アップルのiPadを活用したプログラミング教育の実際。来週、何が発表されるのか?
FUNQ
- 2018年03月22日
生きていくために、プログラミングスキルが必要な時代
2020年から、小学校でプログラミング教育が必修化される。
で、にわかに最近プログラミング教育が話題になっているわけだ。
みなさんは、小学校でのプログラミング教育といって、どんなイメージをお持ちだろう? 難しそう? お金がかかりそう? 必要なさそう?
プログラミング教育が、多くの小学生、児童の保護者の方に、強い関心を持たれていることは確かだ。
ご存じのように、今、みなさんがこの文面を読んでらっしゃるデバイスを含めて、あらゆる電子機器がプログラムによって動いている。簡単なところでいえば、電卓やテレビのリモコン。複雑なところでいうと、スマホ、パソコン、自動車、もちろんインターネットに接続しているすべてのデバイス。あらゆるものがプログラムで動いている。
だからといって、別にプログラマーになる必要はない。現代社会、特に日本でプログラムスキルのある人材が不足していることは確かだ。だが、もしかしたら、今の小学生が大人になる頃には、プログラミングは自動化されAIがやってくれるかもしれない。
身の周りのすべてのデバイスを動かしているリクツを知っておけば、どんな仕事に着くにしろ、役に立つことは確か。火が燃える理屈を知り内燃機関の構造を知っておくことが現代社会で生きてゆくために役に立つのと同じように、社会人の一般的知識としてプログラミングを学んでおく方がいいはずだ。
また、プログラミング的思考を身に着けることで、一連の活動を実現するために、どのような手順を組み合わせればいいかというようなことを論理的に考えることができるようになる。これもいろんなところで役に立つだろう。
簡単に始められて、実際のiPhoneアプリ開発に繋がるSwift Playgrounds
では、いつ、どこで、どんなデバイスを使って、プログラミングを学べばいいのだろう?
私の子供たちの学校に行くと、パソコンルームに古いWindowsパソコンがズラリと並んでいる。OSを見ると、なんとWindows 7だったりもする。もちろん、これでプログラミングを教えることもできるだろうけど、なかなか難しい。子供たちは、電源を入れたり切ったり、プログラミングのためのアプリを立ち上げたりするのに、いろいろ学ばなければならないだろう。先生方も、何を教えればいいのか悩まねばならないし、たぶんひと教室分の生徒がパソコンの電源を入れて、アプリを立ち上げるところに到達するまででひと苦労だ。
コードをブロックに見立てたビジュアル・プログラミング言語を使う例も多いし、メリットもあると思うが、入門は簡単でも、そこから実際にデバイス上で動くプログラミング言語に移行しようとした時に、何を使えばいいのかという問題もあるし、そこに大きな障壁がある。
そんなわけで、私が取材で見る限りでは、今現在では、アップルのiPadとSwift Playgroundsを使ったプログラミング教育がベターであるように思える。
理由はいくつかある。最近私が取材に行った、2カ所のイベントの実際をひも解きながら説明しよう。
まず、1カ所目は、横浜市港南区の『はまぎん宇宙科学館』で開催された、小中学生対象のイベント『iPadで楽しく学ぼうSwift Playgrounds』。これは科学館が中心になって開催しているサイエンスクラブの一環として開催されているもので、理科の実験などをはじめ様々な教室を開催しているが、その中でも最近人気が高いのがプログラミングの教室なのだそうだ。
この教室で使われていたのが、iPadと、その上で動くアプリケーション『Swift Playgrounds』。アップルが公開している無料のアプリで、日本語化もされている。iOS 10.3以降が動くiPadで動作するので、3万7800円(税別)で買える一番安いiPadさえあれば動作する。
このアプリは、プログラミングをすることで『byte(バイト)』君と呼ばれる謎の生物を動かして、宝石を集めることで、自然とプログラムが身に付くようになっている。子供たちにとっては、ゲームを遊んでいるような感じで、自然とプログラミングを学べるのだ。
効率よくbyte君を動かすためには、ループや分岐などのプログラミングの基礎を身に着ける必要があり、遊んでいるうちにプログラミングの基礎が身に付く。
iPadというデバイスは子供たちにとっても、扱い慣れた親の持つiPhoneとほぼ同じ操作性を持つデバイスだし、電源を入れて、アプリを立ち上げるのなんか、指示する必要もなくでる。デスクトップパソコンのように移動が大変なわけでもなく、ノートパソコンほど壊れやすくもない。
講師を担当した坂巻たみさんによると、講師側からも子供たちの顔や、やっていることが見えやすく、教えやすいそうだ。また、Apple TVを繋いだテレビモニターさえあれば、講師のiPadの内容を全員に見えるようにするのも簡単だ。
