プレミアムパター「ベティナルディ」が評価される理由(前編)
EVEN 編集部
- 2020年06月08日
ミルドパターの歴史に名を残すであろうデザイナー達がいる。タッド・モア、ケン・ジアニーニ、スコッティ・キャメロン…。彼らを陰で支えた男は、やがて自らの名を刻むパターを世に送り出した。それが「ベティナルディ」なのである。
ミルドパターの歴史を塗り替えた稀代のエンジニア
世界初の1ピースミルドパターを手掛けた男。ゴルフギアに詳しい御仁でもなければ、その名はパッと浮かばないかもしれない。プレミアムパターの世界では常識となった様々な技術を、名だたる巨匠に先駆けて導入したそんな人物こそ、ロバート・J・ベティナルディ、「ベティナルディ・パター」の創業者にしてデザイナーだ。
ゴルファーであれば、一度はその名を耳にしたことがあるかもしれない。2017年の全英オープンで当時、破竹の勢いをみせていたジョーダン・スピースと激しい優勝争いを繰り広げたベテラン、マット・ク―チャーが使用する特異なパター。はたまた、特徴的な蜂の巣型のフェースミーリングだろうか。だが、現在のようにパターデザイナーとしてゴルフ界の表舞台に上がる前から、ベティナルディの名は一部では知られた存在だった。その事実は彼のブランドの歩みが端的に物語っている。
名器「クラシック1」誕生を支えた男
米シカゴ出身で、実家が精密部品のミーリング工場という環境に生まれた彼は、職人的な父の背中を見て育ったこともあり、自然に父と同じ職業を志す。理系のミルウォーキー工科大学に進学。卒業後も数年間、父の下で修業を重ね、28歳にしてコンピューター制御のミルドマシンとともに独立。父から学んだ職人気質と高い技術力で、彼の工場は堅調なスタート切る。そんなある日、ふと訪れたゴルフショップのポスターを目にしたことで、彼に転機が訪れる。
そのポスターには、大きなブロックから削り出されたパターの写真。
「自分の工場ならこれより良いものができるはず」。そう考えた彼は、ふとした縁から、当時、ミーリングの技術者を探していた名匠ケン・ジアニーニからパター製造のノウハウを学び、すぐに頭角を現す。すると、今度はそんな彼の活躍を聞きつけ、あのスコッティ・キャメロンが彼とパートナーシップを結ぶ。こうしてでき上がったパターこそ、’93年にベルンハルト・ランガーがマスターズ優勝時に手にしていた『クラシック1』だったのである。
ベティナルディが現れるまで、削り出しパターはボディとネックを溶接するのが一般的だった。だが、溶接ではどうしても強度や精度が不足する。精度にこだわる彼はネックまで一体成型で削り出すプログラムと製法を新たに開発、世界に先駆けてこれを実現したのだ。そんなことができたのも、彼らが高い技術力を備えた自社工場をもつメーカーだったから。現在でもベティナルディのパターはすべて自社工場で生産されている。これはグローバルブランドの中で唯一彼らだけの特徴でもある。
ハニカムフェースが意味するもの
ケン・ジアニーニ、スコッティ・キャメロンなど、ベティナルディは名匠と謳われるデザイナーのパターを陰で支えるエンジニアだった。だが、そこで得た様々な経験が、彼自身の名を刻むパターを特別なものにした。そうして1998年、ベティナルディは遂に自身の名入りのパターをリリースする。そこにはベティナルディの頭文字「B」の音から取った、英語で蜂を意味する「Bee」のモチーフが随所に採用されていた。現在でもベティナルディのフェースに採用されるこのハニカムフェースは、当時のミーリングマシンでは困難だったフェース面の平滑性を高めるために考案したもの。機能美は、ベティナルディ最大の特徴だ。以来、20年弱の間、ベティナルディのパターは日本を始め、世界中のツアーで輝かしい成績を挙げ、アメリカを代表するパターブランドとなった。その背景には、使用する選手ひとりひとりとの関係性を大事にする同ブランドの姿勢があったのだ。
頑なにメイドインUSAにこだわって生産されているベティナルディのパターは、職人肌で、熱いハートをもつデザイナーの思いの結晶なのだ。(後編へ続く)
(問)ベティナルディジャパン
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- 写真〇六本木泰彦、ベティナルディジャパン 文〇藤井順一(EVEN編集部) 問ベティナルディゴルフ▲03-3250-3339、http://wwww.betinardi.jp
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EVEN 編集部
スタイリッシュでアスリートなゴルファーのためにつくられたマガジン。最旬のゴルフファッション、ギア、レッスン、海外ゴルフトリップまで、独自目線でゴルフの魅力をお届け。
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