スローピッチジャークで狙う!「志摩沖、尾鷲沖 熊野灘のトンボジギング」【前編】
SALT WORLD 編集部
- 2021年10月15日
INDEX
冬場から春にかけて、志摩沖、熊野灘でキハダに代わり盛り上がりをみせるのがトンボ(ビンナガ)だ。それをジギングで狙う通称トンジギに多くのアングラーが通っている。そこで、ここではスローピッチジャークでのトンボ狙いで多くの結果を残している小野誠さんにその釣り方、タックル等を細かく解説してもらった。
志摩、尾鷲沖のトンジギとは……
今回はここ数年盛り上がりを見せる熊野灘のビンナガ(ビンチョウ)狙いのジギング=通称「トンジギ」を解説したい。ビンナガは、紀伊半島周辺では地方名で「トンボ」と呼ばれている。トンボのジギングを略してトンジギだ。
胸鰭が長いのが特徴で、長い鰭をトンボの羽に見立てて付いた名前だろう。マグロの仲間で小型の部類だが、文献によると最大で60㎏、16~20℃の水温を好むマグロの仲間。キハダよりも冷たく、クロマグロよりも暖かい水温だ。
ちなみに三重県では20㎏以上のトンボをタネトンと呼ぶ。これは繁殖能力のあるほどの大きさのトンボ=種のあるトンボを略して種トン→タネトンが由来。熊野灘でトンジギが流行して3シーズン目となる2021年。今シーズンこそは20㎏オーバーのタネトンを釣りたいと意気込むアングラーも多いのではないだろうか。
海域の説明
熊野灘は、和歌山県紀伊半島南端の潮岬から三重県大王崎にかけての海域。2020年の熊野灘は、秋ごろから黒潮の大蛇行が終わりつつあり、キハダやトンボの釣果にどう影響があるのか気にしていた。秋から冬へ暖かい日が続き、水温の低下も緩やかで、水温の低下に伴って少なくなる大型のキハダやメバチが、沖合18℃以上の暖かい水温のおかげでいつまでもいる様子。終わりつつあるかに見えた大蛇行も年末に向けて再び蛇行を形成し始め、沖の海水温は不安定な状況となっていた。
年末年始に大寒波が日本列島を覆い、2021年の年始から一気に冬モードになったが、沖の海水温はたいして下がらない状況だった。トンボの適水温とされている16~20℃の潮が熊野灘にどのように接近するのかを観察しながら、トンボの釣果が気になる日が続いている。黒潮の状況と遊漁船の釣果報告からどのような状況か定期的に把握していけば、先の予想ができるようになってくるから面白い。
熊野灘といっても北東部に位置する志摩沖から、南西方面には尾鷲市、熊野市の沖合までかなり広大な海域。トンボの回遊状況は水温、海流の向きと強さによって日々変化する。大蛇行中の黒潮逆流の2021年1月現在では、志摩沖から南西に黒潮の分流が流れており、志摩沖でトンボの釣果が聞かれた後に少し遅れて尾鷲や熊野沖に回遊すると読んでいる。
潮岬に向けて分流が弱まり水温が低下するので、低水温に強い大型のタネトンが志摩沖よりも尾鷲、熊野沖に多いのはこのためだろうか。この先、黒潮の大蛇行が終わり南西から北東へ上る黒潮になった時には、現在の傾向とは逆転するのではと想像している。
トンジギの基本メソッド
現在の、キハダやトンボをジギングで釣るメソッドが確立された要因としては、スローピッチジャーク(以下SPJ)のジギングスタイルの功績は大きいと感じている。ベイトタックルは巻き上げトルクや感度でスピニングタックルに勝り、ラインが撚れることがない。フォールアクションを主体に、回遊する様々なレンジを探るにはSPJのテクニックがベストと言える。
トンボは50~100mのレンジを回遊していることが多いが、深い場合は150m、浅い場合には船の直下もある。これは水温躍層とベイトのレンジに左右される。ジグをボトムまで沈めることはなく、船長の指示するレンジを効率よく狙いたい。
基本動作としては、狙いのレンジをワンピッチでゆっくりとフォールを入れながら探る。その間に、時々だがロッドを振り上げた位置からジグのフォールを開始し、水中に引き込まれるラインをロッドティップで追いかける要領で、最長4~5mのフォールを演出する。
船長の指示するレンジにジグを沈めたら、ハイスピードのワンピッチジャークで10mほど誘う。これはラインスラックを取るためだけでなく、周囲のトンボにジグの存在をアピールするためでもある。
ジャークのテンポを変えてフォール主体のジャークで誘う。私の場合はほとんどの動作がワンピッチで、ハーフピッチなどの刻んだジャークでレンジをキープして誘うことはしない。効率よく広いレンジを探ったほうが、ヒット率が上がると考えているからだ。
20~30mのレンジを探ってヒットが無ければ、ハイスピードのワンピッチジャークで一気に20~25m、時には50mほどレンジを変える。同じレンジのフォールアクションで粘らず、ある程度大きくレンジを切り替えて狙ったほうが効率よく探ることができる。
