NIKE/AIR ZOOM SPIRIDON(ナイキ/エア ズーム スピリドン)1997|ランニングシューズの礎を築いた“名作”たち
RUNNING style 編集部
- 2019年12月07日
その高い反発性能で、日本のランナーも魅了!
90年代後期の隠れた傑作モデル
エアマックス’95やインスタポンプフューリーがリードしたハイテクスニーカーブームも、1996年になると失速は隠しようがなかった。ピーク時には即完売していた各社のトップモデルも、この年には売れ残りが目立つようになったのだ。エアマックスでいうと、アッパーデザインだけを変更し、ソールユニットを前作から流用したように、この年発表のモデルは前年から大きくアップデートされていなかった。これがセールスの落ち込みの大きな要因のひとつで、翌’97年の新作にスニーカーフリークは期待し、各社はそれに応えるべく技術の粋を結集した新作を発表した。
ナイキは、当時エアマックス’98の別称で呼ばれたフルレングスビジブルエアユニットを採用したモデルをリリースし、リーボックは着地時から蹴り出しまでの間にソールユニット内部の空気が移動することで比類なき衝撃吸収反発性能を生むDMX 10を採用したDMXランを発表。これらの登場もあり、1997年のハイテクスニーカー市場は、前年よりは若干盛り返すことになる。そして当時、リーボックジャパンでランニング担当だった筆者は、エアマックスよりも、ある1足のシューズに脅威を覚えた。それがエア ズーム スピリドンである。
日本人の体格にマッチする名シューズ。いつか脚光を浴びる日がくるかも
その名のとおり、ズームエアを搭載したモデルで、このエアユニットは当初テンシルエアと命名され、のちにズームエアと改名された、反発性を重視した薄型エアである。通常のナイキエアより薄く、足裏感覚を必要とするアスリートや、サッカーのような接地感が不可欠なスポーツ向けシューズへの搭載が可能となった。また、体重の軽めなランナーが多い日本市場では、エアマックスのような大容量ナイキエアが本当の意味で、もっているポテンシャルを100%発揮するのは難しかったが、このズームエア搭載モデルは日本人の体格にもピッタリだった。
当時「他ブランドを知ってこそ自社ブランドのよさがわかる!」をモットーに、土日は他社製品をテストしていたが、このモデルを履いて走ったときに、前述のように「このシューズ走りやすい! 日本でもメチャメチャ売れるかも!?」と恐れを抱いたものである。実際には、当時の日本市場におけるナイキの売上はパフォーマンス向けよりもカジュアル向けのほうが圧倒的に多かったことから、そこそこ売れたものの、歴史に名を刻むようなヒット作となることはなかった。
あれから20年ほどが経過し、これまでに何度か復刻されたが、2016年以降の復刻モデルはこれまでで一番気合いが入っていると感じたのは筆者だけではない。オリジナルカラーはもちろん、NikeLab限定でリリースされたホワイト、ブラックといったスタイリッシュなカラーリングや、アッパーにロンドン地下鉄のフォントである「ジョンストン」を所せましと敷き詰めたNikeLab×ROUNDELのコラボモデルも登場するなど、これまでの再リリース時をはるかに凌駕する力の入れよう。
さらに、新たなインジェクションソールユニットを採用したナイキのエア ズーム スピリドン ウルトラも追加リリースされるなど、そのバリエーションは日増しに拡大している。オリジナル登場時は、エアマックスなどのプロダクトの陰に隠れ、お世辞にもポピュラーな存在とは言えなかったが、当時のリベンジをしているかのように虎視眈々とヒットモデルの座を狙っている。
column
復刻モデルでは写真のシルバー/ホワイトのように、オリジナル発表時の1997年にはリリースされていなかったスタイリッシュなカラーもラインアップ。
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