どうする? デジタルデバイス、バッテリーの保管と廃棄
flick! 編集部
- 2018年05月07日
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生活のあらゆるシーンで活躍するリチウム系バッテリー
気候もよくなってきて、荷物の片づけをしているという人も多いと思う。春の新生活も軌道に乗ってきて、以前の生活で要らなくなったものなどを片づけるのにちょうどよい季節だ。
さて、今どきあらゆるものにリチウム系のバッテリーが入っている。単体のモバイルバッテリーはもちろん、スマホ、デジカメ、パソコン、ワイヤレスヘッドフォン、ドローン……など。このモバイルバッテリー、捨てるにせよ、保管するにせよ、知識が必要だ。
大きなエネルギーを内包しているから、取り扱いには気をつけて
現在主流となっているリチウム系バッテリーには、乾電池のような缶に収まったリチウムイオンバッテリーと、ラミネートパックされたリチウムポリマーバッテリーの2種類がある。
どちらかといえば、リチウムイオンバッテリーの方が丈夫で安全だ。しかし、缶に入ってるので、形状の自由度がなく、重量もかさむ。直径18mm、長さ65mmの18650と言われるサイズが一般的。厚めのモバイルバッテリーにはこれが入っていることが多い。ちなみに、電動自動車のテスラにもこの18650が6000本くらい入ってる。リチウムポリマーより重さはかさむが、安全性がより高いからだ。
(リチウムイオンを使うモバイルバッテリーを分解したもの。※撮影時は専門家によって分解されています。大変危険なので一般の方は分解しないで下さい。)
もうひとつが、『リポ』とも言われるリチウムポリマーバッテリー。こちらはラミネートされたパック状なので、薄く作れる。寸法も自由なので、スマホや薄型のノートパソコンに入っているのはすべてこのタイプだ。
(リチウムポリマーを使うモバイルバッテリーを分解したもの。※撮影時は専門家によって分解されています。大変危険なので一般の方は分解しないで下さい。)
リチウム系のバッテリーといえば燃焼事故などが話題になりがち。大きなエネルギーを内包しているから過充電、急速過ぎる放電、水ぬれなどによるショート、セル自体の損傷などが起ると燃える可能性がある。中でも特に、リチウムポリマーはセルが破損すると内部の電解質、活物質がショートして可燃性のガスが発生し、それが燃焼して大きな炎を出すことがある(余談だが、この炎に水をかけてはいけない)。
現在のリチウム系バッテリーは発生するガスが燃えにくいものになるように電解質、活物質の素材を工夫されている。さらに写真でも分かるように安全装置が基板として一体化されており、過充電やショート、加熱などに対する安全装置となっている。とはいえ、大きなエネルギーが内包されているのだから、リスクはゼロにはならない。
絶対に分解してはならないのはもちろんだが、破損、水ぬれによるショートなどには気をつけたい。
また、充電用のケーブルでショートしても、接続されているバッテリーにダメージが及ぶ可能性はゼロではないので(安全回路が働くとは思うが)、被覆が破損しているバッテリーは絶対に使わないこと。
また、バッテリーやケーブルは、出自の怪しい海外製品など、あまりに安価な製品は安全装置が不十分である可能性があるので、使わない方が良いだろう。信頼の置けるメーカーの製品を使いたい。
(ご覧のように被覆の破れたケーブルは、ショートして、火災の原因となったり、スマホやモバイルバッテリーを壊す原因になるので、絶対に使わないようにしたい)
0%のまま放置すると、ダメになってしまう
さて、本題の保存と破棄について。
長期保存する場合には充電しておくことが望ましい。
10万円するスマホのバッテリーも、30万円するパソコンのバッテリーも、0%のまま放置しておそらく数年経って、完全に放電し切った状態になると(状況によっては数カ月かもしれない)使えなくなってしまう。
ここで言うバッテリーが『完全に放電し切った状態』とは、保護回路が電力の供給を止める『0%』よりもはるかに電圧が下がった状態。そうなってしまうと、バッテリーセル自体が能力を失ってしまい充電することができなくなってしまう。
ちょっと難しくなるが、リチウム系バッテリーの充放電特性について、図示するとこんな感じになる(図はイメージで厳密な測定値ではない)。
容量は電流量、つまりmAhで表記されるが、実は普通、内部に入っている電流量を、バケツに入って水の量のように計測することはできない。そこで、電圧を計って、電流量を推測するのだ。つまり、通常、測定値として分かるのは縦軸にある電圧だけなのだ。
一般的には制御回路は物理的な限界値まで充電したり、放電するような仕組みにはなっていない。長期間充電できるように、バッテリーのダメージを与えない範囲で100%と0%を設定している。
電圧でその100%と0%を計測し、その間に1万mAhの電流量を出し入れできるバッテリーを1万mAhのバッテリーとして我々は使うわけだ。
保存のための理想は、80%ぐらいの充電状態で電源を切っておいておき、乾燥した冷暗所に保存。1年ごとぐらいに追加で充電し、80%を保つことだろう。
しかし、現実に周囲の人を見ていると、使い終わった後、0%の状態で放置している人が多く、自然放電させてデバイスが使えななっているケースが非常に多い。
だから個人的感覚としては、100%でも安全マージンは取ってあるのだから、80%で充電を止めるのが面倒であれば、100%で保存していても(乾燥した冷暗所であれば)問題ないと思う。少なくとも私はそうしている。
ちなみに、これは経験談でしかないが、スマホなどで充電できなくなってしまったものでも、一晩中、もしくは数日充電しておくと、復活することがある。これは、おそらくは完全にセルが能力を失っていたわけではなく、少しずつ電圧をかけることで能力を回復したのではないかと思われる。充電できない場合でもすぐに諦めずに、念のため1〜2日充電し続けてみることをお勧めする。
ともあれ、一番お伝えしたいのは、モバイルバッテリーの入ったデバイスを長期間使わない時は、必ず充電した状態で電源を切って保存しようということだ。
廃棄時は、絶対に普通のゴミとしては出さない
さて、では捨てる時はどうすればいいのだろうか?
実は我々が、模型工作などに安全装置のない単体のリチウムポリマーバッテリーを使っていた時代には、動力で0%までバッテリーを使ったあとに、さらに豆電球などを使って完全放電させ、さらに海水に浸けてバッテリーとしての能力を失わせ、燃えるゴミとして捨てることが推奨されていた。
しかし、現在の安全装置が付いたバッテリーではその方法は使えない。
そこれで、いくつかの地方自治体に問い合わせてみたが『家電量販店など、認定された回収協力店へ』『自治体清掃局の回収ボックスへ』『小型家電として』……など、自治体によって処理方法は異なっていた。なので、各地方自治体に問い合わせて処理していただきたい。
いずれにせよ、通常のゴミとして出すと、ゴミ収集車で圧縮した時に破壊されて燃え出したりして、回収員の方に危険が及ぶ場合があるので、それだけは避けるようにしていただきたい。
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(村上タクタ)
参考:モバイルバッテリーメーカーcheeroの『安全への取り組み』
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