ASICS/GT2000(アシックス/GT2000)1993|ランニングシューズの礎を築いた“名作”たち
RUNNING style 編集部
- 2020年02月13日
ワールドワイドで圧倒的な信頼を得るアシックスのロングセラー
1996年のボストンでトップクラスの売れ行きを誇っていたアシックス
2016年1月25日、フォードは日本市場からの撤退を表明した。彼らは日本の自動車市場の閉鎖性を理由のひとつに挙げたが、ドイツ車は日本市場に適応したモノづくりを行うことで、日本でも良好なセールスを記録しているから、単なる言いわけのように聞こえた。
20年以上昔、筆者がリーボックの日本法人で働いていたときも、同じようなことがあった。90年代初頭、リーボックというブランドは日本のストリートシーンでは高いシェアを誇ったが、実際のスポーツシーンでは、エアロビクス&フィットネスとテニスを除くと低いシェアしか記録できなかった。アメリカ本社からランニングやバスケットボールカテゴリーにおけるシェアアップを図るように度々命令されたが、その度に日本人プレーヤーの「国内ブランド信仰」を挙げ、日本でリーボックがパフォーマンスシーンでシェアを伸ばすことは難しい旨を説明していた。”あるとき”までは。
1996年にボストンのハイアットリージェンシーで行われたグローバルミーティングの際に、地元で有名な「シティスポーツ」というスポーツショップを訪れたのだが、ランニングシューズのコーナーには日本では展開されていないアシックスのランニングシューズが数多く並べられ、スタッフによると売れ行きはトップクラスだという。これを見たとき、いままでの自分は何もせずにあきらめていただけ、ということを思い知らされた。
日本でもひと足先に日本人ランナーに対応したシューズづくりに着手したナイキジャパンは、シュータンに「迅」や「速」といった漢字ロゴを配したストリークシリーズやエアズーム カタナといったモデルを発表。薄いミッドソールを好む日本人の上級ランナーのニーズに応えることに成功する。
海外マーケットに向け独自のスペックを結集
話をアシックスに戻すと、この当時のアメリカ市場における快進撃を支えたのは、現在も世界的なベストセラーの一角に君臨するゲルカヤノシリーズとGT2000シリーズ。自分が「シティスポーツ」で見たGT2000シリーズは、中足部にトラスティックというプラスチックパーツを配し、サポート性を向上させたGT2010であったが、初代GT2000は1993年に登場。着地時に脚が過度に内側へ倒れこむオーバープロネーションを是正するサポートタイプとして開発がスタート。その機能性の高さに加えて、一体化されたブランドストライプなど、それまでのアシックスのシューズよりも斬新かつ洗練されたデザインも印象的だった。GTとは「長距離を快適に走ることができるように!」という意味を込めて自動車用語のGRANTURISMOから命名されたという。
ご存じのとおり、現在もGT2000シリーズは、幅広い層のランナーに対応する汎用性を武器に日本はもちろん、世界中でセールスランキングの上位を占めるベストセラーである。いっぽう日本のランニング市場においてもナイキやアディダスといった海外ブランドが、筆者がリーボックのプロダクト担当だった頃よりも圧倒的に高いシェアをキープしている。これはグローバル化というキーワードのもと、世界市場が均一化されたことも理由のひとつだが、各ブランドがその地域に合った製品を供給するようになったことも大きい。このGT2000はアシックスによるその最初期の取り組みなのである。
column
デビューから20年以上経過してもなお世界的なベストセラーの一角に君臨するGT2000シリーズ。2015年に秋にリリースされたGT2000 ニューヨーク4 も良好なセールスを記録。
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