HUAWEI P20 ProのAI加工した写真は本当に美しいのか?
flick! 編集部
- 2018年09月27日
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とても美しくなり『過ぎる』HUAWEI P20 Proの写真
私が、普段iPhone Xを利用していて、先日もiPhone XR/XS/XS Maxの発表会にカリフォルニアまで行っていたApple党だ……という前提での話だが、先日HUAWEI P20 Proを借りて写真を撮ってみて悩ましく思った。
知り合いのレビュアーにもHUAWEI P20 Proを絶賛する人が多く、実際に仕上がる写真は美しい。
しかし、私はHUAWEI P20 Proの写真は好きではない。
簡単に言うと、HUAWEI P20 Proの写真は美し過ぎるのだ。
HUAWEIはAIを積極的に使っており、対象物を判別し、夜景はよりきらびやかに、食べ物は美味しそうに、青空はより青く、女性はより美しく写るように画像を調整する。
具体的には、AIが青空が写っていると認識したら、青の彩度(鮮やかさ)を上げてくれる。もちろん、現在のiPhoneもそういう処理をしているのだが、その処理がより強調されている。東京の普通の空なのに、カリフォルニアのようなとても鮮やかなブルーになるのだ。
ちなみにメインカットの写真は、どちらもHUAWEI P20 Proで撮ったモノだが、左がAIをオンにしたもの。
木々の緑もより鮮やかに。夜景は暗い部分にノイズが乗らないよようにしつつ、光りはよりきらびやかになるように演出してくれる。
インスタ映えはするだろう。だけど、それだけでいいのだろうか?
たしかに、私もiPhoneで撮影した画像をアプリで補正し、より美味しそうに、より美しく見えるように加工する。しかし、基本的には目に見えたように、自分の印象に近いように補正する(この『見えたように』もいろいろあるが後述)。SNSにアップする時に多少『盛る』ことは否定しないが、それでも『やり過ぎ』感のないように気をつける。
この料理の写真もHUAWEI P20 Proで撮ったもの。
簡単にいうとHUAWEI P20 Proの処理は、私の『やり過ぎ』ラインを越えているのかもしれない。
人物も巧みに加工してくれるHUAWEI P20 Pro
人物を撮るともっと巧みな処理がなされる。
シワやソバカスは消え、より美しい顔立ちに写るようにさまざまな補正が施される。
これは非常に女性にウケが良く、私の周囲では「iPhoneで撮らないで、HUAWEIで撮って!」と言う女性もいるほど。
化粧をしてない妻をHUAWEI P20 Proで撮影してみると、実際にシワやソバカスはきれいに消えた。本人も、「iPhoneで撮影した写真より、こっちが好き」と言っていた。
しかし私はそうは思わない。
シワだって、私と一緒に苦労してくれたからこそのシワで、ソバカスも日がな一日公園で遊び続ける息子や娘たちを見守るために日なたにいたからこそのソバカスだ。その日々も含めて私は妻を愛しているのだから、その日々をなかったことにする補正はやはり受け入れられない。
iPhoneももちろん、AIを搭載して、画像に写ってるものを認識して、画像に補正をかけているのだが、Appleがよりリアリスティックな表現を好んでいるのは同社サイトの作例を見ても明らかだ。
スマホ写真の功罪
もう、四半世紀にわたっていろんな人を取材してきているが、最近は撮った写真に対して、ひとこと言われることが多くなった。
昔は、ポジで撮って、印刷された自分の姿に文句を言う人はいなかった。それが『現実』だと思ってた人が多かったのだろう。
しかし、最近は雑誌の記事用の写真でさえ「このシミを取って」「シワを消して」、果ては「痩せさせて」などと言われることが多くなった。若い人はプリクラや、補正アプリでの自分の姿を見慣れて過ぎて、一眼レフでプロカメラマンが撮った写真さえも「私はこんなに目が小さくない」「こんな立派なカメラなのにキレイに撮れないのね」と言われる始末だ。
スマホのカメラは、『鏡よ、鏡……』と問いかけると真実を写す白雪姫の継母の持つ鏡とは違い、撮影する本人の望みを写すドラえもんの『うそつきかがみ』にはなっていないだろうか?
