Apple、世界的に自社で消費する100%のエネルギーを再生可能エネルギーで調達
FUNQ
- 2018年04月10日
Apple、同社の施設が100%再生可能エネルギーで電力を供給できるようになったと発表
Appleという会社は理想家だ。こっちが気恥ずかしくなるほど。
テクノロジーで素晴らしい未来が来ると信じていて、人種差別も、性的マイノリティに対する差別もなくすことができると信じていて、さらに現在の地球温暖化を食い止める必要があり、それが可能だと信じている。それは利益を追及した企業活動と相反するものだと思われがちだが、Appleは世界最大と言われる収益を、地球温暖化を食い止めるためにも遣っている。
(Appleの本社、カリフォルニア・クパチーノにある『Apple Park』も、天井に太陽光発電装置を載せ、自然の風や日光を利用して室温をコントロールし、さまざまな再生可能エネルギーを利用している)
今日、同社は、世界的に、同社の施設が100%再生可能エネルギーで電力をあがなうことができるようになったと発表した。
これには、4月7日にオープンしたApple新宿をはじめ、アメリカ、イギリス、中国、そしてインドを含む世界43カ国にある直営店、オフィス、データセンター、共用施設が含まれる。
さらに、9社の製造パートナーがApple向けの生産を100%クリーンエネルギーで行うことを約束したという。これによってクリーンエネルギーでの生産を約束したサプライヤーの数は全部で23社になったという。
計626メガワットを発電。進行中のプロジェクトを含めると1.4ギガワットを再生可能エネルギーで供給
AppleのCEOティム・クックは『私たちは自分たちが生まれてきた世界をさらに良いものとして次世代へ残すことに全力で取り組んでいます。何年にもわたり努力を重ね、ようやくこの意義深い数字に到達することができたことを誇りに思います。私たちの製品に使われている材料、そのリサイクル方法、私たちの施設、そしてサプライヤーとの取引において可能なことの限界を今後も押し広げ、新しい創造的かつ未来志向の再生可能エネルギー源を確立するつもりです。なぜなら、未来はそれに依存していることを私たちは知っているからです』と言ったという。
(Appleのティム・クックCEO。2018年3月シカゴにて)
まったく、理想家過ぎて気恥ずかしくなるが、本当に素晴らしいことだ。
Appleは世界中で、新しい再生可能エネルギーのプロジェクトを作り、地域社会、地方、国全体のエネルギーの選択肢を作っていると言う。太陽光パネルや集合型風力発電所、さらにはバイオガス燃料電池、マイクロ水力発電、そしてエネルギー貯蔵技術といった新しいエネルギー技術の開発に力を貸している。
Appleは現在、世界各地で25の再生可能エネルギープロジェクトを持っており、その総発電容量は計626メガワットに上る。2017年には286メガワットの太陽光発電が稼働を開始したという。これは1年間の発電量としては過去最高。さらに15のプロジェクトが進行中で、完成すると1.4ギガワットを超えるクリーンな再生可能エネルギー発電が11カ国に広がるという。
プレスリリース(https://www.apple.com/newsroom/2018/04/apple-now-globally-powered-by-100-percent-renewable-energy/)によると、Appleの再生可能エネルギープロジェクトにや以下のものが含まれる。
・クパティーノにあるAppleの新しい本社、Apple Parkは、今や北米最大のLEEDプラチナ認証取得オフィスビルとなっています。17メガワットのオンサイト屋上太陽光パネル設備や4メガワットのバイオガス燃料電池を含む複数のエネルギー源から100%再生可能エネルギーで電力を賄い、電池貯蔵を持つマイクログリッドで制御されています。また、人が少ない期間などは余ったクリーンエネルギーを公共のグリッドに返します。
・中国の6つの省で485メガワットを超える風力および太陽光プロジェクトが開発されました。これは製造業の上流工程からの排出問題に対処するためです。
(中国では、太陽光パネルを地上高く、太陽光が通り抜けるように設置してある。こうすることで草が生え、ヤクが食べることができるという。)
・Appleは最近、アイオワ州ウォーキーに40万平方フィートの最先端のデータセンターを建てる計画を発表しましたが、これは1日目から100%再生可能エネルギーで稼働します。
・オレゴン州プラインビルで、Appleはオレゴン州の集合型風力発電所、モンタギューウィンドパワープロジェクトのために200メガワットの電力購入契約を結びました。2019年末までに稼働が開始される予定です。
・ネバダ州リノで、Appleは地元の電力会社NV Energyとの間でパートナーシップを締結し、過去4年間で4つの新プロジェクトを開発しました。太陽光発電量は合計320メガワットになります。
・日本では、Appleは地元の太陽光発電会社、第二電力株式会社とパートナーシップを組み、300基以上の屋上太陽光発電システムを設置する計画です。毎年発電される18,000メガワットアワーのクリーンエネルギーは3,000戸以上の日本家屋に電力を供給できる量です。
・ノースカロライナ州メイデンにあるAppleのデータセンターは、年間2億4,400万キロワットアワーの再生可能エネルギーを発電するプロジェクトによって支えられていますが、これはノースカロライナ州の17,906戸の家庭で使われるエネルギーに相当します。
・土地が限られているシンガポールでは、Appleは800か所の屋上に再生可能エネルギー設備を設置しました。
(クリーンエネルギーを供給するSunseapは、シンガポールの800以上の屋上で32メガワットの太陽光パネルを管理)
・Appleは現在、デンマークで2つの新しいデータセンターを建設中ですが、共に1日目から100%再生可能エネルギーで稼働します。
Apple製品の製造に協力するサプライヤーも同調
また、自社だけでなく、Appleの製品の製造に協力するサプライヤー23社が、Apple向け製品の製造に、再生可能エネルギーを使うことを約束したという。
・高性能バイオベースポリマーのデザイナーであり、フランス、米国そして中国の同社工場でApple向けの製造を行うArkema。
・オランダ、台湾、中国でポリマーやコンパウンドを製造するDSM Engineering Plastics。同社の製品はコネクヤやケーブルをはじめ、多くのApple製品に使われています。
・Apple向けの生産で100%クリーンエネルギー化を約束した初めてのソフトグッズサプライヤー、ECCO Leather。ECCO社がApple向けに生産するレザーは欧州産で、なめしとカッティングはオランダと中国の工場で行われています。
・光通信用部品および垂直共振器面発光レーザ(VCSELs)を製造する、業界をリードするメーカーであるFinisar。同社の技術は、Face ID、ポートレートモードセルフィー、アニ文字など、Appleの最も人気の高い新機能を支えています。
・Apple製品のアクセサリーのサプライヤーであるLuxshare-ICT。Luxshare-ICTのApple向け生産施設はそのほとんどが中国東部にあります。
・中国上海と崑山の2つの工場でiPhoneを含む複数の製品の組み立てを行うPegatron。
・数々のAppleの製品に使われている磁石および磁気部品のサプライヤー、Quadrant。
・Apple向けの生産で100%再生可能エネルギー化を約束した最初のMacサプライヤーの一つ、Quanta Computer。
・日本でプリント基板用のソルダーマスクを製造する太陽インキ製造株式会社。
(名古屋郊外にある部品サプライヤー、イビデンは、水上太陽光発電システムを活用して製造に使う電力の100%を賄っている)
これらの取り組みを偽善だと批判することは容易だが、たとえ偽善だったとしても、理想に向かって歩むことは非常に困難だし、それを成し遂げることは称賛に値すると思う。
我々は同じことができるだろうか?
(村上タクタ)
SHARE