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温泉プリン界のMVP「熱海プリン」はアツき地元愛が生んだご当地スイーツだ 【熱海特集】

奈良時代、箱根の万巻上人が、海中に沸く熱湯による漁獲量の減少に困った漁民たちの訴えを聞き、祈願によって泉脈を海中から山里へ移し、これが源泉となった伝説から、「熱海」と書いて「あたみ」と読ませる現在の温泉街の起源となったといわれる(諸説あり)熱海温泉。

高度経済成長期に最盛期を迎えて以降、レジャーの多様化や地元住人の高齢化などで、観光客が減少の一途だった同地は2010年代前後から、全国の地方観光都市のお手本とも言えるV字回復を達成したことはご承知の方も多いだろう。その立役者とされるのが株式会社「machimori」代表の市来広一郎氏だ。

地元熱海出身で、衰退する故郷、熱海の復興を目指し、単身で街おこしの活動を開始した氏は、中心市街地をリノベーションにより復興する民間の街づくり会社であるmachimoriをはじめ、地元熱海の企業や住人達を巻き込みながら、20~30代の若い世代を同地に呼び込む仕組みを様々に構築していった。

ここに紹介する「熱海プリン」もそうした、シャッター商店街だった駅前店舗をリノベーションし、地元熱海を盛り上げたいという思いから生まれた地元が誇る名物スイーツである。

熱海で最も長い行列ができる名物スイーツ

 

東海道新幹線「ひかり」または「こだま」で「東京」駅から約40分で到着する静岡県「熱海」。改札を出て右手には、熱海復権の象徴ともいうべき商店街「熱海仲見世通り商店街」と「熱海平和通り名店街」がある。昭和レトロとモダンな飲食店混然一体となって立ち並ぶ両商店街は現在、週末の日中ともなれば東京・原宿竹下通りや渋谷センター街もかくや、といえるほどの盛況ぶりである。

だが、それら商店街を抜けた先にあるテイクアウト専用の小さなスイーツ店前に並ぶ行列は、周辺にあるどの店舗よりも群を抜く長さを誇る。店頭から数十メートル先まで並ぶ客が他店への動線や交通の妨げにならないよう誘導員の姿までみかけるほどだ。そんな人気店こそ「熱海プリン  1号店」である。

 

下記の定番プリンの他、ランダムに投入される限定フレーバーも人気だ。左:「静岡抹茶プリン黒豆入り」 420円 静岡県藤枝市に拠点を置く創業100年超の老舗茶商「丸七製茶」の抹茶を使用。上品な苦みとコクのあるプリンに やわらかな大粒の丹波黒豆を入れたとろける和プリン。右:「熱海プリン 特製カラメルシロップ付」 400円 じっくりと蒸し上げ、なめらかな口当たりが特徴。素材をいかしたシンプルな味わいはどこか懐かしく、ほんのりした甘味と2種類のカラメルをブレンドした手作りの特製カラメルのまろやかなコクと苦味は大人から子供まで誰でも美味しくいただける。カバの容器入れもキュートだ。

 

運営は、地元熱海で観光土産品の企画・開発や製造、卸、販売などを手掛ける「株式会社フジノネ」。「熱海に新たな名物をつくり、地元を盛り上げたい」という思いから2017年7月にテイクアウトのプリン専門店をオープンさせた。

実は温泉地とプリンには相性の良さがある。いわゆる「温泉プリン」は九州の名湯、別府温泉がその発祥と言われ、そもそもは湧き出る温泉の蒸気を利用してプリンを蒸していたものが、温泉の蒸気と蒸し器のイメージが重なり、温泉まんじゅう同様、温泉地の定番スイーツとして全国に広がったとされる。

また、プリンの原材料である卵や牛乳は、地元産のものが使用しやすいという側面がある。実際、熱海プリンも、富士山に隣接する静岡県と山梨県の生乳を使用した地元の「丹那牛乳」を使用、地元産をアピールしている。

だが、そうした温泉プリンの系譜にあって、熱海プリンが全国的にも知られるほどの知名度を得ることができたのは、そのなめらかな口当たりと手作りのカラメルシロップといった味の特徴はもちろん、牛乳瓶のような昭和レトロなデザインボトルによる食べ歩き需要への対応、「ロイヤルミルクティプリン」、「メロンプリン」などの様々なフレーバーの提案力、さらには、いわゆる”映え”を意識したおしゃれな見た目など、作り手側の様々な工夫があったことが挙げられる。