また、ハイスピードジャークでレンジを変えることは、ヒットに至らなくてもジグを発見させて追わせる効果もある。その後のロングフォールで喰わせるイメージだ。
タネトン狙いの釣り方のキモ
マグロ類は、どの種も10㎏以下の幼魚サイズであれば、ブリを釣るように連続ジャークの上げアクションによく反応してバイトする。ところが成長して20㎏超えると上げのジャークには反応しにくくなり、見切ることが多いように感じる。大型のマグロをジグで釣るためのカギは、フォールアクションだ。
フォールすればどんなジグの姿勢、アクションでも反応するかというとそうではない。フロントアシストフックを装着しただけでは、フォールさせたとしても横向きのアクションが持続せず、距離も時間も短くヒットさせることは難しい。フォールアクションの持続性に重要な条件はテールフックを付けること。これにより水流抵抗が生まれ、フォール中のジグの水平姿勢を持続させることができる。
実際の操作にも注意が必要だ。最下段にてご紹介している動画の操作を見てもらえば良いのだが、基本的にジャーク直後に糸ふけを取るためにリールを巻くことはしない。次のジャークの時にジグを引き起こすように巻き上げる動作をしている。これは少しでもフォールの距離を長く演出するため。
ジャークの後にロッドを下げると同時にリールを巻いてしまう癖のある人は、巻かない人と比べてフォール中のヒット率が落ちる。小型のトンボを多く釣った経験のある人は、どうしても上げのジャークを多用してしまう。タネトンをキャッチするためにはフォールの距離をいかに長く演出できるかが重要なのだ。
使用ロッドとジグセレクト
ロッドは、シャウト!セデュースSPJシリーズの3種の中で、一番柔らかいSPJライダーを多用している。マグロを狙うにあたり一般的に太くて強いロッドを使わなければならないとの先入観を持っている方が多いが、SPJにおいてタックルに求める役割としては、基本的にジグの操作はロッドで、魚とのファイトはリールで行うという考え方。したがってロッド選択で優先する条件は、対象魚ではなくジグの操作性だ。
トンボの場合、フォールでの操作を重視するものの、ジグの上げの操作に関してロッドに強い反発力を求めていない。このため柔らかいライダーは適度に曲がり、負荷が手元に近いので疲れが少ない。6フィート6インチと長めなので、ロングフォールの操作もしやすく非常に気に入って使っている。
一日のうちでいつチャンスが来るかわからない中で、集中力を持続してジャークを続けることが釣るための秘訣であり、アタリが無いからといって疲れて休んでいては釣れない。少しでも負荷を軽減してくれるロッドを選ぶべきだ。
ジグは、私自身が開発に携わったシャウト!のランスがおすすめ。これまで何本もトンボ、タネトンを仕留めている。ジグのフリーフォールのアクションや姿勢は形状に由来しており、リーダーやフックの影響も大きくあるものの、基本的には2種類に大別できる。
一つは、平べったい形状でロールする形でヒラヒラとフォール。もう一つは、ジグの前後方向にシーソーのようにフォールするもの。ランスは後者の動きを安定的に繰り出せるジグであり、このアクションが非常にタネトンに有効だ。
トンボに有効なカラーとしては、シルバーホロ、ゼブラグロー、レッドゴールドピンクゼブラの3色だろう。同形状でありながら比重の軽い錫製のSnランスというジグも存在する。こちらは比重が軽いのでフォールスピードを遅くすることができ、低活性時や、潮流が緩い時に有効。潮流が緩い状況では船のプレッシャーの高い直下を探る場合が多い。Snランスは軽比重のために流されやすく、船のフィッシングプレッシャーの少ない距離をとって探ることができる。潮流や風向に応じて鉛、Snを使い分けている。
小野 誠アクション映像
ジャークのテンポ、リールを巻くタイミングをYouTubeで配信している。ぜひ参考にしたい。
Ono’sトンジギ SPJタックル
ロッド:シャウト!セデュースSPJ SPJライダー
リール:スタジオオーシャンマークL50Hi
ライン:YGKオッズポート #3
リーダー:XBLAID FCアブソーバー 50lb #14
ジグ:ランス200g、250g、Snランス140g、170g
フック:シャウト!TCツインスパーク3 ㎝
フロント用&リア用 #2/0
スローピッチジャークで狙う!「志摩沖、尾鷲沖 熊野灘のトンボジギング」【後編】はこちら>>>
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近海から夢の遠征まで、初心者からベテランまで楽しめるソルトルアーフィッシングの専門誌。ジギングやキャスティング、ライトゲームなどを中心に、全国各地の魅力あるソルトゲームを紹介しています。
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