悪天候で短縮のクイーンステージ、マリアローザのベルナルが圧倒的強さで征服|ジロ・デ・イタリア
Bicycle Club編集部
- 2021年05月25日
ジロ・デ・イタリア第16ステージは悪天候により標高2000m級の山岳ルートを2カ所カットし、レース距離も約60km短縮。そんな中、個人総合首位に立つエガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)が最大の難所、パッソ・ジャウで他を圧倒。独走でフィニッシュラインを駆け抜け、今大会2勝目。マリアローザ争いでもリード拡大に成功している。
チーマ・コッピのパッソ・ジャウでベルナル躍動
このステージは当初、ドロミテ山塊の標高2000m超の山々を3つ上る予定になっていた。今大会のクイーンステージの呼び名をほしいままにしていたが、ここ数日の悪天候が大きく影響。安全性の確保から、レース半ばから連続して上ることになっていたパッソ・フェダイアとパッソ・ポルドイを回避することに。後者は大会の最高標高地点「チーマ・コッピ」にもなっていたが、この日最後の登坂である1級山岳パッソ・ジャウ(標高2239m)へと移動。サチレからコルティナ・ダンペッツォまでは変わらないものの、レース距離は212kmから153kmに短縮となった。
トーマス・デヘント(ロット・スーダル、ベルギー)が膝の痛みで未出走となり、153人が大雨の中レーススタート。パレード走行が終わると次々とアタックがかかり、この日1つ目の上りである1級山岳ラ・クロセッタに入る頃には24人による先頭グループが形成。山岳賞ジャージのマリアアッズーラを着るジョフリー・ブシャール(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、フランス)もここへ加わり、狙い通り頂上をトップ通過する。
その後の下りで先頭グループから6人が抜け出す。ゴルカ・イサギレ(アスタナ・プレミアテック、スペイン)、ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ、ポルトガル)、アントニオ・ペドレロ(モビスター チーム、スペイン)、ヴィンチェンツォ・ニバリ(トレック・セガフレード、イタリア)、アマヌエル・ゲブレイグザブハイアー(トレック・セガフレード、エリトリア)、ダヴィデ・フォルモロ(UAEチームエミレーツ、イタリア)の面々は、徐々に第2グループとの差を広げ、新たな逃げ態勢に入った。
メイン集団は、早い段階でイネオス・グレナディアーズがコントロールを開始したが、残り40kmを切ってEFエデュケーション・NIPPOが主導権を確保。逃げる6人との差を少しずつ減らしていき、フィニッシュまで30kmを切った段階でその差は1分50秒とした。
いよいよ勝負どころのパッソ・ジャウへ。上り始めで先頭グループからフォルモロが独走を試みる。しかし、テンポで追ってきたペドレロが合流し、そのまま先頭交代。数秒後ろからはアルメイダも続く。
ただ、この日の主役は逃げメンバーではなく、マリアローザのベルナルだった。残り22km、頂上までは4kmほど残したところでメイン集団からアタック。この頃には集団の人数は大きく減っており、個人総合上位陣に絞られていたが、それをも崩す強力な攻撃。直後は個人総合5位につけるヒュー・カーシー(EFエデュケーション・NIPPO、イギリス)が追ったが、ベルナルが完全に振り切ると、その勢いのまま逃げていた選手たちを労せずパス。頂上までにはトップに立ち、そのままフィニッシュへつながる約17kmのダウンヒルへと移った。
ベルナルの後ろでは、個人総合3位のダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)と同9位のロマン・バルデ(チームDSM、フランス)が追うが、雨に濡れる下りでも快調に飛ばしたベルナルがリードを広げて、フィニッシュ地のコルティナ・ダンペッツォへと到達。
最後の数百メートルでは、マリアローザに敬意を表して羽織っていたレインウェアを脱いだベルナル。リーダージャージを誇示しながら、ステージ優勝の瞬間を迎えた。
後続は、ベルナルから27秒後にバルデとカルーゾが入り、さらに約50秒後から個人総合上位陣と序盤からの逃げメンバーとが次々とやってきた。
これにより、完勝のベルナルはマリアローザ争いで一歩も二歩も抜け出す形に。個人総合で2位に浮上したカルーゾに対して2分24秒のリードを確保。2位以下はシャッフルし、カルーゾが順位を1つ挙げたほか、ステージ5位にまとめたカーシーが2つランクを上げて総合タイム差3分40秒で総合3位へ。同2位でスタートしたサイモン・イェーツ(チーム バイクエクスチェンジ、イギリス)はステージ11位に終わり、総合でも5位にランクダウン。このステージで好走したバルデが9位から7位へ上げた一方で、大きく遅れたレムコ・エヴェネプール(ドゥクーニンク・クイックステップ、ベルギー)はトップ10圏内から完全に脱落している。
新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)は88位でステージを完了し、問題なく第2週までを走り終えている。
