adidas/ZX8000(アディダス/ZX8000)1989|ランニングシューズの礎を築いた“名作”たち
RUNNING style 編集部
- 2019年11月21日
他ブランドとは異なる視点で独自の機能性を追求
アスリートのパフォーマンス向上を追い求めた「トルションシステム」誕生
1986年にアシックスは、優れたクッション性で着地時の衝撃からランナーを保護することに成功した「αゲル」をスポーツシューズに搭載。その高いクッション性を体感したアスリートは、衝撃吸収性の重要性を再認識することとなった。1987年、ナイキはエアユニットの容量の増加およびミッドソールに窓を設けることで外部からの視認化に成功した「エアマックステクノロジー」を発表。初搭載モデルとなったランニングシューズの「エアマックス 1」はその優れた衝撃吸収反発性能により、ランナーのみならずスニーカーフリークをも魅了することに成功した。
いっぽうでリーボックは、デュポン社の高強度樹脂「ハイトレル」をチューブ状に成形し、ミッドソールに内蔵することで高い衝撃吸収反発性能を追求した「ERS(エナジーリターンシステム)」を1988年に開発するなど、’80年代後期は、スポーツシューズブランド各社が衝撃吸収性能の追求に躍起となっており、とくにランニングシューズのカテゴリーはさながら「クッショニング戦争」の様相を呈していた。
そんな中、アディダスは他ブランドとは異なる独自の視点で、機能性を追求し、大きな注目を集めることとなった。それが人間の足が本来もっている足の動きに着目することで、アスリートのパフォーマンス向上を追い求めた「トルションシステム」である。
足のねじれに着目したテクノロジーを初搭載
「トルションシステム」とは中足部のねじれをコントロールし、走行安定性を高める機構。アディダスのトルションは、アウトソールが前後に2分割され、この前後パーツを剛性に優れた合成樹脂製の棒状パーツ、「トルションバー」が結合。従来のスポーツシューズでは、着地から蹴りだしの際に、このねじれがコントロールできず本来の足の動きを再現できなかったが、トルションを搭載したスポーツシューズを履いた状態では、裸足の状態に近い足の動きをアスリートに提供することが可能であった。このテクノロジーを初めて搭載したのが「ZX8000」を始めとしたランニングシューズであった。
ランニングシューズのカテゴリーでは、クッション性に特化した「ZX8000」、足の保護性能を重視するなどサポート性を追求したサポートモデルの「ZX9000」、着地から蹴りだしまで正しい足の運びへと導くガイダンスモデルである「ZX7000」といったプロダクトがラインナップされたが、広告ビジュアルなどでとくにフィーチャーされたのが「ZX8000」であった。この「ZX8000」は発色も鮮やかなブルーのカラーリングが採用されたこともあって、シリアスランナーだけでなくストリートシーンでも人気を獲得。
トルションの機能性は他ブランドのテクノロジー、とくにナイキエアあたりと比較すると若干難解だったため、日本でも主要店舗には人間の足の骨の模型やトルションテクノロジーのコンポーネントがセットされたアタッシュケースがディスプレーされ、ショップスタッフはこれらを用いてこのテクノロジーを説明した。
アディダスのトルションが初めて発表されてから30年以上経つが、足のねじれをコントロールするというこのテクノロジーはその形状を変えて進化し続けており、現在も同社のプロダクトに採用されていることからもわかるとおり、アディダスにとって重要なテクノロジーとなっている。
column
ストリートシーンで人気を博したのが「ZX8000」のデザインを現代風にアレンジした「ZX FLUX」。シームレスなアッパーや大胆なカラーコンビネーションが人気の秘密である。
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