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【上田瑠偉 ~天空、最高峰に向かって~】Vol.01 実績・自信づくり

サブ3やサブ4の達成、100マイルのウルトラ山岳マラソン完走など、当面の目標や目的の内容をより明確にもつことは、目標の実現に向けた起点になることはもちろん、達成への大きな原動力となる。現在、世界の頂点を目指し躍進し続けるトップアスリート、上田瑠偉。氏に現時点での目標を掲げてもらい、詳細を言語化・視覚化してもらった。果たして現役トップアスリートは、目標に向かってどのように成長・邁進していくのか? 本連載では、思考促進ツール「マンダラート」を使って、ライブレポートしていく。

Text : Koichi Yamamoto(DO Mt. BOOK)
Photo : Sho Fujimaki
※RUNNING style Vol.113 P102-106「上田瑠偉 ~天空、最高峰に向かって~」より

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マンダラートとは
1987年に今泉浩晃氏により考案された思考促進ツール。中心のマスに目標「A」を掲げ、その周囲のマスには目標を達成するための要素「B1~8」を書き込む。さらに「B1~8」の要素を周囲の9マス単位のスペースの中心に置き、それぞれの要素に関するさらに詳細かつ具体的な要素「C1~8」を書き込んでいく。目標を言語化・視覚化することで、思考の外化・目標の達成を促進する効果を深めていく。メジャーリーガーの大谷翔平も花巻東高校野球部時代に「マンダラート」を作成している。ちなみに、大谷翔平の当時の目標は「ドラフト1位指名8球団以上」である。

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上田瑠偉というアスリートを知るうえで、まず紹介したい上田自身の考えかた・指標がある。「本気度」。一年をとおして、つねにベストコンディションを維持することは難しい。それゆえ、重視するレースを見定め、照準を合わせる。そのための一つの指標が「本気度」だ。
「大事なレースできちんと結果を出せたらと思っています。日本選手権とか冠がついていたり、注目の高いレースでは『勝つんだ』という気持ちを高めていく。
もちろんそうでないレースも負けてもいいわけではなく、というか僕も負けたくはないので『勝つんだ』という気持ちはもっています。ただ、その気持ちのパーセンテージがそんなに高くない。そのぶん『遊び』の感覚を高めていく。そうすることで負けたときのショックが和らぎます(笑)」(上田瑠偉ブログ「Don’t think,feel」より)
こう語ったうえで、上田は各レースを数値化している。「世界選手権→本気度120%/主要海外レース→100%/その他海外レース→80〜90%/その他国内レース50%」
上田瑠偉というアスリートは、客観的に自身を見極める繊細かつ大胆な感性をもっている。
「本気度」を使い分けることで、体の疲れよりもむしろ「気力・気持ち」の疲弊の度合いが大きく変わってくるという。そんな上田が当面の目標として掲げたのは、2020年「スカイランニング世界選手権」優勝。「本気度」という上田の指標を頭の片隅に置いたうえで、氏が語る目標実現のためのキーファクターを観ていきたい。

 
マンダラート作成と目標「A」の意味するもの
マンダラート作成にあたって、まず上田はこう話す。「正直、マスを埋めること自体がとても難しい。ただ、改めて自分を見つめ直して、必要なものは何なのかということを発見していくいい機会になった。文字に書き起こしていくことで、目標に対して具体的な必要なこと、やらなければならないことがこんなにもあるんだ、と感じました」
さらに最終目標について。
「得意な距離で箔が付いている大会がスカイランニング世界選手権。ここで勝つことで世界一になりたい、そう思っています」
すでに「日本選手権」はもとより「アジア選手権」も制している上田にとって、さらなる目指すべき冠は、自ずと世界ナンバー1の座。当然の目標である。
では「世界選手権」優勝を100とすると、現在の上田は数値的にどの位置にあるのか?
「半分は越えているとは思います。60ぐらいでしょうか」
理由は?
「一つはトランスバルカニアでスティアンとわずかな差だったこと。残り3㎞で振り切られましたが、大きな自信になった。走力的なものはさほど変わらない、ただ勝負勘のようなものが足りない。コンディションの調整力、海外レースでの安定感がまだまだです」
スティアン・アンゲルムント・ビク。2016年「スカイランニング世界選手権」王者。ノルウェーの英雄、世界選手権制覇への大きな壁の一人だ。「トランスカルバニア」は、「バーティカルキロメーター・ワールド・サーキット(VWCK)」の1戦。距離7・6㎞、獲得高度1 2 0 3 mD+。去る5月10日の本大会で、上田はスティアンに続く3位だった(優勝は、スイスのパスカル・エグリ)。
「それから、サーフェイスでの得意不得意な部分がある。テクニカル的な要素で、世界選手権で優勝を争うまでにはまだまだ至っていない。世界選手権がどの大会になるかわかりませんから、どの大会、どんな条件でも対応できる能力を備えておくことが必須です」

