独特の発想で各種ベイトパターンに対応―遠州灘×木下真―【フィールド解説&メモリアル】
SALT WORLD 編集部
- 2021年11月14日
日本海側、太平洋側を問わず広域のマグロフィールドを駆け巡る木下真氏。キハダゲームでは地元に近い遠州灘をメインに研究を続けてきた。そんな木下氏のキハダ戦略は、ベイトのサイズに応じたちょっとユニークなアプローチ法。果たしてその真意とは?
ベイトのサイズを意識した自分なりのアプローチ
遠州灘のキハダゲームは黒潮の接岸状況に左右されますが、例年だと5月下旬に開幕し、9月いっぱいまでが安定して狙えるといえます。といっても今年に関しては4月上旬に黒潮が接岸したおかげで、例年より早い開幕となりましたが……。
狙えるサイズも30~80㎏オーバーまでと幅広いことが特徴で、ここ数年は毎年60㎏オーバーがコンスタントにキャッチされています。ベイトは実に多種多様。小型のソーダガツオや本ガツオ、イワシ、小サバ、スルメイカ、フグ、トビウオ、時には流れ藻に着いている小魚や甲殻類の時もあります。そこでベイトサイズを意識した僕の攻め方を、いくつかお話ししようと思います。
ベイトが大きいとき(スルメイカ、ソーダガツオ、トビウオ等)は20㎝以上のダイビングペンシルか、同サイズのスリムポッパーをキャストし、サミングせずに派手に着水させます。これは『ドボン!!』と落とすことにより、下にいる魚に『他魚の捕食音』としてアピールするためです。
活性がある時はそのまま放置しておけば数秒で飛びついてきます。15秒程度待って食われない場合は軽く2回ほどショートジャークを入れ、再び様子を見ます。ここでも食われなければ、ペンシルの時は水面をスキッピングで回収します。ポッパーの場合はスローポッピングを繰り返し、船まで30mくらいまできたら回収ヒットを狙って泡を噛むようにリーリングします。
小さなベイトを捕食しているときは難しいです。私は7~8㎝の「イワシ団子」のときは沈下系を使わずに、あえて18㎝前後のダイビングペンシルを使用します。その理由は(1)飲まれ切れの回避、(2)フックサイズを下げたくない、(3)少しでも飛距離が出るルアーで『届かない』を回避したいから、です。
小さなベイトを捕食していても、捕食活動に入っているキハダは垂直に立ってユラユラと漂うルアーを見破ることが出来ないようで、いく度もベイトサイズとはかけ離れたサイズのルアーでヒットさせています。
しかしながら『小サバ』の時は厄介です。団子に固まることがなく、移動も速いので、なかなかキャストポイントの『肝』が見つけにくい状況です。こんなときに初めて沈下系プラグを使い、着水と同時に高速リトリーブで対応するか、13㎝前後のポッパーでポッピング&ステイを繰り返して口を使わせています。
船下に寄せてからが本当のファイトの始まりだ
タックルとファイトについてですが、私はメインラインPE5号、リーダー130lbをメインにしています。よく『細いのでは?』と言われますが、止まっている魚を持ち上げるのではなく、『泳いでくれる魚の向きを変える』というのがマグロ類のファイトで、ヒラマサ、GTのように根ズレ等の心配がないことから、『必要最低限の強度を持ち、優先すべきは飛距離』と考えています。『どんなルアーでも、強い糸でも、魚に届かなければ意味がない』という考えです。
これまで相当数のキハダマグロと対峙し、相手の性質、体質が色々とわかってきました。特徴的なのは、ヒット直後は強烈なダッシュをしてラインを引き出していきますが、そのダッシュ力も急激に落ちるということです。5~6㎏のテンションがかかったまま200mをノンストップで走り続けられる個体には、これまで出会ったことはありません。ファーストランで100m近く走った魚は、セカンドラン以降はせいぜい30mが限度とも言えます。
マグロ類は、走った後は必ずしばらく休憩します。休憩といっても停止するのではなく、『泳ぎ続ける』性質なので、止まった後はアングラーが引く方向に頭を向け、自ら泳いでくれるため、案外船下までは誰でもすんなり寄せられると思います。魚が真下に来てからが本当のファイトの始まりです。
魚の口周りにフッキングしていれば必ず真下にきますが、エラより後ろの体にフッキングしていたら、魚が向きを変えることがないのでラインはずっと斜めのままです。こういったファイト中のライン角度で、おおかたフッキング場所の予想がつきます。
ロッドティップを円錐の頂点に、円を描いて泳ぎ続けるキハダをリフトしなければなりません。ファイトタイムの半分以上が船下のキハダを持ち上げ、水面近くまで来てもまた潜られるという繰り返しになります。
キハダのランディングはとても危険なので、元気に泳ぐうちは銛を撃つこともままならないことが多いのです。ある程度弱ってくれるまではそれなりの時間がかかりますので、アングラーはそれを見越したファイトを求められます。
上手なアングラーほど利き手にこだわらず、ファイト中にロッドを持ち替えるなど乳酸が溜まらないようにして長時間ファイトに備えています。
大切なのは『魚が頑張っている時はこちらは楽をして、魚が休んでいる時にこちらが頑張る』ことだと思います。ずっと全力でロッドを握っていると、男性の力自慢の方でもすぐにバテてしまいます。
キハダマグロゲームで大切なのは、何といっても以下のような入念な準備です。(1)釣行前に必ずラインのメンテナンスを行う。私は『PEにシュッ・プロ仕様』を使い始めてから、エアノットなどのトラブルは皆無です。(2)ノットを完璧に仕上げる。毎年、ノットのすっぽ抜けなどによりキハダに逃げられた話を聞きます。(3)ファイト中にドラグを触らなくてよいように設定する。6kg程度のドラグ値はキハダが走ればラインを出し、弱れば滑ることなくリフト可能です。
ただし、50㎏以上、あるいは体にスレでフッキングしている時は締めないと上がりません。下記に僕の使用しているキハダマグロ用の鉄板ルアーを記しておきますので、ぜひ参考にしてください。
TACKLE
1.ZENAQ TOBIZO TC-80G+ツインパワー14000XG
2.ZENAQ TOBIZO TC-100Gプロト+ソルティガ14000XH
3.ZENAQ TOBIZO TC-110G+ステラ18000XG
※ラインシステムは1と2がよつあみFD5号+プロセレ130lb、3はよつあみFD6号+プロセレ170lb。
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PROFILE
SALT WORLD 編集部
近海から夢の遠征まで、初心者からベテランまで楽しめるソルトルアーフィッシングの専門誌。ジギングやキャスティング、ライトゲームなどを中心に、全国各地の魅力あるソルトゲームを紹介しています。
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