adidas/ZX500(アディダス/ZX500)1984|ランニングシューズの礎を築いた“名作”たち
RUNNING style 編集部
- 2019年12月12日
シューズの機能性を飛躍的に向上させたコレクションの誕生。
一般ランナーにも高機能を提供した
1970年代、ランニングはアメリカ市場において完全に市民権を得ており、走ることがライフスタイルの一部として定着している人々も存在していた。しかしながら、アメリカ以外のヨーロッパ、アジアなどではランナーの数はそれほど多くなく、ランニングシューズマーケットの規模では、アメリカが圧倒的なサイズを誇っていた。そのような状況のアメリカ市場において、アディダスはトップアスリート向けの分野では高いシェアを誇ったが、市民ランナー間のシェアではナイキ、ブルックス、ニューバランスといったアメリカンブランドに対して、若干分が悪かったのは事実である。
また、’80年代に入るとエアロビクスを始めとしたダンス系の有酸素運動が女性の間でブームとなり、かなりの割合の女性が「どうせ運動するなら単調なジョギングよりも、音楽に合わせて楽しくエクササイズできるほうがいい!」といった感じでダンス系のプログラムへと移っていった。そのような激動の’80年代にアディダスが発表したランニングシューズコレクションがZXシリーズだ。同シリーズのデビューモデルとなったZX500は、着地時の安定性を高める合成樹脂製のスタビライザーを筆頭に、当時アディダスが保有していた数々のテクノロジーを1足に結集したモデルであり、上級ランナーだけでなく、一般ランナーが着用しても機能的なベネフィットを享受できるスペックを随所に採用していた。
逆風を跳ね除け、ストリートで長く愛される存在に
そしてZX500でもう1つ注目を集めたのが、そのデザイン&カラーリングである。レッド、ブルー、イエローといったアスレチックカラーを大胆に組み合わせた’70~’80年代初期の多くのランニングシューズと異なり、街に溶け込むグレーカラーのアッパー、ナイロンオックスフォード、メッシュ、スエードを巧みに組み合わせたマテリアルミックスを採用するなど、ランニングシューズの新時代を感じさせる外観が印象的だった。このようなデザインもあり、ZX500はランニングシーンだけでなく、一部のユーザーからはカジュアルシーンでも注目を集めることとなった。
しかしながら、1980年代中期というのはランニングというスポーツにとって冬の時代でもある。それは前述のとおりダンス系の有酸素運動が女性の間で急速にポピュラーとなったのにくわえ、1984年7月にジョギングブームの火付け役のひとつとなった「奇跡のランニング」の著者であるジム・フィックス氏が、ランニング中に心筋梗塞で急死するという悲しい出来事があり、ランニングというアクティビティにさらなる逆風が吹いたからである。
そんな時代にリリースされた初期のZXシリーズは、どちらかいうと「知る人ぞ知る」といったマニアックな存在。とくに日本ではZXシリーズというと1989年にリリースされ、トルション初搭載となったZX8000やZX9000以降しか記憶にないという人も少なくない。現在、ZX500やZX700といった3桁のZXシリーズの復刻モデルはストリートで人気となっているが、当時の日本のスポーツシューズ関係者で、ZXシリーズが後年ここまでポピュラーな存在になることを予想した人はほとんどいないだろう。とにかく、これら初期のZXシリーズは登場した時代が悪すぎたとしかいいようがない。30年以上の月日が経過して見事花開いた、まさに「遅咲きの花」である。
column
最近では頻繁に復刻され、ストリートシーンで高い人気を誇るZX500。写真のように、オリジナル展開時にはラインアップされなかったカラーリングもリリースされる。
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