2大スターの新チームのフォルトゥナートがゾンコランで大金星|ジロ・デ・イタリア
Bicycle Club編集部
- 2021年05月23日
熱戦続くジロ・デ・イタリアは現地5月22日に第14ステージを実施。“魔の山”モンテ・ゾンコランの頂上フィニッシュが設定されたレースは、逃げでレースを展開したロレンツォ・フォルトゥナート(エオーロ・コメタ、イタリア)が独走に持ち込み、プロ初勝利となるステージ優勝。同時に、チームに今季&グランツール初勝利をもたらした。個人総合上位陣も動きを見せ、マリアローザのエガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)がステージ4位にまとめるとともに、ライバルから総合リードを広げることに成功している。
ジロ初出場25歳がモンテ・ゾンコラン征服
大会半ばを迎えて、プロトンはいよいよアルプス山脈へと進んでいく。この日からはドロミテ山塊に足を踏み入れるが、そのメインとなるのが最後に上る1級山岳モンテ・ゾンコラン。登坂距離14.1km、平均勾配8.5kmの上りは、最後の3kmで急激な緩急の変化が待ち受ける。特に最後の1kmは最大勾配27%に加えて、22%区間が500mにわたって続く。この急坂をクリアした先に、フィニッシュラインが敷かれる。今回は、過去数度採用されたオヴァロ側からではなく、18年ぶりとなるストリオ側から選手たちはアタックする。
スタートを前に、スプリンターのディラン・フルーネウェーヘン(チーム ユンボ・ヴィスマ、オランダ)とダヴィド・デッケル(チーム ユンボ・ヴィスマ、オランダ)、さらには前回大会個人総合2位のジャイ・ヒンドレー(チームDSM、オーストラリア)が出走しないことを発表。このステージには161選手が挑むことに。
リアルスタートからアタックがかかる中、11人が逃げを試みてやがて先頭グループへ。メイン集団もしばらくは追う構えを見せていたが、やがて容認ムードに変わるとタイム差は徐々に開いていく。その差は8分前後で推移し、主にアスタナ・プレミアテックが集団のコントロールを担った。
先頭とメイン集団との形勢はそのまま続いたが、メイン集団では残り50kmを切ったところで下りを利用してギアチェンジしたアスタナ・プレミアテックのペーシングによって数カ所で中切れが発生。一時はベルナルとアレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プレミアテック、ロシア)ら7人だけが先行し、個人総合上位陣の多くが後方に取り残される状況が生まれた。のちに後続が合流を果たすが、重要な局面に向けて少しずつ緊張感が増していった。
先頭グループは少しずつメンバーを減らしながら、約6分20秒のリードをもってモンテ・ゾンコラン登坂へ。すると、上り始めてすぐにヤン・トラトニク(バーレーン・ヴィクトリアス、スロベニア)がスルスルと抜け出し、そのまま独走に持ち込む。後ろとの差は広がっていくが、これを見てフォルトゥナートが単独で追走開始。徐々に差を縮めていき、残り7kmでトラトニクに追いつく。
後続のペースが上がらなかったこともあり、完全に2人逃げの流れになった先頭。淡々と急坂をこなすが、残り2.3kmでフォルトゥナートが均衡を破るアタック。反応できなかったトラトニクを引き離して、長く続く20%超の勾配を踏んでいく。
最後までしっかりと走り抜いたフォルトゥナートは独走でゾンコラン頂上のフィニッシュラインに到達。プロ3年目の25歳にとって待望の初勝利。また、かつてこの大会を何度と制したアルベルト・コンタドール氏とイヴァン・バッソ氏が共同運営するエオーロ・コメタにとっても、今季1つ目の勝ち星であると同時にジロ初出場初勝利を挙げた。
もう1つの戦いであるマリアローザ争いは、ゾンコランに入ってイネオス・グレナディアーズが主導権。残り5kmでヴィンチェンツォ・ニバリ(トレック・セガフレード、イタリア)が、残り2kmを切ったところではレムコ・エヴェネプール(ドゥクーニンク・クイックステップ、ベルギー)が集団から脱落。
最終局面へと続く急勾配に入って、今大会ここまであまり目立つことのなかったサイモン・イェーツ(チーム バイクエクスチェンジ、イギリス)がアタック。すかさずベルナルがチェックに動くと、個人総合3位のダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)や同6位のエマヌエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグローエ、ドイツ)らが追うものの差が少しずつ広がっていく。
イェーツの動きに合わせていたベルナルは、残り数百メートルで満を持してアタック。イェーツを引き離すと、逃げからこぼれてきた選手たちを拾いながらフィニッシュへ。ステージ4位として、総合争いのライバルとのリードを拡大することに成功。見せ場をつくったイェーツは11秒差、カルーゾと個人総合8位のジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード、イタリア)は40秒近い差でステージ終了。ウラソフやエヴェネプールはさらに遅れを喫した。
これにより、個人総合順位はシャッフル。トップのベルナルから1分33秒差でイェーツが2位に浮上。カルーゾが1分51秒差の3位。ウラソフは1分57秒差となり4位にランクダウンしている。
