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夜のアップルストア京都を見て、アップルデザインの強さと深さを思い知った

デザインとは外見のみの良し悪しを語る言葉ではない

『アップル製品はデザインが優れている』と言われている。

デザインについて語るのは難しいが、それは単に外見の見目形の良さを表しているのではない。

基本設計を終えてから、外見を作ることをデザインというのではない。それは、アップル製品を分解してみるとよく分かる。優れた道具であろう、美しい道具であろうとするために、基盤の形状、バッテリーの配置から考えられており、配線の一本までおろそかにはされていない。デザインとはそのモノの本質を表す言葉。

その結果としての、iPhoneの、iPadの、Macの美しさであり、それが世界中でApple製品が人気を博している理由だと思う。

夜の京都の町に浮かび上がる新アップルストア

8月25日にオープンするアップルストア(関連記事『8月25日にオープンする『Apple京都』は特別なアップルストアだった』 https://www.ei-publishing.co.jp/articles/detail/flick-470974/)も非常によくデザインされたストアだった。

取材したのは昼だったのだが、夜にもう一度、足を運んでみて、そのビジュアルの違いに驚いた。

格子状の枠組みの間に柔らかい間接光が当てられ、まるで木枠に障子紙を貼り、中に明りを灯す行灯(あんどん)のように、京都の町の中にApple京都が浮かび上がっていたのだ。

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部分をよく見てみると、障子紙の隣の部屋がうっすらと透けて見えるような柔らかい光が演出されていた。

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これをみて「ああ!」と私は納得がいった。

実はプレス説明の間にも何度も「行灯」という言葉は出ており、昼間に取材しており、しかも内側からこの建物を見ていた我々は壁面内部の障子のような採光を行灯と捉えていた。若いライターさんなどは「行灯って何ですかね?」という感じだった(ちなみに、時代劇で枕元などに置かれていたりする、障子紙を貼った四角い箱状の灯りのこと)。しかし、そうではなかったのだ。このApple京都の建物自体が行灯をモチーフとしていたのだった。

京都の町は東京に比べてはるかに暗い。夜にビル自体に照明が当っているようなビルなんてほとんどない。その中で、Apple京都は、まるで本当に巨大な行灯のようにぼんやりと浮かび上がっていたのだ。

Appleが格子模様デザインに秘めた意味

他の国のアップルストアでも、オリジナルのロゴやエンブレムが作られてることはほとんどないが、先だってのApple新宿ではネオンを模したロゴが用意されていた。今回の京都もオリジナルのロゴが用意されている。

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京都のそれは、格子柄をモチーフとしてもので、四条通りの地下街に両側30mに渡って設置された広告ビジュアルも格子柄をモチーフにしたものだ。

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この格子は、京都の町の道の配置、すなわち『碁盤の目』を意味していると思っていたのだが、それだけではなかったのだ。それはApple京都から数百メートル東に歩いて、夜の先斗町を散策してみればわかる。

今でも昔の風情を残している京都の町は格子柄に満ちているのだ。

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京都の町屋は『ウナギの寝床』と言われるが、これは間口の幅で税金が決まったために間口が狭く奥に長い構造をしているのだ。ロゴタイプのグラフィックは、ちゃんとそれも理解した描き方をされている。

寒暖が激しく、狭い街中に密集して建つ家々のプライバシーを守るのが、家々の前に設けられた格子であり、軒下に入るのを防ぐための駒寄せ(本来は牛馬を繋ぐためのものだったとのこと)、屋根の上の忍び返しや、簾などが組み合わさって、京都の町は実に複雑な格子模様によってできている。
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このストアを設計した人はおそらく、このジョブズが愛した町を深く知ろうとして、長期間滞在し、さまざまな文化を知ろうとしたのではないだろうか? 街中を散策し、ひょっとしたら、夜のお寺や町屋を訪ねたり、先斗町で一献傾けたりもしたのかもしれない。

