SEKAICHO/PANTHER DERA(セカイチョー/パンサー デラ)1968|ランニングシューズの礎を築いた“名作”たち
RUNNING style 編集部
- 2019年02月01日
小中学生の足元を支えたロングセラー!
商標名が一般名詞化するほど人気だった“マラップ”
「セロテープ」や「ヤクルト」のように、本来は特定の会社の商標でありながら、一般名詞のように思われているものがいくつか存在している。前者は「ニチバン」のセロファン製テープ、後者は「ヤクルト」の乳酸菌飲料に対する登録商標であるが、日常生活ではそれぞれのモノに対する一般名詞のように使われているケースも珍しくない。同様のことは1970年代から1980年代にかけて、スポーツシューズの世界にもみられた。それがマラップという名称だ。
このマラップは、現在のランニングシューズのような厚手のミッドソールを採用していない、アッパーとアウトソールがダイレクトに合体された構造(後年は極薄のスポンジを挟み込んだタイプも存在したが……)のスポーツシューズのことを指す。そして、それは本来「オニツカタイガー」のもつマラソンシューズの登録商標であったが、筆者が住んでいた愛知県・西三河地方の当時の小中学生の間では、マラップといえばメーカーは問わず、類似の薄底トレーニングシューズ全般をそう呼んでいた。
リーズナブルなモデルの登場でポピュラーな存在に
「オニツカタイガー」のマラップは、1970年代でも2000円台から3000円台の価格設定であったが、「月星化成」のジャガー、「世界長」のパンサーといった同タイプのシューズは本家マラップの数分の一の価格で購入することができた。そのため、当時の小中学生には通学履きや運動用として、これらのトレーニングシューズは本当にポピュラーであった。ホワイトの布製アッパーにブルーやレッドのアクセントカラーを組み合わせたタイプ、ブルーのナイロン製アッパーにホワイトのストライプを配したバリエーションなど、男女を問わず、誰もが1足は持っていたほど一般的な存在となっていたのである。
筆者もパンサーのブルー×ホワイトのナイロンアッパーのタイプを小学校の低学年から履いていて、サイズが合わなくなるたびに同じものを買い替えるほどお気に入りだったのは懐かしい思い出。コレ1足で通学から体育の授業まで幅広く対応してくれた。パンサーには厚手のミッドソールはなく、クッション性はほぼ皆無だったので、いま考えるとこのシューズを履いて運動したことは脚力の強化につながっていたと思う。それだけに中学に入り、初めてミッドソールのある「ミズノ」のMラインのトレーニングシューズを履いたときの感触は忘れられない。
1980年になると「月星化成」が高分子化学の技術で開発した発泡ウレタンソールを採用し、片足175g(25.0cm)を実現したジャガーΣを発表。軽量かつクッション性もあったことから、小中学生の足元はあっという間にマラップと呼ばれた薄底タイプからジャガーΣへと取って代わった。一度クッション性のあるシューズに慣れると、ジャガーΣを卒業した後も、厚手のシューズをセレクトするのは自然な流れ。しばらくすると通称マラップと呼ばれたタイプは忘れられた存在となったが、2016年に当時のカラーリングと厳選されたマテリアル、日本の職人技を高次元で融合させることでカジュアルシーン向けに復活。インソールにオーソライトというクッション性に優れたマテリアルを使用することで、オリジナルにはなかった快適な履き心地をプラスしていた。
column
パンサー デラだけでなくスエードアッパーのパンサー GT デラックスも復刻されるなど、パンサーはカジュアルシーンでも注目を集める存在となっている。
「ランニングシューズの名作たち」のその他記事はコチラから。
SHARE
PROFILE
RUNNING style 編集部
ランニング初心者から、サブ4を目指す中級者まで楽しめるランニング専門マガジン。トレーニングやアイテムの紹介、トレイルラン、イベントまでさまざまな情報をお届けする。
ランニング初心者から、サブ4を目指す中級者まで楽しめるランニング専門マガジン。トレーニングやアイテムの紹介、トレイルラン、イベントまでさまざまな情報をお届けする。