25日は今大会2回目の休息日。レースは26日から再開され、第3週初日の第17ステージはカナツェーイからセーガ・ディ・アーラまでの193km。終盤に連続して上る2つの1級山岳が重要となる1日。頂上のフィニッシュラインをめがけて、再び個人総合争いは動きが起きそうだ。
ステージ優勝、個人総合首位 エガン・ベルナル コメント
「ステージの短縮がチームに何をもたらすか正直分からなかった。長距離ステージをコントロールする方がチームにとっては良かったかもしれない。ただ、どんな形でも対応できるよう準備はしていたし、最後はやるべきことがしっかりできた。
クイーンステージをどう戦うかは数日間考えていた。何か特別なことをしたいと思っていた。普段はステージを勝つことが少ないし、マリアローザを着ると特にステージを狙う頻度が減るので、フィニッシュ前はレインジャケットを脱ぐのにもたついてしまった。それでも、マリアローザに敬意を示したかった。私にとってマリアローザはマルコ・パンターニを思い起こさせるもので、家に帰ると彼の肖像画があるほどだ。他のサイクリストのものは一切なく、唯一パンターニのものだけ持っている。
2分24秒の総合リードは、今後の山岳ステージで困難に直面しても冷静に対処できるだけの差だと思っている」
ジロ・デ・イタリア2021 第16ステージ 結果
ステージ結果
1 エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)4:22’41”
2 ロマン・バルデ(チームDSM、フランス)+0’27”
3 ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)ST
4 ジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード、イタリア)+1’18”
5 ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・NIPPO、イギリス)+1’19”
6 ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ、ポルトガル)+1’21”
7 アレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プレミアテック、ロシア)+2’11”
8 ゴルカ・イサギレ(アスタナ・プレミアテック、スペイン)+2’31”
9 ダヴィデ・フォルモロ(UAEチームエミレーツ、イタリア)+2’33”
10 トビアス・フォス(チーム ユンボ・ヴィスマ、ノルウェー)ST
88 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+32’26”
マリアローザ(個人総合成績)
1 エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア) 66:36’04”
2 ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)+2’24”
3 ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・NIPPO、イギリス)+3’40”
4 アレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プレミアテック、ロシア)+4’18”
5 サイモン・イェーツ(チーム バイクエクスチェンジ、イギリス)+4’20”
6 ジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード、イタリア)+4’31”
7 ロマン・バルデ(チームDSM、フランス)+5’02”
8 ダニエル・マルティネス(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)+7’17”
9 トビアス・フォス(チーム ユンボ・ヴィスマ、ノルウェー)+8’20”
10 ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ、ポルトガル)+10’01”
87 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+2:26’52”
マリアチクラミーノ(ポイント賞)
ペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ、スロバキア)
マリアアッズーラ(山岳賞)
ジョフリー・ブシャール(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、フランス)
マリアビアンカ(ヤングライダー賞)
エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)
チーム総合成績
トレック・セガフレード
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