adidas/ENERGY BOOST(アディダス/エナジーブースト)2013|ランニングシューズの礎を築いた“名作”たち
RUNNING style 編集部
- 2019年01月31日
ミッドソール素材を変革した!
従来のマテリアルを時代遅れにする先進性
2013年2月27日、この日はスポーツシューズ業界の歴史において、大きな意味をもつ日として永久に記憶されるだろう。それは、数十年に渡ってあたりまえとされてきた「スポーツシューズのミッドソールはEVA(エチレンビニールアセテート)かポリウレタン」という常識が覆されることになったからである。前者は軽量で衝撃吸収性が高く、後者はEVAよりもクッション性に優れ、かつ耐久性も高いが重いという欠点があり、この2種類の素材のどちらかが、プレーヤーのレベル、スタイルに合わせてセレクトされ、これらの素材に各ブランド独自のテクノロジーを組み合わせるというのが、いつの間にかスポーツシューズブランドの常套手段となっていた。
これに対し、東京マラソンEXPOの初日に世界同時発売が開始されたアディダスのエナジーブーストに採用されていたブーストフォームは、それ単体で従来のスポーツシューズよりも高い衝撃吸収性、反発性、そして耐久性を兼ね備えることに成功していた。外観は梱包材としてポピュラーな発泡スチロールを思い出させる、表面の凹凸が特徴的なミッドソール素材は、アディダスとドイツの著名な化学品メーカーであるBASFによる共同開発。「E‐TPU(Expanded TPU particle foam)」、すなわち発泡熱可塑性ポリウレタンビーズが、世界で初めて搭載されたプロダクトがアディダスのエナジーブーストであり、E-TPUは、細かな独立気泡によって、強度、柔軟性、広い温度領域での卓越した反発力と軽量化を同時に実現し、微細で均一な気泡は、小さなエネルギーカプセルとなって独特なミッドソールを形成したのである。
ライバルブランドも唸る高いクッション性
実際に履いてみると、立っている状態でさえフワフワした感触があり、いかにもクッション性が高そうで、走ってみるとしっかりと着地時の衝撃をブーストフォームが吸収しつつ、このエネルギーを推進力へと変換。足裏を強く押し返してくるような比類なき反発性能も確保している点がランナーの注目を集めた。これまでも数多くのブランドが衝撃吸収性と反発性の両立を目指したが、なかなかランナーを納得させるレベルで、これを実現することは難しかったのである。
アディダスはそれまでも数々のクッショニングテクノロジーを発表してきたものの、本当の意味でライバルブランドと互角に対抗できた衝撃吸収反発機能は少なかった。しかし、このブーストフォームは、とあるブランドのマーケティング担当者による「ブーストフォームは履いて、立ったり、歩いただけで、機能性を体感できるところが脅威。店での試履き段階で機能性の高さをアピールできるからね……」というコメントが象徴していたように、試履きしたユーザーが購入を決断する確率が非常に高く、本当の意味で幅広く支持されるクッショニングテクノロジーとなった。
このようにエナジーブーストに初搭載されたブーストフォームは、ビギナーからトップアスリートまで、あらゆるレベルのユーザーから高い評価を得て、徐々に搭載モデル、採用カテゴリーを拡大。今年で誕生5周年を迎えたが、現在もアディダスを代表するクッショニングテクノロジーとして確固たるポジションを築いている。
column
2018年3月16日には比類なき衝撃吸収性&反発性はそのままに、軽量性を大きく向上させた新素材であるブーストライトを使用したアディゼロサブ2も発売されている。
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