仙台に4000人を集め、地方自治体や、ローソン、ソフトバンクなども注目するIngressとは?

世界で1100万人、日本で100万人がプレイするGPSゲーム『Ingress』

駅前や観光地などでスマホを片手に右に歩いたり左に歩いたり。立ち止まってスマホをタップしたり……ちょっと奇妙な動きをしている人を見たことはないだろうか? その人は『エージェント』……つまり、GPSゲームIngress(イングレス)をゲームするプレイヤーかもしれない。

Ingressは世界を舞台にした陣取りゲーム。青のResistance(レジスタンス)と緑のEnlightened(エンライテンド)に分れて、実際に遺跡、彫像、記念碑などの『ポータル』を奪い合い、それで構築されるCF(コントロールフィールドの広さを競い合う。

普通のスマホのゲームと違うのは、プレイするために実際にその場所に行かなければならないこと。そのため、プレイヤーは毎日何kmも、人によっては何10kmも歩き、遠方に旅し、時には海外にさえ行く。

作ったのはGoogleの社内ベンチャーNiantic Labs。あのGoogle Earthを開発したジョン・ハンケ氏が率いるチームだ。すでに全世界で1100万ダウンロード。日本でも100万人以上のプレイヤーがいるという。

実際に人を呼べて地域振興に役立つとあって、横須賀市など複数の地方自治体の観光課がイベントなどを行なっており、ローソン、AXAダイレクト、東京三菱UFJ銀行、ソフトバンク、伊藤園など名だたる企業がタイアップを行なっている。

その、Ingressの世界的なイベント『アノマリー』が6月20日に仙台で行われ、併催イベント『ミッションデー』が21日に東北各地で開催された。そして、仙台にはなんと4000人が集り、翌日には仙台、福島、石巻、女川、陸前高田、盛岡、八戸、大仙の各地に2000人を送り込んだ。いったい何が起こっているのか?

 

6月20日に仙台で開催された世界的イベントPersepolis

20日に、仙台で行われたゲームは、世界的に展開しているアノマリーのシナリオのひとつで、日常のゲームとはまた違ったカタチで仙台市内にある『ポータル』を取り合う。

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写真はゲームのワンシーンで、周りにいるResistanceチームとEnlightenedのチームのプレイヤーは、それぞれ上の銅像を取り合っているところ。

同じシーンが、ゲーム画面ではこのように見える。
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光のツブが吹き上がっているところが『ポータル』だ。中央部が自分のいるところなので、おそらく青くなっているところがResistanceが制圧している上の銅像だ。Enlightenedはこの銅像を攻撃しており、Resistanceはなんとかそれを防ごうとしているはずだ。

戦いが展開するのは街中だけでなく、戦略的な陣取りも行われる。上記画面の地面が緑色をしているのは、Enlightenedが仙台全体を包むような戦略的なCFの構築に成功しているからで、そのために遠く、蔵王や、栗駒山、田代島や金華山などに実際に行ってポータルを奪取するために戦っている人がいる。

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3月の京都や12月の東京で開催された時には、なんと襟裳岬やグアム島、台湾や中国まで巻き込んだCFが勝敗に影響したというからなんとも驚かされる。

今回も、遠く台湾や香港から来たチームが、参加していた。
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この日は広域での作戦が功を奏したこともあって、緑のEnlightenedが勝利を収めた(詳しい作戦の展開はこちら)。

翌日は東北各地の8カ所の街に2000人以上が訪れた

このゲーム、作り上げたジョン・ハンケ氏が『コンピュータの前に座っているだけでなく、世の中に出ていって、実際に街に出て、風景を見てほしい』と始めたものだけあって、人を実際の世界に触れさせる力に秀でている。

実は、日本で最初にこのゲームのイベントが行なわれたのは昨年2014年の5月だった。被災地への徐々に関心が薄まっていることをなんとかしたいとの思いから、石巻で開催された。その時はまだ日本でもまだほとんどプレイしている人がいなかったが、それでもネットに詳しくアンテナ感度が高い人が80人も集ったという。

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(昨年100人が集ったのをきっかけに、今年は4000人になった……と会場で公開された昨年の写真)

その力を、ことしも東北のために使おうと、イベントは仙台を開催場所にしたのだと思う。20日に4000人集った人たちに、できるだけ東北の各地の様子を見て欲しいと翌日21日は東北8カ所で小さめのイベント『ミッションデー』が開催された。

仙台、福島、石巻、女川、陸前高田、盛岡、八戸、大仙の8カ所で開催されたのだが、私は石巻に取材に行ったのでその様子をお伝えしよう。ちなみに、全8カ所合計で予想をはるかに越える合計2000人もの人が集ったという。

石巻では津波で失われた施設をスキャナーで見ることができた

石巻の集合場所には、ResistanceとEnlightenedの旗が翻っていた。この旗は昨年のイベントの時にNiantic Labsが石巻に持ち込んだもので、ジョン・ハンケ氏とゲームの登場人物であるKlueのサインと石巻へのメッセージが書き込まれてる。
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この日開催されたミッションデーとは、指定されたポータルを順にめぐるとゲーム上のメダルがもらえるというもの。

前日のアノマリーのような激しい争奪戦とは異なり、スタンプラリーのようなのんびりした雰囲気が漂い、参加者も途中に観光したり、地元の名産品に舌鼓を打ったり、土産物を買ったりという余裕がある。石巻には500〜600人、女川には700人の人が集ったという。
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Googleが震災の記録、記憶を残すためにさまざまな活動をしているのはご存じの通りだが、去年石巻で開催された時に作られたポータルもその一環。

ゲームの画面を見ると Memory of 311と記されたポータルがあるのだが、そのポータルは震災前にあった建物を示している。
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港近くのこの場所には、『清正酒店』という酒屋さんがあったことが画面からは見て取れるのだが……。

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現実には、空き地が広がっている。いつもは、ポータル画面にあるものが実際にあるのが普通なのだが、この『ない』というインパクトは我々プレイヤーにとっては大きい。そして、ゲーム画面が時間を越えて震災前の街の存在を我々に伝えてくれる。こうしたポータルは市街に数多く設けられていて、ゲームをプレイしているだけで、震災前の石巻の様子を学べるようになっている。

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正直、被災地に遊びで来ることに躊躇や後ろめたさもあったが、『来て、会って、私たちの存在を知ってもらうこともひとつの支援』という地元の人たちの声には共感するものがあった。

きっかけは、Ingressというゲームだったが、東北のことが以前よりも『自分ごと』になったは確かだ。また、家族を連れて来ようと思う。

Ingressは単なるゲームだが、我々をいろんな場所に実際に連れていって、いろんな人に合わせて、国境を越えてリンクを繋がせてくれる。

世界を繋ぐグローバルなプレイから、近所のお地蔵さんを巡るスタンプラリーのような使い方まで、使い方、プレイの仕方は色々。でも、これからもさまざまな地方自治体、企業、メディアがコミット可能なゲームとして発展していきそうだ。これからのIngressのさらなら発展に注目したい。

Niantic Labsのイングレスのサイトはこちら

(村上タクタ)

 

 

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