iPhone10周年! 歴代モデル全部バラして分かったこと
FUNQ
- 2018年03月15日
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数百万台の生産台数だった初代と、数億台の現行モデル
子供の頃、家にあるオモチャや時計をバラしてみなかったろうか?
大好きなものは、すべてを知りたい。分解したくなるのは当然だ。そこで、我々は毎年iPhoneを分解していた。
iPhoneが現れる前は、LINEも、屋外で見られるGoogle Mapsも、Facebookも、Twitterも、インスタも、スマートニュースも、電子書籍もなかった(正確にはFacebookや、Twitterはあったけれど、我々がモバイルで使うにはiPhoneの登場が必要だった)。待ち合わせもなかなか大変だった。
というわけで、2007年のiPhone登場はとても衝撃的だったけれど、そこから早くも10年が経ってしまった。そこで我々は10年分のバラバラにしたiPhoneの写真を見直してみた。
まずは、スティーブ・ジョブズが2007年の1月9日にモスコーンウェストで発表した初代のiPhoneと、2017年の9月13日にApple ParkのSteve Jobs Theaterで発表したiPhone Xを並べてみよう。
言うまでもないが、左が初代iPhone、右がiPhone Xだ。
初代の白い部分がバッテリー。各部の接続にはまだ白いケーブルが使われていたり、絶縁のために茶色いカプトンテープが使われていたりして、実に古めかしい。ちなみにボディはアルミのプレスの板でできていた。
右のiPhone Xは驚くほど高度なテクノロジーで作られている。2分割して、L字型に配されたバッテリーは、実にユニークで、これはiPhone史上初めてのことだ。主だった集積回路はすべて、A11 BionicというSoCに集約されて、実に高度な処理をしているのに、とても小さい。ボディはステンレスの枠組みに、ステンレースのプレートがインナーフレームとして使われていて、裏側にはガラス板が貼り込まれている。非接触充電を採用するために、全面金属のボディは使えなくなったのだ。
初代のiPhoneのバッテリーと基板部分を外すとこうなっている。実に手作り感あふれる処理だ。このiPhoneを発表した時、スティーブ・ジョブズは、世界の携帯電話のシェアの1%を獲ると言って、失笑を買っていた。パソコンメーカー(もしくはiPodメーカー)だった、アップルにそんなことができるワケがないと言われていたのだ。結果はご存じの通り。
懐かしのiPhone 3Gはポリカーボネートボディ
iPhone 3Gや、3GSが懐かしいという人も、けっこういらっしゃるのではないだろうか? 日本で販売された最初のiPhone。ポリカーボネートでピッタリと手に収まる丸みを帯びたボディは、今触るととてもコンパクトに思えるが、当時は大きいとか、重いとか言われたものだ。新しいモノ好きの人たちは表参道のソフトバンクショップに並んで買ったのではないだろうか? この筆者のiPhone 3Gも、表参道に並んで買ったモノだが、筆者はたしか250番目ぐらいだったので、日本で250番目ぐらいに販売されたiPhoneということになる。
面白いことに、ポリカーボネートボディなのに、切削加工を施した跡が見える。原形を削ったにしては、ミル跡がはっきりしすぎているから、1台1台切削して、樹脂成形品をより削り込んで加工していたのかもしれない。左の方にあるのは、バイブレーターモーター。偏心カムが取り付けられていて、回ると震えるよくある仕組みだ。
左バッテリー右基板の基本が出来たiPhone 4シリーズ
次は4s。
スティーブ・ジョブズが存命中にローンチされた最後のiPhoneだ(もちろん、次の5も開発は進んでいたから意見は入っていただろうけれど)。表裏ともガラスで、ステンレスのアウター・フレームがある。このフレームがアンテナを兼ねているという凝った仕組みだったのだが、逆にそれが仇となり、持ち方によっては受信状態が悪くなるというクレーム問題に発展したりした。
金属フレーム、左側にバッテリー、右側にロジックボードという、その後のiPhoneの基本構造が出来た端末でもある。
この頃には、『iPhoneの次期モデル』の情報がネット上で非常に熱く取り沙汰されていたが、とあるスタッフが完成間近のテスト用端末をバーに置き忘れ、それがGIZMODOの記者の手に渡りニュースになるという事件などが起こった。
iPhoneのマイルストーン、ユニボディ化された5/5s
そしてiPhone 5、5s(下の写真は5s)の世代は、アルミの塊からボディ全体を削り出す『アルミユニボディ』で作られた初めてのiPhoneで、ある意味、iPhoneの完成形であった。
アルミの塊からおそらく数時間もかけて削り出されるであろうボディは、骨格であると同時に、さまざまな部品を取り付けるマウントであり、かつ外装部品でもあった。従来別々の部品が担っていたそれらの役割を、ひとつの削り出しボディが担うことで、iPhoneは飛躍的に軽く、高剛性、かつ美しくなった。
通常だったら、試作品や単品制作を作るような、CNCにより削り出しボディを量販品に使えたのは、ひとえにアップルが工場に大量のCNCマシンを買わせたからだという。大量のCNCマシンを並行可動させることで、従来の不可能を、可能にしてしまったのだ。
iPhone 5、5s、SEと代替わりしながらも、このボディが使われていることからも、いかに傑作だったかが分かるだろう。
さらに完成度が増す、iPhone 6と、その後
その後も、iPhone 6/6 Plus、6s/6s Plus、7/7 Plus、8/8 Plusと、このユニボディ構造は連綿と受け継がれて行く。
写真はiPhone 6 Plusの内部だが、アルミ削り出しのミルの跡や、ネジを受けるためのキャッチの部分などがよく見えるだろう。また、アップルマークの部分はご覧のようにリキッドメタルをはめ込むことによって作られている。
ちなみに、6/6 Plusで2モデルになり、6s/6s Plusで 3D Touch採用、7/7 Plusで防水になりヘッドフォンコネクターがなくなり、8/8 Plusで非接触充電が可能になった。
新たな10年の始まり。iPhone X
そしてiPhone X。
分解してみれば分かるのだが、明らかに旧世代とは違う設計になっている。バッテリーは2分割で、L字型配置で余裕ができたスペースに、3層構造の基板を収納している。そのすき間に、縦型2連のアウトカメラと、顔認証にも使うインカメラ、下部には余裕をもってTapticエンジン、スピーカーエンクロージャーが入るという余裕の構成だ。
そういえば、iPhone Xは従来の8までのラインナップと異なりステンレスフレーム。アルミより硬いステンスの切削加工には手間と時間がかかりそうだが、そのあたり、Apple Watchのステンレスモデルを作った経験が役に立っていそうだ。
販売点数がより少ないApple Watchで経験を積んでから、iPhoneに持ってくるなど、このあたりの経験値の積み重ねが、全体の戦略に編み込まれているところが、iPhoneのすご味でもある。
配線に関して、ネジの止め方に関して、防水に関して、振動に関して……などなど、iPhoneの分解写真には、見れば見るほどいろいろな情報が埋め込まれているのがわかる。分解写真をじっくりとご堪能いただきたい。
(出典:『iPhone10周年完全図鑑』)
(村上タクタ)
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