース終盤になってタイヤエッジをフルに使ってフルバンクし、ペースを上げていくドゥ―ハンさんには付いていけなかったのですね。

ドゥ―ハンさんのラストスパートのパターンを見ていて気付いたのは、その日の調子が良い時には、残り周回数が少ないタイミングからのスパートでした。しかし、その日の状態に自信が持てない場合には、ラスト7周、5周、3周くらいの早いタイミングでのラストスパートになっていました。このあたりは現在のライダーも同様です。そんな見方をすると、さらにレースの理解度が上がるかも知れません。

ドゥ―ハンさんの先輩にあたる同郷のワイン・ガードナーさんは、ドゥ―ハンさんが速くなってくると

「ドゥ―ハンはマシンを寝かせ過ぎるからタイヤが保たない」

と指摘していた時期がありました。ところがタイヤメーカー側は、そのドゥ―ハンさんのライディングスタイルに対し、タイヤエッジのグリップとライフの向上に努めました。タイヤエッジのグリップの向上は、現在のタイヤ設計にも影響を与えている印象があります。

そんなドゥ―ハンさんのライディングフォームは、特徴の塊でした。左右のフォームが全く違ったのです。まるで別人でした。右コーナーに対してはオーソドックスな印象で、時にはイン側に上体を突っ込む(現在に近い)時もありました。

ところが左コーナーに関しては、タンクのセンターよりもさらにアウト側に頭がある感じで、極端なリーンアウトのフォームでした。アウト側のステップにはブーツの土踏まずを乗せ、足首を固定して体重を載せるので(僕は“かかと加重”と呼んでいますが)、ブーツの爪先がピョコンと外側を向いていました。

これは多くの世界チャンピオンライダーの共通点で、これからの若い選手を観察する場合はアウト側の足の使い方でその可能性を見てとれるかも知れません。

左コーナーでのドゥ―ハンさんのリーンアウトは、正確なアクセルワークのために、アクセルに頭を近付けていたからだと思います。耳を澄ませてアクセルワークを感じると申しましょうか、そんな印象を感じていました。

そんなドゥ―ハンさんのレース人生、同じ事をやってみたいとは思いませんが、実績の凄さにはただただ脱帽致します。凄い選手でした!

 

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PROFILE

RIDERS CLUB 編集部

RIDERS CLUB 編集部

1978年の創刊時から、一貫してスポーツバイクの魅力を探求し続けるオピニオンマガジン。もはやアートの域に達している、バイクの美しさを伝えるハイクオリティの写真はいまも健在。

RIDERS CLUB 編集部の記事一覧

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