Onitsuka Tiger/TIGER CORSAIR(オニツカタイガー/タイガーコルセア)1969|ランニングシューズの礎を築いた“名作”たち
RUNNING style 編集部
- 2020年01月24日
“トレーニングシューズの傑作”と讃えられたモデル
TIGER CORSAIR(オニツカタイガー/タイガーコルセア)1969
日本とアメリカの共作から歴史的傑作は誕生した!
今から10年以上前、中国の海南島へ雑誌取材のために訪れた。今では大手旅行会社が春の連休にチャーター機を日本から飛ばすなど、ポピュラーなリゾート地になりつつあるが、当時は日本における知名度は皆無だった。
そんな島に訪れても気になるのは仕事柄スポーツシューズ。商店街に李寧(LiNing)や安踏(Anta)といった中国のスポーツブランドを見つけた。前者は1984年のロサンゼルス五輪で男子体操個人総合銅メダリストの李寧選手が自らの名を冠し創業したブランドで、後者は1994年に福建省で設立されたブランド。両社ともにデザインや細部の作りはナイキやアディダスといったグローバルブランドに及ばなかったが、価格のわりに機能性が高く、「近い将来世界のスポーツシューズ市場を席捲するかも!?」と感じた。
それは「歴史は繰り返す」という格言があるように、スポーツシューズ業界において、過去に似た事例があったからである。学生時代に「日本企業にランニングシューズを作らせて、(当時)業界を寡占しているドイツ企業に対抗する」という論文を書いたフィリップ・ナイトは、オレゴンの会計士だった25歳のときに日本のスポーツシューズメーカー、オニツカを説得。アメリカ西部における販売代理店となり、彼のオレゴン大学陸上部時代の師であるビル・バウワーマンと500ドルずつを出資して、1964年にブルーリボンスポーツ(以下BRS)を設立した。
彼らはオニツカタイガーのランニングシューズの輸入のみならず、ビル・バウワーマンのシューズに対するアイデアをオニツカ社へと伝えた。オニツカも高い技術力でこれに応え、数々の機能性に優れたシューズが誕生したが、その中のひとつが1969年にリリースされた「コルテッツ」である。
別々の道を歩んだ両者。しかしDNAを受け継ぐシューズは今でもランナーに愛されている
バウワーマンの助言により厚みを16mmから24mmにしたソールユニットは衝撃吸収力が高く、ヘリンボーンアウトソールはグリップ性と耐摩耗性にも優れ、トレーニングシューズとしてアメリカの陸上競技アスリートから高い評価を得ることに成功した。
のちにオニツカとBRSは意見の相違から別々の道を進むこととなり、BRSはオニツカタイガーの輸入から撤退。オリジナルブランドのナイキでコルテッツの販売を継続した。いっぽうでオニツカも、「コルテッツ」を「タイガーコルセア」に改名し継続展開。このスペックはトレーニングシューズのスタンダードとして確固たるポジションを築くこととなったのである。
ナイトとバウワーマンがBRSを設立してから50年が経過した2014年、ナイキはスポーツブランドのトップランナーとして揺ぎない地位を確保しているが、ニューヨークシティマラソンをはじめ、アメリカ国内のメジャーマラソンにおけるブランド別シューズ着用率は1977年にオニツカとジェレンク、ジィティオとの合併により誕生したアシックスの後塵を拝しているのは皮肉だ。60年代末期から70年代初頭にコルテッツがアメリカのアスリートから高い支持を受けたように、ゲルカヤノやゲルニンバスといったアシックスのプロダクトはアメリカの市民ランナーのあいだでとてもポピュラーな存在となっている。
ちなみに前述の中国2ブランドは国内ではグローバルブランドを凌ぐ高いシェアをキープしているものの、世界市場で存在感を出すまでには至っていない。
column
1976年当時のアメリカ市場向けカタログ。表紙はモントリオールだが、タイガーコルセアもモントリオールやミュンヘン72といったモデルとともにラインナップされていた。
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