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マンダラート「B1」目標達成への布石
目標達成への最初のキーファクターは、どんな理由から「実績・自信づくり」としたのか。
「やはり実績をつくっていくことで、いざ2020年世界選手権を迎えたときに、相手に対しても、上田はこんな実績があるからマークしなくては、と意識させることができる、レースの展開を左右しうる存在になれる。そういう意味で、実績が必要だと思っています。僕にはまだ目立った成績がないですから」
「世界選手権 コンバインド」準優勝、「世界選手権U-23スカイレース・コンバインド」優勝、「UTMB CCC」準優勝など、すでに数々の実績を築いている上田だが、その姿勢に奢りというも
のは微塵もない。上田にとっての上記の記録は実績ではなく、プロセスに過ぎないのだ。
「シリーズ戦でトップ10には入っていますが、それでは注目されない。やはり一番わかりやすい優勝というものが必要になってくる。2020年への布石です。結果として、自分自身の自信にもなるし、気持ちもラクになる」
目標達成へ向けた詰め将棋、理詰めによるプラス要因の積み重ね。それは、情報戦、レース展開の読み、さらには勝ちパターンを体得するうえでも重要な要素だという。タイムだけでは
ない、勝負に徹し、勝敗を左右する機微を見極める感性、それを研ぎ澄ますための上田のセオリーがそこにある。

 
マンダラート「C1〜4」2018年度各要素の意図
核心部に入ろう。「実績・自信づくり」確立のために必要な要素として最初に挙げた2 018年「スカイランナー・ワールド・シリーズ(SWS)」年間3位以内について。
「確か、年間3位以内に入らないと賞金が出ない(笑)」
なるほど(笑)、どのくらい?
「どうだったかなぁ?(笑)」
プロとして賞金の獲得は重要なこと。とはいえ、把握していないところも微笑ましい上田らしさ。
「やはり順位を表すのに銅メダル以上、3位以内ですね。ただ、今回ゼガマに出てみて、SWSとGTS(ゴールデン・トレイル・シリーズ)の難易度が当初の予想と逆転していると感じています」
サロモン所属の強い選手がこぞって「GTS」(サロモンの冠シリーズ戦)に参戦。いっぽう、「SWS」の常連強豪選手がケガや種目変更しているという理由からだ。
「この状態が続くなら、S W S3位以内は意外とクリアできると思う。むしろ、GTSの5位以内のほうがかなり難しい」
ライバル視している選手は?
「いまやっているレンジ(距離)のなかでは、一番はジャンくん。かなり若くて負けたくない。それからゼガマで優勝したレミくん、そしてスティアン。彼らを倒せれば、2020年の世界選手権が一気に近くなるかな、と」
ジャン・マルガリット・ソレ。スペインの新星、20歳の伸び盛りの選手だ。とはいえ、2016年の「世界選手権U -23」スカイ部門では直接対決で上田が勝っている。レミ・ボネ(スイス)。2014年「SWS」王者。スティアン・アンゲルムンド・ビク(ノルウェー)。2016年「世界選手権」VK・スカイ2冠、さらには「ゼガマ」コースレコーダーでもある。
「SWS」1勝以上は?
「昨年1回も勝てなかったですし、年間トップ3の選手を見ても、なにかしらの大会で必ず優勝している。それが最低限の必要条件かなと思っています」
焦点を絞っている大会は?
「やはりボーナスレースですね、リヴィーニョ、コマペドローサは獲りにいきたい」
2018年の「世界選手権」5位以内という目標は?
「これがなかなか厳しい設定。ただ2020年に向けて、ここで5位以内に入らないと最終目標が遠くなる。もちろん、当日のコンディションもありますが、それも含めて5位以内に入る力をつけていきたい。体調が悪くても最低一ケタには入らないと」
今回のファクターのなかでももっとも大きなウエイトをもつ重要なものだという。
そして「GTS」5位以内。
先述のとおり、かなり難易度が高い。出場予定選手が明らかにハイレベルなのだ。そのなかでトップ5にからむ、最低でもトップ10に入って最終戦となるマスターズ大会「ジ・オッター・トレイル」に出場する、というのが現状の上田の想いだ。