iPadとSwift Playgroundsが広げるさらなる可能性
もうひとつ取材したのが、内田洋行の主宰した『2020年の学びに向けて-授業実践者に聴くプログラミング的思考の育成ワークショップ』というイベント。
こちらには、2020年に向けて、学校でどうプログラミング教育を行えばいいのか真剣に考えている先生方が集まった。方針は決まっていても、どういうデバイスを使って、どういう教育を行えばいいのかはまだ暗中模索の段階。現場の先生も戸惑っている部分が多いのだ。
そこで、アップルのソリューションなども販売している内田洋行が、すでに実践している先生方から事例を聞くセミナーを行ったというわけ。
プログラミング経験がないが、Swift Playgroundsを使ってプログラミングを教えているというのが立教小学校の英語科主任の天野英彦先生だ。
「まず、楽しげな音楽が流れて、かわいいキャラクターが動くのに驚きました。これがこれからプログラミングを勉強しようという子供たちの敷居を一気に下げたと思います」と天野先生。
また、プログラミング経験のない天野先生がレクチャーするのに困らなかったのは、iPadアプリのiBooks上に、『Everyone Can Code〜コードを学ぼう』という教え方の手引きのようなドキュメントがあったからだという。
このドキュメントは、リンクや動画などを駆使して、プログラミング教育の基本的な考え方、どうやって教えていけばいいかを表現したもの。これさえあれば、教師側が初体験でもプログラミングを教えることができる。
Moveは動く、Collectは集める……などと、基本的な英語を理解し、それがアプリ上でちゃんと動作するという体験をしていく中で、自然とどの単語が名詞で、どの単語が動詞か……というようなことが身に付き、英語教育にも役立っているという。
Swift Playgroundsには、この『コードを学ぼう1』の他にもさまざまなアプリがあり、iBooksのEveryone Can Codeには『Swift によるアプリケーション開発:入門編』や『同、教師用ガイド』などもあり、読み進めることで実際に『Playgrounds=遊び場』を出て、実際にiPhoneで動くSwiftのプログラミングを学ぶこともできる。
さらにさらに、iTunes Uという世界中の学校の講義が動画やPDFで見れられるアプリの中に、Swiftの講義もいっぱい見つけることができる。つまり、とても敷居が低くて親しみやすいSwift Playgroundsから始めて、本物のアプリの開発まで一気に駆け抜けていける環境が整っているのだ。
また、Swift Playgroundsでは、Spheroやレゴなどのプログラミング・トイと連携させて、iPad上だけでなく、現実の世界の物体をプログラミングで動かすことを体験できる。
レゴ・マインドストームEV3は、レゴブロックの拡張性の中に、プログラマブルなデバイスを組み込んだ教育玩具。
iPadからワイヤレスでコントロールできるInteligent Blockを中心に、さまざまなセンサーユニットとモーターユニットを組み合わせて、それをプログラムによって動かすことができる。
このレゴ・マインドストームEV3用のアプリも、Swift Playgroundsに含まれているのだ。
アップルが市場獲得の一手段として、教育分野に力を入れていることは明らかだが、OSからアプリケーション、デバイス、そしてソリューションに至るまで統一して設計を行えるのは非常に優位だ。
そして、このiPadとSwift Playgroundsから始まる、プログラミング教育の広がりは、他のデバイス、OSでは追いつけない領域にまで進化している。
iPadをお持ちの方は、ぜひSwift Playgroundsを試していただきたい。プログラミングというものの概念が簡単に頭に入ってくることに驚くはずだ。
来週、シカゴの高校でアップルが何かを発表するという噂が流れている。
それが、新型iPadなのか、新しいソリューションなのかは分からないが、世界中からメディアを集めて発表するだけに、かなり大きな発表であると思われる。
(アップルが一部メディアに出した招待状。アップルは秘密主義で事前に何を発表するのか招待者にも伝えないが、招待状に謎掛けのようにヒントが隠されていることが多い)
噂されているのは、教育向けのより安価なiPadだが、カリグラフィのペン書きのように表現されたアップルマークからすると、高価なiPad Proでしか使えないApple Pencilが安いiPadでも使えるようになるのかもしれない。
他にも発表があるのか? 来週行われるであろう情報公開を楽しみに待ちたいところだ。
(村上タクタ)
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