nike/Tailwind(ナイキ/テイルウインド)1979|ランニングシューズの礎を築いた“名作”たち
RUNNING style 編集部
- 2020年02月25日
トライ&エラーを乗り越え“ナイキエア”初搭載モデルは誕生した
華々しいセレモニーとともに登場した「ナイキ エア マックス360」
2005年の10月、オレゴン州ビーバートンのナイキ ワールドキャンパスには世界中からのメディアが集結していた。それはナイキのエア マックス史上初めて、ミッドソールにポリウレタンやEVAといった発泡素材を使用せず、ナイキエアだけでミッドソールを構成した「ナイキ エア マックス360」のグローバルメディアイベントが行われたからである。
このイベントにはオリンピックの陸上競技で9個の金メダルを獲得したカール・ルイス、元NBA選手のチャールズ・バークリーらも訪れ、各々のナイキエアに対する思い出を語った。そしてこの魅力的なプロダクト開発の陣頭指揮を執り、社内の人間が親しみを込めて「クッショニング・ガイ」と呼ぶ、ナイキのアドバンスト イニシアチブ部門のクリエイティブ ディレクターである、トム・ハーチから興味深い発言があった。
それが「今回のエア マックス 360の誕生によって、ナイキエアの開発がスタートしたときからの夢、すなわちナイキエアだけでミッドソールを構成することが、遂に実現したのです!」というコメントだ。
どのように搭載するか? それが大きな問題だった!
「テイルウインド」は、1978年のホノルルマラソンのタイミングでテストマーケティングされ、翌1979年に正式発表されたナイキエアの初搭載モデルである。このモデルの開発段階からミッドソールのオールエアユニット化のアイデアはあったらしく、そのほかにも、“インソールをナイキエアにする”、“インソールの裏にナイキエアを貼り付ける”、“アウトソールをナイキエアにする”など、いくつものアイデアが生まれ、実際にウエアリングテストも行われた。
そんなトライ&エラーの末、最終案として採用されたのが、ポリウレタンのミッドソールの中にナイキエアを埋め込むという方法である。衝撃吸収性能と耐久性を兼ね備えたポリウレタンミッドソールとの組み合わせで、ナイキエアは比類なきクッショニング性能をランナーに提供するとともに、従来のシューズでは得られなかった推進力を与えることになったのである。まさにモデル名のテイルウインド(追い風の意味)のように。
スポーツシューズ業界でもっとも有名なテクノロジーであるナイキエアは、その誕生までには紆余曲折があったという。ウレタンフィルムで高圧ガスを包み、スポーツシューズのクッショニングディバイスにするというアイデアは、元来はNASAに勤務経験があったエンジニア、フランク・ルディによるもの。彼は当初このアイデアをアディダスに持ち込んだが、アディダスには断られ、のちにナイキに採用されたという経緯があった。
振り返ってみるとアディダスは’80年代から’90年代にかけてクッショニングテクノロジーの開発に苦労することになるので、このときにフランク・ルディのアイデアを採用していれば、スポーツシューズの歴史は大きく変わっていたかもしれない。反対にいえばナイキがナイキエアというテクノロジーをもっていなければ、現在のような大企業になっていたかは疑問である。
「足の裏に風船のようなものがあったら、着地時の衝撃を吸収してランナーを保護してくれるはずだ!」というフランク・ルディのアイデアは、当時としてもシンプルかつベーシックであったが、それに価値を見出すか否かでその後の事業展開において大きく明暗が分かれたのである。
column
復刻版のシューズに付属するカードにはテイルウインドの分解図のイラストが入る。いくつかの搭載方法が検討されたが、最終的にナイキエアはミッドソールにドロップインする構造が採用された。
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ランニング初心者から、サブ4を目指す中級者まで楽しめるランニング専門マガジン。トレーニングやアイテムの紹介、トレイルラン、イベントまでさまざまな情報をお届けする。
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