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首都の巨大インフラ、東京メトロを支えるiPad(1/2)

真夜中1時から4時に行われるメンテナンス

仕事で遅くなったり、お酒を呑んでいて終電になってしまったことはないだろうか?

乗り遅れそうになりながら、「一晩中地下鉄が走っていれば、終電の心配をしなくていいのに」などと思ったことはないだろうか?

しかし、終電が走り去ってから、始発が動き出すまでのわずか3~4時間は、地下鉄のメンテナンスのために非常に大切な時間なのだ。

このわずかな時間の間に、地下鉄のトンネルの点検・保守が行われる。1日の利用者数700万人以上、9路線、総延長195.1kmという巨大インフラでありながら、時計のように正確に、絶対に休むことなく、大都会東京の血管、大動脈として、人を送り続ける東京メトロを支え続けるメンテナンスのための貴重な時間だ。

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その東京メトロの線路のトンネルの検査に、2015年からiPadが利用されていると聞いて取材してきた。

取材のために、深閑とした深夜の地下鉄の線路の上に生まれて始めて立ったが、毎日こうやって構内を検査している人がいらっしゃると思うと、頭が下がる思いだ。大都会のド真ん中のはずなのに、闇はどこまでも深く、自分たちの立てる音だけが構内に響き、不思議な感じだ。

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東京地下鉄の開業は1927年(昭和2年・当時は東京地下鉄道株式会社が運営)。今の銀座線の一部である上野―浅草間が開通することから始まった。穴を掘って鉄筋を通したコンクリートで壁面と天井を固める構造になっているが、このトンネルのコンクリートが傷んでないかを、定期的に確認することになっている。その作業にiPadが活用されているのだ。

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真夜中に駅から線路内へ

終電に乗り損なった人や、泥酔した人たちを送り出し、駅がひっそりとしてきたら、工務部を中心とした保守スタッフの方々が集合し、検査が始まる。

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今回同行させていただいたのは、通常全般検査という作業で全路線が2年に一度は受ける検査だ。主に壁面、天井のコンクリートの状態を確認する。

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まずは、指定の電話番号に電話をし、線路内に立ち入る確認を取る。ここでOKが出たら、その線路に車両が通ることはない。ちなみに、この電話も防水防塵ケースに入れられたiPhoneが使われていた。

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次に『検電』作業。通常、架線には1,500Vもの高圧電流が流れている。架線だけでなく線路にアースされないと、その大電流が流れることはないが、しっかりとした安全性を確保するために動力用の電源が流れていないことを確認するのだ。これが終わればようやく、線路上に降りての作業が始まる。

独自開発のMRSIというアプリを使用

工務部にはiPadは12台あるが、1チーム3人でぞれぞれがiPadを持って作業に入る。昔は点検のレポートを紙で記述していたが、現在ではすべてデータをクラウドサーバ上に置き、結果の記入はすべてiPadで行っている。

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使用するのは独自に開発したMRSI(Metro Railway Structure of Inspection)というアプリで、当日の検査データをクラウドサーバからiPadにダウンロードして現場に向かう。画面には本日の点検カ所が何線の何kmから何kmなのかが表示されている。

全9路線のうち1路線の壁面には10m間隔でiBeaconが設置されており、これによりiPadは自動的に自らの位置を検知する。

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作業は、当日の検査区間にある壁面と天井の確認。コンクリートにヒビはないか? 浮いていないか? 剥落しそうな予兆はないかを確認し、その状況を記録し、その記録に応じて補修などが行われる。

以前は、作業はすべて紙の報告書に基づいて行われていた。現場で確認して写真を撮影、その後に写真をプリントし、事務所で報告書を書く……という手間がかかっていたので、実作業時間と同じぐらい報告書を書くのに時間が必要だったという。

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以前の報告書の量は膨大で、全線でなんと2万枚にも上ったので、通常の作業にも時間がかかったし、また何か問題が発生した時に特定の場所の情報を引き出すのにも手間と時間がかかった。

今では、特定の場所の状態が、修復履歴も含めて瞬時に分かるので、トラブル発生時の対応も速い。また、作業者、管理者にとっても、情報の閲覧性が高いので、iPadの使用は安全性に大きく寄与しているとのことだ。

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台車に乗せた明るい照明を線路上に下ろして点検が始まる。ちなみに、点検用の特別の入り口があるわけではなく、駅のホームから線路上に機材を下ろして作業に入る。

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ハンマーで叩いて確認

確認は主に目視と、ハンマーで壁面を叩くことで行われる。コンクリートの中には鉄筋が通っているのだが、この鉄筋が土中の水分の影響を受けて錆びる。錆びると膨れ上がって、コンクリートが剥がれてくる。ちゃんとくっついていれば、ハンマーで叩いても『コンコン』と、硬質な音がするが、錆びてコンクリートが浮き上がっていると『ポクポク』と柔らかい音になる。これを見つけていくのだ。

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変化箇所を発見したら、写真を撮って状態を書き込む。変化箇所を写真の中に書き込むこともできる。位置はiBeaconから取得され自動で挿入され、位置情報路記録の精度向上に寄与している。

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変化状態も多くの選択肢が用意されており、基本的にはタッチするだけで入力できるようになっている。

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暗黒の真夜中の地下鉄網の安全性を維持しているのは、現場で働く人のデバイスとしてのiPadだった。直感的な使いやすさを持つiPadだからこそ、重要な作業に集中できる。

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(取材協力/東京メトロ)

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(村上タクタ)

後編「首都の巨大インフラ、東京メトロを支えるiPad(2/2)」はこちらから→https://www.ei-publishing.co.jp/articles/detail/flick-424277/

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