ユンボ・ヴィスマをツールの頂点へ導いたエアロロードバイク「S5」|cervelo
福光俊介
- 2022年08月25日
2022年シーズン序盤からワウト・ファンアールト(ベルギー)らユンボ・ヴィスマの一部ライダーがレース使用を開始し、徐々に注目度を高めていったサーヴェロのニューバイク。その真価を発揮したのが、世界最大のレースであるツール・ド・フランスだった。ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)にマイヨジョーヌをもたらし、ワウトはマイヨヴェールを獲得。さらに、チームとしてステージ6勝を挙げたが、そのうち3勝がこのバイクによるものだった。バイクの名は「S5」。すでに日本国内でも全容が明らかになっているが、いま一度、このバイクの魅力に迫ってみよう。
ツール・ド・フランスで男女合わせて5勝を挙げた“チャンピオンバイク”
やはり、われわれの記憶に新しいツールでの活躍から振り返っておくべきだろう。
S5がユンボ・ヴィスマの選手たちの驚異的な走りを後押しした始まりが、第4ステージだった。ワウトによるフィニッシュ前10kmでのアタック、そして逃げ切りは、“半分モーター、半分人間”とチームメートに称された彼のフィジカルによる側面も大きいが、同時にS5によるエアロ性の高さもその走りに力を与えたといえるだろう。
勢いそのままに、ワウトは第8ステージでスプリント勝利。フィニッシュ前のレイアウトは上り基調だったが、パワーを必要とする局面においてもS5は高性能を証明。上りにも十二分に対応することを示した。
第19ステージでは、クリストフ・ラポルト(フランス)がこのモデルで勝利をもぎ取った。残り1.2kmでのアタックで混戦から抜け出すと、そのままトップでフィニッシュへ。このときも最終局面は上り。平坦路から加速して、スピードを落とすことなくフィニッシュラインまで上り切ったのだった。
今年のツールにおいてユンボ・ヴィスマは、山岳とタイムトライアル、パヴェ以外のステージでS5を採用。個人総合優勝を果たしたヴィンゲゴーもこのモデルでパリへと到達し、歓喜の瞬間を迎えている。
また、ツール・ド・フランス・ファムでも、マリアンヌ・フォス(オランダ)がこのモデルでステージ2勝。マイヨジョーヌを5日間着用したが、その間はすべてS5にまたがりレースをリードした。
世界最高峰の戦いで主役を務めていたバイク……それはまぎれもなく、S5だった。
前モデルからの進化を実現させた3つのテーマ
今モデルは前作の良さを踏襲しつつも、さらなる進化を遂げた。それは、3つのフレーズに集約される。
Simplify(シンプル)
ステムの取り換えひとつで、ライダー一人一人に合ったポジションを可能に。必要なスペーサーはすべて付属し、ボルトの長さも1種類のみ。加えて、これまで複雑だったヘッドパーツ周辺の構造を“シンプル”にし、同時に軽量化を実現。
Refine(洗練)
ハンドルバーの形状がほぼフラットになり、走行中の持ち替えがスムーズに。また、2本のボルトだけで傾きを0~5度の範囲で調整可能になっている。
また、シートポストはオフセットが15mm(54/56サイズ)が基本となっているが、前モデルとの互換性があり、アグレッシブなポジションを求めるライダーには25mmの装着もできるようになっている。
Enhance(強化)
UCIのエアロダイナミクスデザインに関する新レギュレーションは、S5の進化に追い風となった。
ヘッドチューブとBBエリアはよりボリュームが増え、シートチューブはアグレッシブなシェイプに。また、このモデルにおけるタイヤの標準スペックは28cだが、実測値で最大約34mmまで対応する。クリアランスもスムーズで、空気の乱流も防いで空力性もアップ。今後、ユンボ・ヴィスマの選手たちが平坦コースだけでなく、パヴェ(石畳)でもどんどん活用していくことが考えられる。
▼サーヴェロ・S5の詳細、インプレは記事はコチラ
販売ラインアップ
完成車の展開は4グレードあり、どれもフレームは同一カーボンを採用。装備したコンポーネントやカラーなどの違いによりラインアップが複数に分かれる。またフレームセットのみの販売もある。ちなみに参考重量として54サイズR9270完成車で7.42kg、フレーム重量1030g、フォーク重量410gとなる。
S5 R9270 DURA-ACE Di2
214万5000円(完成車)
S5 RED ETAP AXS
220万5000円(完成車)
S5 R8170 ULTGRA Di2
160万6000円(完成車)
S5 FORCE ETAP AXS
163万9000円(完成車)
S5 フレームセット
96万8000円(フレームセット)※3色とも
すでにS5の注文受け付けはスタートしている。ご注文の際は下記ショップで相談しよう。
▼サーヴェロ取扱い店はコチラ
問:東商会 http://www.eastwood.co.jp/lineup/cervelo/
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PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。