子供のプログラミング教育、上手く行ってますか?【大阪学プロ研レポート】
FUNQ
- 2017年12月14日
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プログラミング教育が必要な3つの理由と、現状
2020年から、小学校でのプログラミング教育が必修化される。また、その前から、リテラシーの高い親の間では、プログラミング教育を独自に行うケースが増えていた。
経済産業省が発表したIT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果によると、今後、IT人材はどんどん不足していくと言われている。
筆者も中学生と高校生の子を持つ親だが、周りの保護者の方でもプログラミングを子供に教えたいという人が多い。
筆者としては、IT人材がどのぐらい必要となるか? また今後、AIなどの発展にともなってプログラミングの自動化が進むことも予想されるので、どのぐらい人間のプログラマーが必要とされるかは予測をつけるのは難しいと思うが、『プログラミング教育』はいずれにしても重要であると考える。理由は3つ。
ひとつは、『プログラミング的思考』の重要性。プログラミング的思考とはすなわち論理的思考。ある作業をするのに、何が必要なのか、どうステップを辿り、どの時点でどんな情報に基づいて、どんな判断を下すべきか? プログラミングを学習する過程で、すなわち論理的に考える習慣が身に付く。
ふたつ目は、『すべての機械がプログラミングで動いてる』ということを知ることの大切さ。お手元のiPhoneも、テレビのリモコンも、エアコンも、冷蔵庫も、自動車も、今やすべてはプログラミングに基づいて動いている。すなわち、入力に対して、論理的に結果が出るのが機械であって、『コンピュータは魔術みたいなもの』と思ってる人より、すべてのことに正しい対処を行うことができる。機械は叩いたら壊れることはあっても直ることはないのだ。
子供たちが将来、仕事をするにあたって、どんな仕事をするにしても何らかの機械と付き合うことになる。その機械がプログラミングで動いていることを理解しているのと、魔術みたいなものだと思い込んでいるのでは、前者の方が優れた結果を出せるようになるであろうことは言うまでもない。
そして、三つ目が、先に出たIT人材としての必要性だ。
しかし、文部科学省が旗振れど、現場で生徒にプログラミングを教えるのは、プログラマーではないどころか、プログラミング教育を受けてさえいない先生方だ。
この事態を憂いて各地で先生方が独自に勉強会などをされている。大阪の『学プロ研(学校プログラミング研究会)』もそんな活動のひとつ。小中学校の教職員とプログラミング教育に携わる民間企業や個人が一緒にプログラミング教育を考えようというイベントだ。その第4回の会合に取材にうかがった。
大阪の有志の先生方が集まった勉強会
この会をモデレートされているのは、コプリというプログラミングスクールを主宰されている福嶋伸之さん。
その福嶋さんの司会に基づいて、滋賀大学の岳野公人教授、大阪府東百舌鳥高等学校の勝田浩次教諭、大阪教育大学付属平野小学校の滝沢知之教諭がお話をされた。今回のテーマは『Swiftを用いた授業の実践紹介』だ。
iPhoneで実際に使えるし、ドローンを動かすところまでステップアップ可能
まず最初にお話になったのは滋賀大学の岳野公人教授。
教授は、環境教育、技術教育を教えておられ、まさに将来の小学生、中学生の先生になっていく人たちが生徒。そこでは、大学生にSwift Playgroundsを使ってプログラミングを習得してもらっているという。
SwiftはアップルがiPhoneやMacのプログラミングに使うためにアップルが開発した言語で、2014年に発表されたまだ新しい言語。モダンで高速、しかもセキュリティに優れており、安全。MacのXcode上で記述することができる。
そして、このSwiftを学ぶためにiPad上で動作するように作られたのがSwift Playgrounds。ゲームのような過程を通して、Swiftを身に着けることができるようになっている。
Swift PlaygroundsはiPadさえあれば動作するので、自宅学習も簡単だし、ひとりでも学習できる。また、そこから本格的なSwiftでのプログラミングへ移行することで、実際にiPhoneなどで動作する役に立つアプリを作れるということも意味が大きい。
また、ドローンやSpheroという球状のトイと組み合わせることで、実際の機械をプログラミングで動かせるということも体験できる。プログラミングは画面上だけの出来事ではないのである。
次に続く最初の一歩
続いてお話をされたのは東百舌鳥高等学校の勝田浩次教諭。
「子供たちの、ものを考えてる姿が好き」という勝田教諭は、「プログラミングは新しいものを作り出すツール」だと言う。
当初は、プログラミング言語として、ブロック型のScratchなどを使ってみたこともあるというが、Scratchから次のステップに進む段になって、ブロック型から急に文字列がならぶプログラミング言語にステップアップしなければならず、連続性がないことに困ったという。
Swiftなら、Swift Playgroundsから、素直に障壁なくステップアップすることができる。そのように考慮して作られているのだから。
また、プログラミングを教えたことのない人にもiBooksに『コードを学ぼう(Learn to Code)』という無償の教師向けのテキストがあり、それに沿って授業をするだけで、プログラミングを習得することができる。
iPadのSwift Playgrondsから、MacのSwiftへとステップアップしていく過程は、中高生にはちょうどいいステップだ。
小学生の子供からスタート可能なSwift Playgrounds
続いて、登壇されたのは大阪教育大学附属平野小学校の滝沢知之教諭。熱血漢っぽい滝沢教諭は小学校で熱心にプログラミングを教えてらっしゃる。
同校は全教室にWi-Fiと電子黒板を完備しており、iPad 200台、iPod 50台を使ってプログラミング教育に取り組んでいるという。
滝沢教諭もやはりiBooksの『コードを学ぼう(Learn to Code)』の有用性を訴えてらっしゃった。Swift Playgroundsに沿って教えるのに、どんな準備をして、子供たちにどんな気付きを与えるように配慮すればいいかなどが詳細にガイドされており、プログラミングに詳しくない先生でも教えられるようになっているという。
滝沢教諭は、課題を解決するたびに、こどもたちが大変喜ぶのが楽しいという。
プログラミング教室でお揃いのTシャツを着て、アップルストアの心斎橋店に行き、Keynoteの使い方の勉強をしたりもしたという。
存在する数多くの課題とSwiftの意義
現場の先生達にお話を聞くと、実際にはプログラミング教育にはまだまだ課題があることが分かる。
たとえば、どうやって生徒達が使えるiPadを入手するかということもあるし(先生の中には最初は自腹で買って行ったという人も少なくなかった)、学校の各教室に十分なWi-Fi環境をどうやって確保するかという問題もある。
プログラミング教育において、SwiftとSwift Playgroundsの導入は非常に良い回答だが、Windows機が多い日本の環境において、どうやって学校にiPadやMacを導入するかという問題もある。『学プロ研』のような、現場の先生方の努力がますます必要な状態だが、本来なら、文科省の方で、もうちょっと筋道を立ててプログラミング教育に関する方法論を打ち立てて欲しいとも思う。
(出典:『flick! digital (フリック!デジタル) 2018年1月号 Vol.75』)
(村上タクタ)
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