ラフェが混戦制して第8ステージ逃げ切り、ユアンはリタイア|ジロ・デ・イタリア
Bicycle Club編集部
- 2021年05月16日
ジロ・デ・イタリアの第8ステージが現地5月15日に行われ、9人による逃げグループがそのままステージ優勝争いへ。最後は残り3kmで独走に持ち込んだヴィクトル・ラフェ(コフィディス、フランス)が逃げ切り勝利。プロキャリアでは初となる勝ち星を挙げた。個人総合上位陣は大方メイン集団でレースを終えており、アッティラ・ヴァルテル(グルパマ・エフデジ、ハンガリー)はマリアローザをキープ。なお、ここまでステージ2勝を挙げていたカレブ・ユアン(ロット・スーダル、オーストラリア)は、この日でリタイアしている。
元・アンダーフランス王者がついにプロ初タイトル
前日の平坦ステージを経て、プロトンは再びアペニン山脈へと入っていく。フォッジアを出発すると、序盤から無印の登坂区間をいくつかこなして、半ば過ぎからは2級山岳ボッカ・デッラ・セルヴァの長い上りへ。頂上通過後は上り以上に長い、約40kmのダウンヒルののち、フィニッシュ地グアルディア・サンフラモンディに向けて4級山岳を駆け上がる。残り約2.5kmで最大勾配11%となるが、それからはフィニッシュラインに向かって徐々に勾配は緩やかになる。レース距離は170km、コースレイアウト的には逃げ向きとの予想である。
それもあって、スタートから逃げを狙う選手たちが次々とアタック。メイン集団も簡単には容認せず、出入りの連続に。この動きの中で新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)も果敢にトライする様子が見られる。一時的に集団が割れ、マリアローザのヴァルテルらが後方に取り残される場面もあったが、前方でのペースの上下もあってすぐに前線復帰を果たしている。
序盤の攻防が続く中、前日のステージを勝ったユアンがリタイアし大会を去ることとなった。膝の痛みが原因であるとチームからの発表があり、今後のレースに備えて大事をとる判断をした。
逃げが決まったのはスタートから50km過ぎ。数人の抜け出しが許されたのを機に、少しずつ人数を増やして9人がリードする形に。それからはリーダーチームのグルパマ・エフデジがメイン集団をコントロールし、意識的に前の9人とのタイム差を広げていった。
逃げグループでは、この日1回目の中間スプリントポイントでフェルナンド・ガビリア(UAEチームエミレーツ、コロンビア)が1位通過。その後の2級山岳ボッカ・デッラ・セルヴァも快調に上って、コービー・ホーセンス(ロット・スーダル、ベルギー)が1番に頂上へと到達。この頃にはメイン集団に対して7分のリードを得ており、このままフィニッシュまで逃げ切れる可能性を高めていく。
下りに入ってさらにペースを上げようと試みる逃げメンバー。フィニッシュまで30kmを切ってガビリアが1人加速するが、直後のコーナーで曲がり切れず落車。しばらくして逃げグループに戻ったものの、複数箇所からの流血がクラッシュの激しさを物語る。残り20kmを切ったところからは、ヴィクトール・カンペナールツ(チーム クベカ・アソス、ベルギー)やアレクシー・グジャール(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、フランス)らがアタックを試みるが、どれも決定打には至らない。
変化があったのは、残り8km。4級山岳の上りに入る直前でカンペナールツとジョヴァンニ・カルボーニ(バルディアーニCSFファイザネ、イタリア)が、他の逃げメンバーを振り切って先を急ぐ。しばし2人で進むが、上りに苦しむカンペナールツをカルボーニが残り3kmで切り離して単独先頭に。しかし、その後ろで一定ペースで追っていたのがラフェだった。カルボーニが1人になった直後に追いつくと、ペースを合わせることなくそのまま抜き去る。そこからは完全に独走態勢となり、あとはフィニッシュへ急ぐのみとなった。
十分なリードを得たラフェは、最後数百メートルを残している段階で勝利を確信。何度も握りこぶしを掲げながら、最終のストレートをウイニングライド。2017年にはアンダー23カテゴリーでフランス王者も経験している25歳が、待ちに待ったプロ初勝利の瞬間を迎えた。
この日の逃げメンバー9人がそのままステージ上位を占め、フランチェスコ・ガヴァッツィ(エオーロ・コメタ、イタリア)がラフェから36秒差の2位。その直後にニキアス・アルント(チームDSM、ドイツ)と続いた。
無理に前を追わない判断をしたメイン集団。終始グルパマ・エフデジがコントロールを担って、そのまま終盤へ。最後の上りでは総合系ライダーを擁するチームが前線に集まりながら、レースをまとめる方向へ。集団前方で複数人が絡む落車が起きたのをきっかけに中切れが発生したが、個人総合上位陣はいずれも遅れることなくステージを完了。ヴァルテルはマリアローザをきっちり守っている。
中盤以降はメイン集団前方でチームの隊列を率いた新城は、ラフェから8分44秒差のステージ85位でフィニッシュしている。