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マンダラート「C5〜8」2019年度要素と現況
2019年「スカイランナー・ワールド・シリーズ」年間優勝。これはある意味、世界選手権制覇と同難度なのでは?
「2019年からシリーズ戦のシステムがガラリと変わる予定なんです」
これまでは距離・斜度・獲得高度などの条件によって、シリーズ戦は「バーティカル(VK)」「スカイ」「ウルトラ」「エクストリーム」の大きく4種目にカテゴライズされていた。2019年度からは、「VK」のみ独立したシリーズ戦となり、他3種目がすべて同じシリーズ戦として開催される。
つまり、上田は「VK」を除く全種目をこなす必要がある。陸上でいえば、1500m、1万m、マラソンの3種目をすべてこなすといったところだろうか。
「それぞれにボーナスレースがあるので、各種目のキーレースでポイントを獲っていかないと年間優勝にからめない。長距離王者決定戦になるんです」
最短20㎞から最長80㎞まで、当然、各競技種目のトップランナーが一同に集結し、全体のレベルが格段にアップする。これまで3部門で王者が毎年誕生していたが、2019年度はただ一人となる。ボクシングにたとえれば、3階級統一チャンピオン、ということだ。
いっぽう、見方を変えれば、このシステムは上田の能力を最大限発揮できるものかもしれない。これまで距離71・5㎞の「日本山岳耐久レース(ハセツネCUP)」でコースレコードにて優勝、また距離101㎞の「UTMB CCC」準優勝などといった戦績を築いてきた。
現在、主戦場とするミドルレンジレースはもちろん、上田はロングレンジのレースにおいても高い能力を発揮している。
「現状のスカイ部門のシリーズ戦優勝よりは難しいと思っています。ただ、これが実現できればマルチに強いという証明になる。今後、将来的にウルトラに移行するということも考えれば、いずれは必要なタイトルになってきます」
現状のみならず、その先をも視野に入れた上田らしい展望。そう語る眼光には、さらにその先のより高い壁をも見据えているかのような穏やかだが鋭い輝きがある。
そして、さらに上田が掲げるキーファクターが、「2019年海外レース5勝以上」と「国内主要大会で負けない」。
この二つは、上田にとって最低限の目標だという。とくに国内では負けている場合ではない。自分を戒めるかのように、上田はそういう。世界の頂点を狙ううえで当然のことだ。
また、「マラソンパーソナルベスト(2時間28分)更新」あるいは「トラックレース5 0 0 0m14分台(ベストは14分26秒)」についてはこう話す。「ロードやトラックは山よりも明らかに速いペースで走ります。そのため、基礎的な走力、高負荷での筋持久力アップを目的にしています」
最後に現在の心境を聞いた。
「ヨーロッパ3週間の遠征を終えて、足りないことも見えたし、収穫もあった。まだまだですね」

7 6 ※上記は、2018年度、上田瑠偉出場予定大会

 

 

 

上田瑠偉(Ruy UEDA)
1993年、長野県生まれ。コロンビアスポーツウェアジャパンにアスリートとして契約・勤務。おもな戦績は、2014年「日本山岳耐久レース(ハセツネCUP)」優勝(コースレコード)、「スカイランニング世界選手権 コンバインド」準優勝、2016年「スカイランニングユース世界選手権U-23スカイレース・コンバインド」優勝、「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン(UTMB)CCC」準優勝、2017年「スカイランニングアジア選手権」優勝、2018年「粟ヶ岳バーティカルキロメーター」(日本選手権)優勝、「上田スカイレース」(日本選手権)優勝、「マラソン・アルパイン・ゼガマ-アイズコリー」9位、「リヴィーニョ・スカイマラソン」8位など。現在、「つねに頭の片隅に楽しむことを忘れず、苦しみすらも楽しむ」という思いを軸に、スカイランニング「スカイ」部門の世界選手権獲得を目指している。上田瑠偉ブログ「Don’ t think, feel

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※取材日:2018年6月7日。
次回のテーマは、「トレーニング」の予定です。

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