ハードなステージを乗り切り、23日に行われる第15ステージでは少々難易度を下げた丘陵コースへ。グラードからゴリツィアまでの147kmは、中盤から隣国スロベニアに入国し、4級山岳ゴルニェ・セロボ(登坂距離1.7km、平均勾配8.5%、最大勾配15%)を含む周回コースを2周半。最終盤には無印の上りやパヴェ(石畳)が待つ。コースセッティング的には、逃げた選手たちがステージ優勝を争うことが予想される。
ステージ優勝 ロレンツォ・フォルトゥナート コメント
「今日は、私と同じカステル・デイ・ブリッティに住むアルベルト・トンバ(冬季五輪で3つの金メダルを獲得したスキーヤー)が家族とともにレースを観ていて、彼らに勝利を報告できるのが本当に幸せだ。また、エオーロ・コメタのスタッフみんなにも感謝を伝えたい。もちろん、これまですべてを勝ち取ってきたアルベルト・コンタドールとイヴァン・バッソにもだ。イヴァンはかつてモンテ・ゾンコランで勝っていて、私にも逃げに入ってゾンコランで攻撃するようアドバイスをくれた。その通り走ることができたが、何より私自身より彼の方が私の走りを信じてくれていたのだと実感している。この勝利をきっかけに、私もチームもさらに成長していければと思っている。初めて上ったゾンコランで勝つことができて最高の気分だ」
個人総合首位 エガン・ベルナル コメント
「明らかにアスタナ・プレミアテックが勝利を狙っている雰囲気だった。彼らはわれわれにステージ優勝を狙っているか確認してきたが、私たちは逃げをそのまま行かせたいと話した。彼らのコントロールは素晴らしく、ハードなペーシングだった。下りでも巧さがあって、メイン集団がいくつも割れたほどだった。ウラソフは難敵だが、個人的にはライバルは何人もいる思ってきた。レムコ(エヴェネプール)もそうだし、ウラソフ、そして今日はサイモン・イェーツも強かった。イェーツがこのステージで動くと予測していたし、実際に強さを示した。今後も彼と競うことになりそうだ。今日のところは何とか彼の動きをチェックできてホッとしている」
ジロ・デ・イタリア2021 第14ステージ 結果
ステージ結果
1 ロレンツォ・フォルトゥナート(エオーロ・コメタ、イタリア)5:17’22”
2 ヤン・トラトニク(バーレーン・ヴィクトリアス、スロベニア)+0’26”
3 アレッサンドロ・コーヴィ(UAEチームエミレーツ、イタリア)+0’59”
4 エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)+1’43”
5 バウケ・モレマ(トレック・セガフレード、オランダ)+1’47”
6 サイモン・イェーツ(チーム バイクエクスチェンジ、イギリス)+1’54”
7 ジョージ・ベネット(チーム ユンボ・ヴィスマ、ニュージーランド)+2’10”
8 ネルソン・オリヴェイラ(モビスター チーム、ポルトガル)+2’18”
9 ダニエル・マルティネス(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)+2’22”
10 ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)ST
86 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+31’45”
マリアローザ(個人総合成績)
1 エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア) 58:30’47”
2 サイモン・イェーツ(チーム バイクエクスチェンジ、イギリス)+1’33”
3 ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)+1’51”
4 アレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プレミアテック、ロシア)+1’57”
5 ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・NIPPO、イギリス)+2’11”
6 エマヌエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグローエ、ドイツ)+2’36”
7 ジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード、イタリア)+3’03”
8 レムコ・エヴェネプール(ドゥクーニンク・クイックステップ、ベルギー)+3’52”
9 ダニエル・マルティネス(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)+3’54”
10 ロマン・バルデ(チームDSM、フランス)+4’31”
85 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+1:54’16”
マリアチクラミーノ(ポイント賞)
ペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ、スロバキア)
マリアアッズーラ(山岳賞)
ジョフリー・ブシャール(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、フランス)
マリアビアンカ(ヤングライダー賞)
エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)
チーム総合成績
イネオス・グレナディアーズ
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