たしかに、アイドルや芸能人、モデルの写真を補正してきたメディアの功罪というのもあるだろう。でも、弊社のように取材中心で記事を作って来たメディアにとって補正は前提にない。
すべての写真は加工されている
さて、もう少し詳しい話をすると、そもそも『写真』とは言うが、『真』実は簡単に『写』らない。
フィルムの時代からして、フジのベルビアで撮ると青い空が鮮やかに写るとか、コダックのKRで撮ると金属感がシャープに出て重みある絵が撮れるとか、そういうことはあった。
その後デジタルの時代になっても初期は思うような色味が出るとは限らなかった。特に赤が難しく、某赤いイメージカラーのタバコブランドがスポンサードする車両の赤が上手く発色せず、クレームがついたというようなこともあった。
詰るところ、レンズを抜けて来た光をセンサーが受け止め、その光りの量や色を01の数値に変換し、それをどのように数値と解釈するかを取りまとめたものが、現代のデジタルカメラの写真だ。
私が比較的ニュートラルだというiPhoneの写真だって、さまざまな加工の結果、そのように仕上げられているだけだ。
また、色に関しては、人種などによって多少見え方、印象が違うらしく、最終的に脳内にどういう像や色を認識させたかという点を考えなければならなくなってくる。あなたが見てる色と、私が見ている色は、頭の中で同じように展開されているとは限らないのだ。
カメラは、基本的には『見えたように写そう』としているのだが、それは簡単なことではないのだ。
では、最新のiPhone XSの写真はどうなのか?
ということまで考えると、HUAWEI P20 Proの撮る写真が一概に違っているというワケではないことが分かる。
SNSで彩度が高く、ハイコントラストで、いいね!がたくさん付きそうな写真を見慣れた我々は、そういう写真を真実だと思いはじめているのかもしれない。
たしかに、絵画の世界でも、スーパーリアリズムもあれば、印象派もあるし、具体を描かない抽象画こそが真実を伝える場合もある。克明に写実的に描くよりも、印象派の方が実際の風景の美しさを人に伝えることもあるだろう。また、クリスチャン・ラッセンの絵が好きな人だっている。
いろんな表現があっていいと思う。ただ、私はそこから加工することはあるにしても、撮影したままの写真の状態としてはiPhoneの仕上げる写真の方が好ましく思える。あなたは、どう感じるだろうか?
……とまぁ、ここまでの原稿を、実は私はiPhone XR/XS/XS Maxの発表会に向かう飛行機の中で書いた。
そして、それから15日ほどが経って(その間、iPhoneの新製品の記事を書くのに忙しくて、この記事はSSDの肥やしになっていた)、iPhone XS/XS Maxを実際に手にして写真を撮ってみることができるようになった。
ちなみに、これはiPhone XSで撮った写真。以前のモデルの写真と違ってシャドウも落ち過ぎないし、ハイライトも明る過ぎない。海辺の波のディテールも詳細に表現されている。
もちろん、iPhone XSの写真もこれまで通り、あまり『盛って』ないニュートラルな方向性の仕上がりではある。
しかし、従来型のiPhoneと比べるとわずかに絵作りに作為が見られるようになっている気がする。逆光でもシャドウ部は完全に落ちず、明るい部分も白飛びしにくい。人の肌は少し滑らかになり、食べ物もより美味しそうに写る。
左がiPhone Xの写真右がXS。このサイズでは分かりにくいが、Xではほぼ真っ暗に落ちていた空の雲の色味がXSの写真では判別できる。またレンガのディテールもXSの方が詳細に写っている。
これはHUAWEIの影響を受けているのだろうか? それともスマホカメラ全般の傾向なのだろうか?
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(出典:『flick! digital (フリック!デジタル) 2018年10月号 Vol.84』)
(村上タクタ)
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