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医療を、iPadやApple Watchが変えようとしている

米大規模病院グループでの、iOS/Apple Watch活用

2018年の7月12日、東京ビッグサイトで開催された『国際モダンホスピタルショウ』の注目の講演が行われた。アメリカ・ルイジアナ州のオシュナー・ヘルスシステムから来たミラニ博士の『iPhoneやiPad、Apple Watchを活用したヘルスケア変革の実現』だ。そのお話の一部を要約してお伝えしよう。

医療の現状かかえる問題を、iPadやiPhone、Apple Watchを連携させることで、いかに改善できるかという話だ。

オシュナー・ヘルスシステムは、アメリカ南部沿岸地域最大の非営利大学医療センター。2つの州にまたがって、20の病院、90以上のクリニック、1300人の医師を擁する巨大な医療組織だ。

そのオシュナーでは、早くからiPhoneやiPadなどのアップルデバイスの医療への活用が試みられており、今や医師はもちろん、看護師、患者にいたるまでがさまざまなiOSデバイスやApple Watchを多角的に利用するようになっている。

緊急時にApple Watchに通知が来る、だから間に合う

そもそも、それまで、医師と看護師はどうやってコミュニケーションを取っていたのだろう? それは、レガシーな携帯電話だったり、内線だったり、パソコンだったり、果ては紙のメモだったりしたわけだ。

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医師も患者も歩き回っている。ある調査によると、医師は1日に院内で2300m歩くという。ひとりひとりの患者のデータを、医師や看護師が共有したり、何かあった場合に患者の連絡をしたりするのがいかに大変か、ご理解いただけるだろう。

それぞれ、数多いミーティングを行わなければならなかったし、数限りないドキュメントやメモがやり取りされていたわけだ。

それが現在では、患者の病状などカルテデータ、ヘルスケア関連のデータなどは医師や看護師の持ってるiPhoneやiPadで閲覧でき、緊急時などにはApple Watchで通知を受け取ることができる。

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たとえば、容体の急変などで分秒を争う対応が必要とされることも少なくはないが、腕にあるApple Watchに通知がくれば、何をしていてもすぐに対応することができる。たとえ、別の手術中だったとしても、そのまま通話で対応を他のスタッフに伝えることができる。また、診察の後、検査結果などが分かった時にも通知が来るので、対応を講じることができる。

また、患者がiPadを使えば、今どの医師や看護師が担当で、いつ回診があるのか、どんな医師が何をするために来るのか……などをいつでもiPadで知ることができる。情報が提供されることで安心感が増すだろう。

また、入院してると、数多くの薬を、複雑なタイミングで飲まなければならないが、Apple Watchへの通知により飲み忘れを防ぐことができる。また、医者や看護師の側にとっても、患者が毎回ちゃんと服薬したというデータを受けとることができる。

ヘルスケアデータのセキュリティが強固

では、なぜiOSデバイスなのだろうか?

まず、一番の理由としてアメリカのドクターの87%がもともとiOSデバイスを使っていたということが挙げられるという。

これはマーケットシェアから考えると意外なことだ。しかし、高収入で自由に端末を選べるドクターの多くがiPhoneを選んでいたということらしい。また、iOSデバイスは簡単に扱えてセキュリティが高い。ハッキングが難しい。これからの性質が論理的なドクターに好まれたのだろう。

そして、何より元々ヘルスケアデータを内部でセキュアに管理できる性質を持っているというのが大きい。ヘルスケアのデータに関しては、iPhoneの中で暗号化されて管理されており、たとえアップルでさえもそれを閲覧、利用することはできない。ヘルスケアデータは個人の所有物なのである。iOSデバイスは、最初からその管理を行うシステムを持っているので、医療系アプリを上手に組み合わせることによって、個人のヘルスケアデータをセキュアに保ったまま、運用する仕組みを作りやすい。

また、病院などで数多くの端末を統合的に運用する仕組みも作りやすい。アプリの開発と端末の管理が簡単だし、シスコのネットワークとの相性もいい。

また、結果としてヘルスケア系のアプリが様々なベンダーから用意されている。それらも組み合わせて使いやすい。

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また、退院してからの容体の管理にもiPhoneやiPadが使われる。毎日コンディションや、自分で測定したデータ、飲んだ薬などを入力することにより、これまでフォローできなかった退院してからのコンディションもフォローできるようになった。治療は退院して終わりというものではない。むしろ、病床数に限界がある現状では、退院してからのきちんとした健康管理、服薬管理こそ大事だったりする。

また、大病院とかかりつけ医となっている小規模なクリニックでも情報を共有できるので、退院して地元の病院に行ったとしても、大病院で行われた治療の経緯を引き継ぐことができる。

特に、慢性疾患の場合、長期間生活改善、服薬をし続けなければならない。発症して、救急部から大病院に引き継がれ、その後、地元のクリニックなどと連携して治療や健康管理を続けなければならない状態になってもiOSデバイスやApple Watchはとても役に立つのである。

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病院版ジーニアス・バー『O Bar(オー・バー)』

とは、いえiPhoneや、デジタルデバイスに慣れている人ばかりではない。特に高齢者の方には、デジタルデバイスを苦手だと感じる人が多い。

そんな人たちのフォローをするために設けられたのがO Bar(オー・バー)だ。

ちょうど、アップルストアのジーニアスバーのようにiOSデバイス、Apple Watchに関する使い方など、あらゆる活用方法について面倒を見てくれる場所だ。

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デジタルデバイス導入時の問題は、導入側や活用が得意な人が意思決定をすることが多く、苦手な人が取り残されることが多いということにあるだろう。

医療系で、特に患者側にも活用してもらおうとすると、こういうサポートサービスは必須になるだろう。

このO Barでは、患者が自分で活用するために、デバイスを購入したいと思った時に、割引価格で購入できるようになっているのも嬉しいポイントだ。

日本でもiOSデバイスなどを利用する医療機関は増えているが、医師、看護師、患者を含め、さらに退院してからの生活改善、服薬管理などまで、これだけの規模で利用されているケースはまだない。

オシュナー・ヘルスケアシステムのiOS、Apple Watchの活用事例は、非常に理にかなっており、医師、看護師、患者の負担を減らし、効果的な治療を促進するように思える。日本でもこのような事例が増えるといいのに、と思う。

(村上タクタ)

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