デジモノ誌編集長の東京モーターショー2017見聞録
FUNQ
- 2017年10月26日
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モーターショー出品車に最新ITは取り込まれているか?
一般公開日、2017年10月28日(土)~11月5日(日)に先駆けて東京モーターショーにプレスデーに取材に行ってきました。デジモノ雑誌『フリック!』編集長の村上タクタです。
もっとも、滞在できたのはスケジュールの都合上4~5時間。限られた時間の、私見のレポートであることはご了承下さい。
見たかったのは、私が普段取材しているIT分野で一般的な技術や考え方が、どのぐらい影響しているか? スマホやコンピュータ、インターネットのテクノロジーはどんな風に活かされているいるかです。
なにしろ、今やクルマは電子部品の塊。
EVやハイブリッド、自動運転などが、世界的なトレンドとなってるからには、デジモノ誌編集長としてはモーターショーも見ておかないわけにはいかないと思ったのです(ええ、半ば言い訳です)。
(トヨタのコンセプト‐i愛。ユニークな構造を持ち、知能化されたクルマとして表現されたコンセプトカー。さすがトヨタは広大なスペースに、よく練られたデザインのコンセプトカーを展示していました)
が、意外と、すでに我々がすでにウェブメディアなどから見聞きする意外の新しい情報はありませんでした。もっとも、各ブースの説明員の人に詳しく話を聞いたら、何か出てくるのかもしれません。ただ、誰にでも分かるようには表現されているわけではありませんでした。
モビリティとしてのクルマの未来は、ハイブリッド、EV、フューエルセル、水素などの、脱内燃機関、より低CO2の方向に進むでしょうし、構造としては安全性が高まり、居住性は良くなり、知能化は進み、自動運転の方向性が模索されるのでしょう。
もっと取り入れられるテクノロジーがあるハズ
コンセプトモデルで、おおまかな方向性が伝えられ、新製品にはその部分的な技術が盛り込まれていってるのだと思います。
でも、私としては少々不満。
まずマクロで言えば、IT業界の人工知能(というかディープラーニング)や、AR/VRのような大きなトレンドを盛り込んだ方向が示されているようには思えなかったこと。クルマの運動を多軸のモーションセンサーで取ったり、全方位をGoProのようなカメラで撮ったり、ホイール、ブレーキ、エンジン、ミッションなどのセンサーからの情報を全部集めて、解析し、ドライバーにAI解析した情報を提供するとか、全面の窓にAR情報を表示するとか、いっそ運転席の周りの窓以外のところを全周モニターにしてピラーやボディで死角になっているような部分の情報を表示するとか、コンセプトとしても検討されていないのでしょうか? 前後のクルマ、すれ違う対向車との情報交換を行うようなコンセプトは検討されてないのでしょうか? IT側で起ってる大きなトレンドは取り込まれていないのでしょうか? ……なんてことを妄想してしまいます。
(アウディのコンセプトカーのバックミラーはカメラで車内に表示する方式。規制緩和さえされれば、こういう構造が一般的になると思うし、今やセンサーもカメラもモニターも安いのだから、前後の死角にこういうものはいっぱい付けて欲しい。ミニバンのバックでお母さんに轢かれる子供とか減ると思います)
個別の小さな技術側でいえば、空気圧や水温、油温などがセンシングされてがスマホで見られるとか、位置情報がスマホと連携するとか、キーの代わりに指紋認証だとか、モーションセンサーをもっと利用するとか(たとえば、スマホはジャイロの動きだけで歩いてるか、走ってるか、自転車に乗ってるのか感知するわけじゃないですか)、ITの方で当たり前になっていることを活用したらいいのに、とか思ったり。
もちろん、コンセプトモデルの解説にはそういうことが書かれているのですけど、展示に表現されていなければ、それは伝わらないですよねぇ。
(モビリティとしてはユニークなフォルクスワーゲンのタイプ2をモチーフにしたI.D. BUZZ。内装は広々としていて、自動運転時にはハンドルを収納し、ドライバーズシートを180度回転させて、後部座席の乗員と向き合って移動を楽しむこともできるとのこと
トラックこそ、大きな進化の余地がありそう
CO2や、NOxの大きいトラックは、現代の輸送には欠かせませんが、同時に渋滞、大気汚染、交通の安全性の大きな問題でもあります。
今後、可能であれば自動運転化、EV化は進んでいくものと思われますが、大質量だけに、自動運転もEV化もまだまだ課題が多いのでしょうねぇ。しかし、いずれのトラックメーカーもそういった趣旨の展示をしていたので、いずれは物流は自動運転のEVに取って代わられるのでしょう。
展示にVRが活用されていた
さて、ここからは蛇足というか、さらなる私見。
展示にはVRがいくつか使われていました。ただし、体験は1人~数人ずつということになるので、ほとんどメディアデーしか機能しないと思われます。すっごい行列になりそう。