16日に行われる第9ステージは、カステル・ディ・サングロからカンポ・フェリーチェまでの158km。山岳カテゴリーの有無を問わず7つの上りが詰まったレイアウトは、後半にかけて難易度がアップ。残り40kmを切ってからの2級山岳オヴィンドーリと、無印のロッカ・ディ・カンビオ、そして今大会最初の1級山岳であるカンポ・フェリーチェと重要区間が連続する。特に最後にそびえるカンポ・フェリーチェには、残り3kmからの長いトンネルと1.6kmに及ぶグラベル区間が待ち受ける。グラベルだけ見ると最大勾配14%。マリアローザ争いは、1つ目のヤマ場を迎えるといえそうだ。
ステージ優勝 ヴィクトル・ラフェ コメント
「1日を通して逃げグループで走っていたが、上りを前に脚を使いすぎないことを心掛けていた。残り25kmからアタックが出始めて、逃げられてしまわないよう注意が必要だった。その点はうまくコントロールできたと思う。残り3kmから独走に持ち込むのが理想的だと考えていて、その通り実行できた。
昨日はエリア・ヴィヴィアーニのために働いていた。彼はチームリーダーで、この先のステージできっと勝てると思う。彼はみんなをプレッシャーから解き放ってくれ、上りのステージでは自由に走るチャンスを与えてくれた。そのおかげで勝つことができたと思っている」
個人総合首位 アッティラ・ヴァルテル コメント
「序盤でプロトンが2つに割れた局面は、後ろのグループに位置していた。良くない状況ではあったが、ロマン・ベルデやヴィンチェンツォ・ニバリらも近くにいたし、フィニッシュまでの距離が長かったので、焦ることはなかった。ロードレーサーとしての経験が浅く、まだまだ学ぶことはあるが、いまはマリアローザを着ることでレース展開がプラスに働いている。
このジャージを守ることは今の私の重責でもあるが、その意味では(個人総合優勝候補の)エガン・ベルナルらはスマートにレースを進めていると思う。彼らがトップ10圏外から脱落することは考えられないし、チャンスのあるポジションを走り続けている。私としても明日は前線での走りをうまく乗り切りたいと考えている。マリアローザを守りたいし、終盤のグラベルセクションは私にとって好条件といえるかもしれない」
ジロ・デ・イタリア2021 第8ステージ 結果
ステージ結果
1 ヴィクトル・ラフェ(コフィディス、フランス)4:06’47”
2 フランチェスコ・ガヴァッツィ(エオーロ・コメタ、イタリア)+0’36”
3 ニキアス・アルント(チームDSM、ドイツ)+0’37”
4 ネルソン・オリヴェイラ(モビスター チーム、ポルトガル)+0’41”
5 ジョヴァンニ・カルボーニ(バルディアーニCSFファイザネ、イタリア)+0’44”
6 コービー・ホーセンス(ロット・スーダル、ベルギー)+0’58”
7 ヴィクトール・カンペナールツ(チーム クベカ・アソス、ベルギー)+1’00”
8 アレクシー・グジャール(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、フランス)+1’54”
9 フェルナンド・ガビリア(UAEチームエミレーツ、コロンビア)+3’04”
10 ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ、ポルトガル)+4’48”
85 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+8’44”
マリアローザ(個人総合成績)
1 アッティラ・ヴァルテル(グルパマ・エフデジ、ハンガリー) 31:10’53”
2 レムコ・エヴェネプール(ドゥクーニンク・クイックステップ、ベルギー)+0’11”
3 エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)+0’16”
4 アレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プレミアテック、ロシア)+0’24”
5 ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・NIPPO、イギリス)+0’38”
6 ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)+0’39”
7 ジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード、イタリア)+0’41”
8 ダニエル・マーティン(イスラエル・スタートアップネイション、アイルランド)+0’47”
9 サイモン・イェーツ(チーム バイクエクスチェンジ、イギリス)+0’49”
10 ルイス・フェルファーク(アルペシン・フェニックス、ベルギー)+0’50”
113 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+55’43”
マリアチクラミーノ(ポイント賞)
ティム・メルリール(アルペシン・フェニックス、ベルギー)
マリアアッズーラ(山岳賞)
ジーノ・マーダー(バーレーン・ヴィクトリアス、スイス)
マリアビアンカ(ヤングライダー賞)
アッティラ・ヴァルテル(グルパマ・エフデジ、ハンガリー)
チーム総合成績
イネオス・グレナディアーズ
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