MERRELL/TRAIL GLOVE(メレル/トレイル グローブ)2011|ランニングシューズの礎を築いた“名作”たち
RUNNING style 編集部
- 2019年12月15日
ビブラム社と共同開発のアウトソールを装備!
ミッドソールは必要か? 不要か?
アメリカで300万冊以上が売れた「BORN TO RUN」。クリストファー・マクドゥーガルが著者であるこの本は、日本でも2010年2月に日本語版が出版され、良好なセールスを記録。本の内容はランニングシューズ業界にかつてないほど大きなインパクトを与えた。それは「一般的な厚みのあるミッドソールのランニングシューズはランナーを過保護にし、かえって悪影響を与えるのでは!?」という問題提起を行ったからである。
メキシコの走る民、タラウマラ族が、廃タイヤを再利用したほとんどクッション性のないワラーチと呼ばれる伝統的なサンダルで山を駆け巡る記述があり、これはポリウレタンやEVAといったミッドソールのフォーム材や各ブランドが開発したテクノロジーによって、着地時の衝撃を吸収し、ランナーを保護するというほとんどのブランドが行っていたプロダクト開発のコンセプトとは真逆の発想だったのだ。
アメリカではこの本がヒットすると、少ないながらも裸足で走るランナーが現れ、ミッドソールを廃した裸足感覚シューズのセールスも急速に拡大した。ベアフットタイプと呼ばれるカテゴリーがアメリカのランニングスペシャリティストアでも展開され始めると、ナイキ フリーとともにビブラムファイブフィンガーズとメレルのベアフットコレクションが大きなシェアを獲得した。
裸足感覚シューズのパイオニアの1つ
メレルのベアフットコレクションはビブラム社との15年に渡るパートナーシップで築き上げた信頼関係のもとに開発された裸足感覚シューズ。ビブラム社が誇るアウトソールの高いグリップ性、耐久性、屈曲性にアウトドアフィールドで培ったメレルの機能性を融合することで、着用したランナーが裸足よりも安全に裸足感覚で走ることを可能としていた。
トレイル グローブはその根幹を成すプロダクトであり、ビブラム社との共同開発で完成したアウトソールは、オフロードで高いトラクション性能を発揮した。その名のとおり、ビブラムファイブフィンガーズのつま先部分は5本指を模したデザインであり、履くランナーを選んだが、メレルのベアフットコレクションは一般的なトウデザイン。それを理由にメレルを選ぶランナーも少なくなかった。その後も裸足感覚シューズマーケットは拡大を続け、ニューバランスはミニマス、アディダスはアディピュアトレーナー、サッカニーはハットリといったベアフットタイプのスポーツシューズをリリース。このカテゴリーは世界中のランナーの間で話題となった。
しかし、しばらくするとそのブームは終息に向かう。理由はいくつかあるが、その1つが裸足感覚シューズを履いた場合の正しい着地法をマスターせずに走ったランナーが、足を痛めることが少なくなかったこと。売り上げ減少の結果、ミニマス、アディピュアの本格展開は終了。ナイキ フリーこそ現在も重要商品群として豊富なバリエーションを揃えるが、全体で見ると裸足感覚シューズに往時の勢いはない。そんななか、メレルはトレイル グローブをはじめとしたかつてのベアフットコレクションよりも厚いミッドソールを有した、ベアアクセス フレックスを発表。足の保護と効率的な脚力強化の両立を追求したシューズとして注目された。
column
2017FWシーズンのニューモデルとしてリリースされたベアアクセス フレックス。足の保護と効率的な脚力強化の両立に成功したモデルとして注目を集める。
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ランニング初心者から、サブ4を目指す中級者まで楽しめるランニング専門マガジン。トレーニングやアイテムの紹介、トレイルラン、イベントまでさまざまな情報をお届けする。
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