また、地元熱海出身の力士「熱海富士」、若者の人気のファッションブランド「MILKFED.」など、ローカルスイーツの枠を超えたコラボレーションも、認知度アップに寄与している。この熱海プリンのヒットにより、現在の熱海には、スイーツの街という新たなイメージまで醸成されつつあるのだから。

苛烈な人気ぶりで行列が絶えないことから、オープンの翌年以降、熱海プリンは順次店舗数を拡大、「渚の熱海プリン」や「熱海プリンカフェ2nd」、に続く4店舗目としてオープンしたのが、今回紹介する「ドライブイン熱海プリン食堂」である。

同店はイートインがメインのカフェレストラン。熱海駅からクルマで約15分ほど、長浜海水浴場近くの国道135号沿い立地する熱海プリン最大規模の店舗だ。元飲食店だった建物に味のあるエイジング加工を施したドライブイン風の外観に仕立て直し、木のぬくもりを感じさせる店内には、屋外にテラス席を設けたイートインスペースとテイクアウト用のショーケースを設置。

店内では名物の熱海プリンはもちろん、プリンをまるごとトッピングした「プリンパンケーキ」や特大の「皿プリン」、「オムライス」など、熱海プリンを作る材料の卵やチーズ、牛乳を使ったカフェメニューをいただける。

本店では行列必至で、完売必至の限定商品も、熱海駅から距離のある同店では比較的買い求めやすいそう。

取材時は15時からのスイーツタイムにお邪魔させていただいたこともあり、スイーツタイム限定メニューという「3時の食堂プリン’s(1500円)」をオーダー。左からほーじ茶プリン、熱海プリン、抹茶プリンの3種の食べ比べセット。

心地よい初夏の風が頬を撫でるテラス席で、”追いシロップ”で味変しつつ、目前の海と海沿いの道路を気持ちよさそうに行きかうクルマを眺めながらしばし至福の時間を過ごすと、熱海プリンに込められた地元民の思いを一層感じ取れるといったら大げさだろうか。

 

カトラリーや紙ナプキン、木のトレー、カバのクッキーなど細部まで抜かりなく映え要素満載である。「カバがモチーフになっているのは、カバには塩をなめる特性があり、塩分濃度の高い熱海の温泉に合わせて採用されました」と店長の望月さん

 

「熱海プリンは熱海の街を元気にしたいという創業の思いと、誰もに愛されるスイーツであるプリンという切り口で、おかげさまで行列の絶えない人気店となりました。今年のゴールデンウィークの5月4日には、一日で全店舗合計でついに販売本数1万本を記録するまでになりました。

ただ、あまりの行列に一部の観光客や地元の方々にとっては熱海プリンが遠い存在となってしまっている面があります。当店や熱海銀座の店舗であれば、比較的立ち寄りやすく、週末はすぐに完売となってしまう限定フレーバーなども買いやすいので、ぜひご利用いただきたいです。

また、熱海プリンのお店は今年4月に5店舗となる「熱海プリン 来宮駅店」がオープンしましたが、ポップアップなどを除き、熱海エリア外への出店は現在のところありません。熱海を“盛り上げる”という熱海プリン創業の思いが根底にあるからです」。こう説明してくれたのは、忙しい店舗のオペレーションの合間で取材に応じてくれた、店長の望月恵さん。

 

 

熱海プリン1号店の時代から同店で働く古参のスタッフで、4号店出店にあたり店長をまかされた望月さんは、熱海プリンの盛り上がりを見届けてきた人物。地元静岡出身でやりがいをもって働ける職場が地元にあり、それが幅広い世代に支持されていること。熱海プリンとは、単なるスイーツでなく、熱海に暮らす人々の思いを繋げる存在なのかもしれない。

Information

ドライブイン 熱海プリン 食堂

住所:静岡県熱海市上多賀10-1

電話:0557-67-5533

営業:10時~17時半(L.O.17時)

 

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タビノリSTAFF

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『タビノリ』は、旅の楽しさは、旅のはじまりである「移動」から、旅前の準備、ふとした寄り道、車窓から見つけるお気に入りの風景など、旅の余白に目を向け発信していくメディアです。また、旅をその周縁のものと組み合わせ、定番の旅先や新しい旅の提案などを仕掛けていきます。

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