展示自体は割と面白かったので、ゆくゆくは、各ディーラーでこのVR展示を体験したり、自宅で体験できたりするといいのですが。いっそ、そうなれば東京モーターショー自体も自宅である程度体験できたり(笑)
こちらは、ポルシェの展示ですが、VRゴーグルを付けた私の目の前には、新型パナメーラがあり、私はドアノブに手を伸ばそうとしているところ。
映像は運転席に座ってるところから始まり(その時点ではイスに座っている)、運転席からの展望を見たり、後部座席を振り返ってみたりできる。天井をどのぐらい低くに感じるかもわかる。そこからドアを開いて、外に出て、ホイールやボディカラーを変更したり、前後の展望を見渡したりもできます。
さらに、ボディの外側を流れる空気の流れを見たり、ボディをフレームだけにして、その中に入っていったりもできる。これ、各ディラーにあれば、それなりに楽しめる展示になるでしょうね(スタッフが付きっきりにならねばならないだろうが)。
VWにも似たような展示があり、こちらは外観を楽しむ展示と、座って内部の視界を楽しむ展示が別でした。
(↑自分の手もバーチャル空間にアウトラインだけ表示される。ちゃんと指、1本1本まで別々に動かせた)
運転する方の展示は、助手席に女性のアバターが乗ってきて、彼女がいろいろと操作を指示してくれるという趣向。オーディオに触れて音楽をかけるとか、自動運転中にブレーキがかかるとか、いろいろと凝ってて面白い。
脇道に逸れて、オートバイの話
ユニークな展示といえば、ホンダのライディングアシスト‐eの展示は面白かったですよ。ジャイロ内蔵で、自分でバランスして支えなしに直立するバイク。実際に目にすると、これは驚きでした。ASIMOの技術が使われているらしい。
ちょっと、染之助染太郎っぽいジェスチャーだが、乗ってらっしゃるのは開発されたエンジニアの方らしい。以前、CESで展示されたものとはまた少しバイクの意匠が変わっていた。さらに開発が進んでいるのでしょう。
さて、バイクついでにさらに話しは逸れますが、ちょっとだけバイクの展示に触れておきましょう(ITとはほぼ関係ないが、私、元バイク雑誌編集者なもので)。
ホンダの最大排気量の豪華ツーリングバイク、ゴールドウィングはフルモデルチェンジを果たしていた。1800ccの排気量に、前輪ダブルウィッシュボーンサスなどを搭載しつつも、前モデルから大幅な軽量化を果たしているらしい。
先日、50周年を迎えつつも、排ガス規制の強化などで、モンキーが絶版になったが、排気量を50ccから125ccへと拡大して新しい『モンキー125』が展示されていた。こちらは、参考出展車……ということで、来場者の反応を見つつ生産を検討するとのこと。
これはこれとして、50周年を超えたモンキーは、遊び心満載の電動ポケットバイクとして復活した方が新時代を築けそうだと思うのだが、どうでしょうか?
ホンダからもうひとつ。ネイキッドのコンセプトモデル。現状のモデルの延長線上で、市販車になるとこのままというワケにはいかなくて、ナンバーや灯火類でかっこ悪くなるのかもしれないが、これはこれでスタイリッシュだなぁとは思います。
ヤマハは前2輪の仕組みを発展させていく
ヤマハは前2輪のLMW(リーニング・マルチ・ホイール)の技術を使った参考展示車が興味深い。
こちらは3気筒(ということはMT-09の900cc?)を積んだ、前2輪のNIKEN(ナイケン)。Tricityの125cc、155ccでも、猛烈にブレーキングできて、コーナリングでも安心感の高いハンドリングなのだから、900ccになるとどんな感じになるのか興味深い。
こちらはさらに前後2輪の計4輪にしたMWC-4。屋根もあるので、多少の悪天候でも乗れそうだし、どういうモビリティを産むのか気になる。
さらに、MOTOROiDは、先に進んだコンセプトモデル。燃料タンク、エンジン、ミッション……といった内燃機関のファクターから解放されたバイクは、どんなカタチになるんだろうってことなのだと思うが……。ホイールインモーターだったら、トラクションってどうなるんだろう? 腰のホールドの仕組みがどういう意味を持ってるのか知りたい。
テクノロジーの話題ではないが、私の周囲では大人気のZ900RS
さて、最後にカワサキのZ900RS。
いや、別にハイテクでもないでもないですが、このバイクを、このスタイルで、Z900RSという名前で出してくるカワサキが上手過ぎる。こんなん、欲しいじゃないか。
いや、もちろんバイクにももっとテクノロジーが活かされるといいなとは思いますが。
途中から、話題は逸れまくってしまいましたが、ともあれ東京モーターショー、モビリティの未来は誰にも関係があるわけだし、クルマやバイクに興味のある人は、ぜひ見に行ってみて下さい。楽しいですよ。
(出典:『flick! digital (フリック!デジタル) 2017年11月号 Vol.73』)
(村上タクタ)
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