adidas/micropacer(アディダス/マイクロペーサー )1984|ランニングシューズの礎を築いた“名作”たち
RUNNING style 編集部
- 2020年01月25日
シューズとエレクトロニクスの融合の先駆けとなったマイクロペーサー
独自の開発アプローチから革新的な1足が誕生
それまでアメリカ西海岸を訪れたことはたったの2回だったのだが、2005年にオレゴン州ポートランドを2度訪れることとなった。1度は10月に行われた「ナイキ エア マックス 360」のプレスカンファレンスへの出席のため、そしてもう1度はその5カ月前、マイクロプロセッサーを内蔵した「アディダス ワン」と名づけられたランニングシューズのメディアイベントのために訪れたのである。
ナイキの本社機能がある「ナイキ ワールドキャンパス」はポートランド郊外のビーバートンにあるのに対し、アディダスのアメリカ本社はポートランドのダウンタウンからウィラメット川を挟んだ対岸、ノース・グリーリー通り沿いにある。これはアディダスUSAの中核メンバーで、惜しまれながら1993年に急逝したロブ ストラッサーが、もともとナイキに勤務していたことが関連している。
「アディダス ワン」は各ランナーの着地の衝撃をセンサーが感知し、ワイヤーとモーターが連動することで1足のシューズがあらゆるタイプのランナーに対し適切なクッション性を提供するという革新的なモデルだ。スポーツシューズとエレクトロニクスの融合という画期的な試みを具現化したことで、大きな話題となりニューヨークタイムスにも記事が掲載された。
しかしながら、アディダスがエレクトロニクスをシューズ開発に取り入れるのはじつは初めてのことではなかった。1984年、ランナーの走行時間や走行距離などを計測できるランニングコンピュータを内蔵したシューズを発表していたからである。それが「マイクロペーサー」で、同モデルはその機能面だけでなく、アッパーのカラーリングも当時としては珍しいシルバーを採用し、シューレース部分にカバーパーツを取り付けるなどそのスペーシーなデザインでも大きな話題となった。
ボストンのコンピュータ歴史博物館にも展示
アディダスというブランドは、ぬかるんだサッカーグラウンドでも高いグリップ性を発揮するスクリューインスタッド、傾斜した路面でも正しい角度に脚を保つ独立サスペンションシステム、足のねじれを正しくコントロールするZX8000などに初搭載されたトルションシステムのように、地味ながらアスリートにしっかりと訴求するテクノロジーを数多く開発。
いっぽうで、少年のスポーツシューズに対する妄想を具現化した夢のあるモデルを開発することがある。その出発点が「マイクロペーサー」なのである。その後、タイヤのように空気圧の調整でクッショニングをアジャストすることができる、1994年に発表された「チュブラー」、そして2006年に正式発売された「アディダス ワン」へとその系譜は継承されていった。
「マイクロペーサー」のその画期的なコンセプトは、スポーツシューズ業界だけでなくコンピュータの世界でも評価され、ボストンにあるコンピュータ歴史博物館にも展示されているという。いっぽうで5万8000円という日本での希望小売価格は、大卒初任給がこの当時13万円台であったことを考えると、ほとんどの人が手に入れることを諦めざるを得なかった。それだけにこれまで知り合ったスニーカーフリークで、このシューズのオリジナルの所有者はたった2人だけで、そのうちの1人はアディダスの世界的コレクターとして知られるロンドン在住のロバート ブルックスである。
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その存在感あるデザインは人気を博した。写真は2014年4月にリリースされたUNDEFEATEDとNEIGHBOURHOODによるコラボレーションモデルである。
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ランニング初心者から、サブ4を目指す中級者まで楽しめるランニング専門マガジン。トレーニングやアイテムの紹介、トレイルラン、イベントまでさまざまな情報をお届けする。
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