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そもそも、アップルストアの空間デザインは京都的

Apple京都の一階は他のタウンスクエア型の店舗と同様、大型のフリースタンディングの6Kビデオウォールが設けられ、前にアトランダムに置かれたウッドとレザー製のイスと合わせて、町の人たちが集い、交流出来るフォーラムスペースとなっている。

このあたりは、シカゴのApple Michigan Avenue、サンフランシスコのApple Union Squareと同じ最新の作りになっているので、ぜひ体験してみていただきたい(関連記事『米敷地当たりの売上一位のアップルストア。その新世代店舗の工夫とは?』https://www.ei-publishing.co.jp/articles/detail/flick-463120/)。

また、四条通りと高倉通りに面する部分はアップルストアおなじみの天井までの一枚ガラスによって、まるで市街と境なく空間が広がりつつ、音や風雨は遮るようになっている。

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思えば、借景や縁側など、外の風景を取り入れ、空間を遮断せずに、内と外をなだらかに繋げる構造は日本建築の特徴であった。奇しくもアップルストアが目指すところがそこだというのは偶然なのだろうか?

ジョブズが京都が好きでしばしば訪れて滞在したというから、そもそもアップルストアの思想に、そういう日本的なもの、京都的なものが含まれているのは必然かもしれない。

京都のイメージを色濃く反映する2階

オーク材の机や、Steve Jobs Theaterなどと同じ人工大理石で作られた階段を上がると、広がる2階の空間は、他のアップルストアと大きく違う、明らかに日本を意識した意匠。壁面は障子のような木製の桟があり、間接光で柔らかに室内を明るくしている。

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壁面はなんと城郭や寺の壁面を塗るしっくいで仕上げられている。いまや職人の数も減っていて、寺の修復時などの高コストが問題になるほどなのに、非常に美しく仕上げられており、むしろ美し過ぎてしっくいだと分かりにくいほど。

ただ、現代的な素材と違って、今後手垢などで汚れていくのではないかと思われる。それも、風合い……と思えるような汚れ方になるといいのだが。

この2階の雰囲気は明らかに他の世界中のアップルストアとは違い、京都ならではの特別なもの。ビジネスユーザーへの対応のために設けられたボウルルーム(一般には入れず、ビジネス用途でMacを導入する人のミーティングなどに使われる)と合わせて、Apple京都を特別なストアにしている。

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階段部分の大きな吹き抜け空間はひょっとすると、京町屋の『坪庭』をイメージしてたりするのだろうか? 人工大理石でできた手摺りはとても凝った作りで、このあたりはUSの最新ストアや、あのSteve Jobs Theaterと同じ意匠なので、ぜひじっくり見ていただきたい(関連記事 『Apple新社屋の建築がすごい!【ビックリな新構造を秘めたシアター編】』https://www.ei-publishing.co.jp/articles/detail/flick-445714/、『Apple新社屋の建築がすごい!【新社屋、ビジターセンターなど、細かい部分編】https://www.ei-publishing.co.jp/articles/detail/flick-445747/』)。

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京都に学び、京都に溶け込もうと言う意思を感じる

USで培ったアップルストアの最新コンセプトを、『京都』という町ならではの意匠、居心地と上手く融合させているのが、Apple京都の興味深いところだ。

このApple京都のデザインは、スティーブ・ジョブズが好んだ京都という町や、Apple製品に流れる『禅』的なミニマリズム、美意識において、京都という町の特別さを表現しているのかもしれない。

同時に、日本文化、京都という町を受け入れ、溶け込もうというAppleの意思を、パッケージしているように思える。

Apple京都の行灯風の外観に始まるデザインは、京都のクリエイティブ、精神性に学び、一緒にやっていこうとするAppleの意思を表しているのである。

(出典:『flick! digital (フリック!デジタル) 2018年9月号 Vol.83』

(村上タクタ)

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